僕が君を滅ぼすのに、愛以外の理由はいらない
「は…ぁ、かひゅ…」
苦し気な息が少女の喉から漏れる。
乱れた美しい白髪、潤んだ深紅の瞳。熱を帯びた甘い息、薄く染まる頬。
俺は収まることのない憎悪を込めて、力の限りその首を絞める。赤く染まっていく世界の中で、ただ二人の呼吸だけが反響していた。
コイツは、アイツではない。でも、何故だ。ふとした時に、コイツとアイツが重なる。
その透き通るような肌も、すらりとした小柄な肢体も、いやに整った顔立ちも、全てがアイツと重なって見えるのだ。それでいて、アイツとは決定的に何かが違う。この女は、アイツではない。似ていても、決して同じであるはずがない。この女の存在そのものが、アイツに対する冒涜だ。
気に入らない。
気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない。
お前はアイツではないのに、アイツはもういないのに、どうしてお前はそこに立っているんだ?どうしてそんな顔で立っていられるんだ?
「紛い物め。」
吐き捨てるように言い放つ。しかし少女は、この期に及んで恍惚とした笑みを浮かべていた。まるで、俺の向ける怒りを、憎悪すら肯定すべき感情だとでも思っているかのように。
彼女の深紅の瞳は俺の奥底にあるものまで見通すかのような視線を向けている。
世界を混沌の最中に引きずり込み、皆の、アイツの思いを踏みにじり、あまつさえ世界を滅ぼそうとする彼女は、何一ついつもと変わらないその目で、俺を見ていた。
赤くて、朱くて、緋くて、紅い。
その瞳の奥は決して見えない。
どうしようもなく深くて、深くて、深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて深くて
「…っ!」
吞み込まれる。
抑えきれない戦慄を覚えて、俺は咄嗟に手を放してしまった。身体が強張り動けない。だが、彼女は上にまたがる俺を押しのけることもなく、ほどけてしまった俺の手を振り払うことすらせずに、乱れた呼吸を整えながらいつも通りの態度で俺の目を見た。
「はぁ…はぁ…ん…ぁ。ふぅ、もう…終わりかい?なかなか興味深い体験ではあったけど、この程度で僕を満たせると思っているなら、それは僕という存在を過小評価しているんじゃぁないかな?」
「…黙れ。今、お前を生かすか殺すかは俺の手に握られていることを忘れるなよ。」
強張る身体に喝をいれ、声を捻り出す。
ハッタリなどではない。再びコイツの首を掴み、この手に力を込めれば、彼女のか細い首などそう手間取らずに折れてしまう。これは、最後通告だ。
「なるほど。これはなかなか…」
しかし、その最後通告を以てしても彼女の顔色一つ変えることは出来ない。
相変わらずの余裕の態度だ。まるで、この場の主導権を握っているのは自分だとでも言わんばかりの。
「…このっ!」
戦慄に塗り替えられた憎悪が再び息を吹き返す。
今ここで、報いを受けさせなくてはならない。彼女が犯した罪を、今ここで弾劾できるのは俺だけなんだ。俺を、アイツを、この世界をこんな風にしたコイツだけは許されてはならない――
激情が俺の心を支配する。そして、一思いに――
その時だった。
「がぁっ!?」
鈍い衝撃が脇腹に走った。景色が二転三転する。
どういうことだ?何が起こった?
何も分からない。ただ、俺は何も分からず吹っ飛ばされる。そして、もう瓦礫と言えるのかもよく分からない物質の残滓に叩きつけられた。
気付けば、少女は地に伏す俺を見下げている。いつの間にか衣服の汚れや、身体の傷も消えていた。まるで、本当に何もなかったかのように。
「手出しは無用と言ったんだけどなぁ。」
彼女はぽつりと呟く。
「何…が…」
「んー?いやぁ、大したことじゃないよ。おせっかいな僕のボディーガードが横槍を入れただけさ。安心して、もう帰ってもらったから。」
――!…何故奴が!?
死んでも止めて見せる。そう言って彼は俺に微笑んだ。その彼が足止めしていた相手が今介入してきたのだ。この事実が示すことはただ一つ。
――そうか。お前も…
更なる絶望が胸を支配する。ここまで状況を整え、これだけの犠牲を払ってもなお届かないのか?
いや、諦めるな。たとえ俺一人だけになっても、最期まで戦い抜く。そう決めたじゃないか。
でも、身体が動かない。もうもはや感覚がない。蹴飛ばされた脇腹はどうなっているのか。それを確認することさえ能わない。俺の身体は、限界を迎えていた。
しかしそれは彼女に負けを認める理由にはならない。ここで諦めてしまっては、全ての努力が無駄になる。それは、みんなの死を無駄にする行いだ。
「お前は…絶対に俺が倒さないといけない…!みんなの…ためにもっ!」
声を絞り出す。
何とかして、彼女に一矢報いたい。
霞んでいく視界に映る、彼女に向かって手を伸ばす。
「――ふふ。まるで正義のヒーローだね。僕はさしずめ極悪人といったところか。」
「な…?」
不意に彼女は、それまで後ろで組んでいた両手で俺の手を取り、自らの首を握らせた。そして何が愉快なのかクスクス笑い始める。あまりに突然だ。その唐突さと理解不能性に、俺は呆気にとられる。彼女は、俺に首を握られたまま、その両手を俺の頬に当て、その深紅の双眸で俺を見た。
逃げられない。
俺の視線は、彼女の瞳に釘付けになる。俺の意識は、彼女の瞳の中に堕ちていく。
そして、この場の主導権を完全に奪取した彼女は優しく微笑んだ。
「いやぁ、つくづく人間というものは面白いなぁ。同じ行いでも、立場が変わればその善悪に差異が生じるなんてね。行いの善悪はその内容によってのみ定められる。これは僕が定めた原則の一つだ。本来全ての事象はこの原則に従って起こる筈なのに、人間はその原則を自らの正義とやらで簡単に捻じ曲げてしまった。僕は感動しているんだよ。今君が行おうとしていることは僕が行ったことと規模は違えど内容はそう大差ない。でも、君は僕のそれを悪とし、拒否するのに自分の行動には一定の正当性を見出している。これは僕の理屈からすれば到底導き出されるはずのない思考だ。でも、君たちの論理では当然のように行われうる。このことの並立性こそ僕がわざわざ君たちに接触した動機の一つと言えるだろう。でも、それはあくまで人間の論理でしかなく、世界原則に優先する効力は持たない。これが意味するところは、どこまで行ってもこの行為は悪でしかないんだよ。僕を極悪人とするなら、君も同じく極悪人だね。しかし、そんなことは些細なことなんだ。僕が心惹かれたのは、世界原則に反する君の正義が、本来起こりえる筈のない事態を現に招いているという点だ。君は確かにただの人間だった。ただの人間が、主神たる僕に干渉など出来る筈など普通はあり得ない。でも、今君は僕の首に手をかけている。ただの人間の論理が、神の定めた世界原則を上回る効力を発揮したのさ。即ちこれは、君の正義が世界に認められたということだよ。これはすごいことなんだ。まぁ結局のところ、君は僕を今殺すことは出来ない。これは残念ながら僕ですら変えられない確定未来だ。ただ、これは強力な運命線がもたらす副次効果でしかない。歯車さえかみ合えば、君は僕を滅ぼすことが出来たわけだよ。このことが示す結論はシンプルだ。君は、人ながらの身にて神格を有しているね。それも、僕の介入なしにだ。あの子との関係がそうした結果を導いたのかどうかは考察の余地が残るけど、こんなことは僕の観測下において初めてなんだよ。ゆえに、僕は君に興味を示した。それだけじゃない。僕はそこに至る過程に心惹かれたんだ。こんな気持ちは初めてだった。今この瞬間に繋がる運命線が出現した時、僕は初めて純粋に恋と呼びうる感情を覚えたんだよ。そして僕はこの地に降り立った。余計な世界の枠組みを消し去って、君を迎え入れるためにね。この世界で過ごした日常は存外楽しいものだったよ。何もかもが目新しく、そして、人間というものがいかに素晴らしいか身をもって知ることが出来た。そして、その中でもやはり、君という存在は一際輝いて見えたよ。そう、僕の恋心は本物だったんだ。一時はどうなることかと思ったよ。まさか妹に僕の恋路を邪魔されるとは思わなかった。色恋沙汰に無縁だと思っていた彼女が君に好意を持つことも、君が僕ではなく彼女の方に好意を持ってしまうことも完全に予想外だった。もしかすると、そういう運命線も元から示されていたのかもしれない。でも僕はそれを見落とし、結局、こんな荒業でしか事態を先に進めることは出来なかった。まぁ、結果オーライだよね!こうして君と二人きりで語り合う機会を得たのだから。君は、憎悪という形で僕に真摯に向き合ってくれた。これはある種の愛の形といえる。でも、僕が望むのは拒絶の愛ではなく受容の愛だ。だからまず、僕は君を受け入れよう。君の全ての思想を、正義を、理念を、感情を、本能を、この一身に受け入れよう。そして君が望むなら、僕はこの身全てを君に捧げよう。主神としての神格も、管理者としての権限も、そしてあの子と瓜二つのこの肉体も。悪い条件じゃないはずだ。あとは君が僕を受け入れてくれれば、全ては辿るべき運命線の軌道上に収束する。これで僕は望みを果たすことが出来るし、君たちを守って消えてしまったみんなも報われるんじゃぁないかな?さぁ、どうかこの僕を受け入れてはくれないかい?」
興奮気味に息を切らし、頬を赤くして熱弁した彼女は、手を広げて屈託のない笑みを浮かべた。
どこまでも自分勝手な愛の告白。
到底理解できない彼女の独自理論。そこから導き出される理不尽な好意。
その愛を、好意を、もっと違う形で、違う状況で示していたならば、あるいは彼女を選んでいた未来もあったのかも知れない。だが、彼女は自分のエゴに他人を、世界を巻き込んだ。そして、己の道を阻むものを世界原則の名のもとに文字通り排除したのだ。
俺が大事にしていたもの全てを奪っておいて、自分のことは受け入れろだと?
「…るな。」
「?」
「…ふざけるのも…大概にしろォっ!言わせておけば、好き勝手に、言い…やがって!お前はただ、俺を引き込むためだけに…みんなを、アイツを消したっていうのかァっ!!!」
怒りが、憎しみが、恨みが、殺意が、俺の身体を突き抜ける。しかし彼女は、それらすべてを肯定した。肯定した上で、超然とした態度を崩さない。
「んー、結果としてはそうなるね。でも、神はいつでも自分勝手なんだよ?それは僕に限った話じゃない。一つ勉強だね。」
自分勝手か。確かに、お前は自分勝手だよ。でも――
「…アイツはお前とは違った。」
「?」
「アイツは、人の心を持っていた。人に寄り添い、その幸福を願うことが出来た。人のために怒り、他人の苦しみを分かち合うことが出来た。」
少女は、笑顔のまま首を傾げる。悪意のない、純粋な無理解。いや、無理解ではない。彼女は、俺の言ったことを理解した上でその怒りに共感できないのだ。
化け物だ。自分勝手なだけじゃない。アイツとは全く異質の、決して分かり合えない存在だ。姿形が似ていても、根本の部分が欠けている。コイツは、人間とは分かり合えない。
「アイツとお前は違う。俺は、お前なんかを選ばない。」
それが、彼女に対する返答だ。飾りっ気のない、本心からの拒絶。
その明確な拒絶を示された彼女は、動揺を見せるかと思われたが、
「へぇ、そう。なるほどなるほど。」
まるで予定通りとでも言いたげな表情で口元に軽く手を当てた。そして、再びその深紅の瞳で俺の目の奥を覗き込もうとする。
「どうやら、いや、やっぱり、今の君が僕を選んでくれることはないんだね。でも、君の意思がどうであれ、君は僕の言う事を受け入れざるを得ないんだ。」
「ふざけるな!俺は――」
「でも、あの子を取り戻したいんだろう?まぁ、方法は無いこともない。とはいえ、どうするんだい?このままだと君死んじゃうけど、そうなってしまえば君の魂は黄泉の国へ誘われる。こうなるとほとんど詰みだ。魂だけでは何もできないし、仮にうまく転生できても、生前の記憶などそう保持できるものではないよ。それに、君はわずかではあるが神格を有している。となれば、そもそも輪廻の輪から外れてしまうだろうね。でも、実体を得られるほど強い訳でもない。いいとこ神霊の蕾どまりだろう。信仰を集めればいずれは肉体を得るかもしれないけど、この世界はまもなく崩壊する。君を知る人間はいなくなり、信仰の源も同時に消滅するわけさ。君は、ただ存在するだけの意識として悠久の時を過ごすことになるだろうね。」
「…っ!」
言い返せない。この世界のシステムなど、俺の知るところではない。ゆえに、彼女が言っていることが嘘か本当か判断はつかない。でも、これだけは言える。彼女は、俺と初めて会ったその時から一度たりとも嘘はつかなかった。なら、これも真実なのだろう。
つまり、このままでは俺は永遠にアイツやみんなを救う方法を失う。
「でも僕は、別に君の魂が欲しい訳じゃぁないんだ。僕は君の全てが欲しい。でも、このままじゃ無理そうだし、君の魂を上書きしてしまってもいいけどそれじゃぁ芸がないし、何か違う気がする。そこで、一つゲームをしようじゃないか。」
は?
いきなり何を言い出すんだ?
「ゲーム…だと?」
「そう、ゲームだよ。ルールは簡単。君が僕という存在を受け入れてくれれば、僕の勝ち。そして、君が僕を拒絶し、あの子を取り戻すことができたなら君の勝ちだ。僕の勝利条件については説明いらないね。そして君の勝利条件もシンプルだ。ただあの子を選べばいいんだよ。そして、僕を拒絶するというのは、僕という存在を認めないということだ。色々方法はあるかもだけど、一番シンプルなのは僕を殺すことだね。もし君が勝てば、僕は君を諦めよう。」
意味が…分からない。
急速に感覚を失っていく身体に鞭打ち、何とかして彼女の意図を探ろうとする。でも、分からない。
自分の命が零れていくのが感じられた。そんな中でも、起死回生の一手を求めて、彼女の一言一句に耳を傾ける。しかし、今回ばかりは全く意図が見えなかった。しかし、彼女は俺の理解など気にも留めていない。ただ、前もって用意していた原稿を読み上げるかのように淀みなく言葉を発する。
「でも、勿論、これだと条件が厳しすぎてゲームが成立しない。だから、いくつか小細工させてもらうよ。君が、僕と同じように世界を見れるようにね。」
小細工?お前と同じように?
「君には、僕と同じ目線に立ってもらいたいんだ。だから、君にも権限を与えよう。そして、世界を巡ると良いよ。そうすれば、君は僕のことが理解できるはずだ。」
目線?権限?どういうことだ?一体、何をするつもりだ?
そして、お前のことを理解するだと?
「理解した先で、君は僕を受け入れるのか、なお拒むのか。僕はその選択を尊重し、受け入れるよ。まずは僕のことを知ってほしい。その上で君の答えを聞かせてほしいな。」
「…待っ」
彼女が俺から手を離した。自分の身体と世界の境界が曖昧になっていく。
俺の身体は、崩れていく世界の闇に沈んで、沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで沈んで
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目を覚ますと、俺は見知らぬ大地に寝そべっていた。
「…」
特に意味もなく、掌を握り、そして開いてみる。
身体が軽い。そして、不自然なほどに気分が澄み切っている。まるで、先ほどまでのことがすべて夢だったかのように。
――ああ、全てが心地良い。
あれ?
「心地が良い…だと?」
本来今抱くはずのない感情に、猛烈な違和感を覚えた――ような気がした。
本来現れる筈の感情が現れない。代わりに現れるのは、ありとあらゆるプラスの感情。
記憶と、感情が嚙み合わない。そして気付く。
何故俺は今――お前を愛しいと思ってしまったんだ?
有り得るはずのない彼女に対する好意。その存在に気付き、恐怖に似た驚きが訪れ――ない。訪れるのは、ただ然るべきものを目の当たりにした安堵だ。
「そうか。」
しばらくの思索の後、導き出される結論――奴が言っていた小細工の正体。
「なるほど、そういう事か。なかなかいい趣味をしているじゃないか…」
感情のすり替え。不快、嫌悪、憎悪、怨恨、そして殺意。あらゆる負の感情を対極へ変換するというわけか。主神の癖に器用な真似をする。
つまり俺は今、自分が従うべき感情の半分を失い、さらにはお前に対するあらゆる悪感情を封印されたわけだ。なるほど、よく考えたじゃないか。
それとも、これがお前の見ている世界ということか?
あらゆる悪感情から解き放たれ、この世の全てを肯定する。怒るべき行為に喜び、憎むべき相手を愛する。これが、お前の見ている景色なのか?
いや、この際そんなことはどうでもいい。俺の目的はこの上なくはっきりしている。なら、感情が足枷にならぬよう明確な行動基準を設けてしまおう。
この感情が愛か、殺意か分からないなら殺してしまえばいい。どうせ、俺が愛すと決めたのはもとよりただ一人なんだから。そう、たとえ俺がアイツ以外の誰を愛そうとも、それはきっと憎悪と殺意の裏返しでしかないんだ。なら、俺がアイツ以外に向ける全ての愛は、遍く殺意だと定義しよう。そうしてしまえば、再び「彼女」と対峙した時迷わずに済む。
この胸に宿る彼女への確かな愛。そこに感じる違和感に抱く嫌悪すら心地よさへと変換される。しかし、それでいいのだ。この愛はきっと、紛い物以上に紛い物で、本物以上に本物だ。
なら、迷う要素などどこにも無い。
俺が「彼女」を愛している限り、俺の願いが途絶えることは無い。この愛こそが、俺を導く唯一の指針。だから、この愛を忘れないでいよう。
そして、お前を理解し、その上で拒絶してやる。拒絶という形で、お前が押し付けたこの愛を突き返してやる。
それまで俺は、いや僕は、君を演じ続けよう。君が見た景色をこの目で見て、君と同じように振舞った上で君とは違う結論を導き出してみせるよ。
この胸に宿る愛こそが、君に対する憎悪の証左だ。ただ、それだけでいい。
「僕が君を滅ぼすのに、愛以外の理由はいらない。」
最後まで読んで下さりありがとうございます!文章の練習がてら一本短編を書いてみました。歪んだ愛、みたいのを書いてみたかったんですが表現できていたのかな…あと長台詞が書きたかった。それと、自分の文章力が現状どれほどなのか把握しておきたいので評価をつけていただけると嬉しいです。低評価でも全然構いません、どうかお願いします!