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聖母モード

 クレア……。

 私はベッドに横になっている彼女の手を両手で包み込む。

 私より大きな手だな。あったかくて優しくてとても柔らかい手だ。

 私の小さな手と違ってたくさんの物や人を救うことができる手だ。

 私の小さな手でできることは少ないが、お前に私の温もりを与えることはできる。

 頼む、クレア……早く、目を覚ましてくれ。

 お前がいなくなったら、私は……私は……。


「……クーちゃんの手、あったかいなー」


「……クレア!!」


「クーちゃん、どうしたのー? 私、もうなんともないよ?」


「そうか……良かった。本当に良かった……」


「クーちゃんは大袈裟だなー。私は不老不死なんだよー? そう簡単に死なないよー」


「そう、だな。そう、だよな。お前は不老不死だ。私が心配する必要……あれ?」


「クーちゃん、どうして泣いてるの? 目にゴミが入ったの?」


「ああ、そうだ。きっとそうだ。そうに、違いない」


 私はそう言いながら涙を手でぬぐう。


「クーちゃん」


「な、なんだ?」


「おいで」


 クレア(不老不死モンスターハンター)が両手を広げる。

 や、やめろ。今、お前に抱きしめられたら私は。


「クーちゃん、遠慮しなくていいんだよ? ほら、おいでー」


「うっ……うう……く、クレアー!!」


「よしよし、もう大丈夫だよー。私はここにいるよー」


 お前は……本当にズルいやつだ。

 こんなことされたら私は……。

 お前のことを今よりずっと好きになってしまうじゃないか!


「クーちゃんは泣いててもかわいいなー」


「う、うるさい! 黙れ!!」


「はいはい」


 くそう、完全に聖母モードになってる。

 私はお前の子どもじゃないぞ。

 クレアは私が泣き止むまで私の頭を撫でていた。

 お前といると調子が狂う。けど、別に不快ではない。


「クレア……」


「なあに?」


「そ、その……こ、これからもずっと、そばにいてほしい」


「クーちゃん……今のってプロポーズ?」


「ば、バカ! そんなんじゃない! いや、今のはそう解釈されても仕方ないのか? け、けど、同性のカップルというのはありなのか?」


「クーちゃん、今のはちょっとからかっただけだよ」


「え? そうなのか?」


「うん、そうだよ。あー、クーちゃんはいつ見てもかわいいなー。そおれ、高いたかーい!」


「や、やめろ! 変なところ触るな!」


「あれ? もしかしてクーちゃん、脇の下弱いの?」


 し、しまった! つい反応してしまった!


「ち、違う! 今のは!!」


「へえ、そうなんだー。クーちゃん、脇の下弱いんだー」


「わ、忘れろ! 今すぐ忘れろ!」


 クレアは私をギュッと抱きしめると私の耳元でこうささやいた。


「忘れないよ、絶対に」


「ぜ、絶対!?」


「うん、絶対。クーちゃんのこと全部知りたいし忘れたくないから。クーちゃんはどう? 私の全部、知りたい?」


「わ、わたわた、私は……! プシュー」


「あははは、クーちゃんオーバーヒートしてるー。かわいい」


 お前のかわいいの基準がよく分からない。

 あー、でも今はどうでもいいや……。

 私は考えるのをやめた。

 クレアは私が再起動するまで添い寝してくれた。

 こいつは本当に私のことが大好きなんだな。

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