血涙
私が目を覚ますと、となりにマリー(吸血鬼)がいた。
えーっと、何だっけ? ラファエラさんが何かしてマリー(吸血鬼)を復活させたんだっけ?
ミシェル様(ロリ魔女)の体温が妙に心地良かったこと以外、あまり覚えていないんだよなー。
さて、これからどうしようかな。
「えへへへへ、私は今日からクーちゃんのお姉ちゃんですよー」
寝言にしてはタイミングが良すぎるな。
本当は起きてるんじゃないか?
「少しでもお前の心配をした私がバカだった。やはりお前は……」
「クーちゃんは……一人じゃないですよー」
むう、こいつはあれだな。
少し私と似ている部分があるから、こいつを否定すると私自身を否定しているような気分になるんだよな。
はぁ……一人じゃない、か。
そうだな、お前も私も一人でいる時間が長すぎた。
でも、今は違う。だから、甘えたい時は甘えていいし頼りたくなったらいつでも頼っていい。
「まあ、その……なんだ。今回みたいに一人で勝手に死のうとするのはやめてくれ。頭がおかしくなるから」
「はい、分かりました」
いつのまにかマリー(吸血鬼)が目を開けて私の顔を見ている。
いったいいつから起きてたんだ?
「なんだ、起きてたのか」
「はい、今起きました」
「本当か?」
「はい、本当です。多分、おそらく……」
はっきりしないな。それにしてもどうして一人で死のうとしたんだろうな。
まあ、私やクレア(不老不死モンスターハンター)に悲しい思いをさせたくなかったからだろう。
だからって何も言わずにいなくなるのは……。
「そうか。じゃあ、そろそろ起きるか」
あれ? 視界がぼやけて……。
「ごめんなさい」
「は、はぁ? どうして謝るんだ?」
「クーちゃんを泣かせてしまったからです」
「わ、私は泣いていない! 泣いてなんか……」
喉の奥がキュッとなる。
視界が水で歪んでいる。
ここは地上だぞ? どうして水が……。
ああ、そうか。
私は……泣いているのか。
でも、どうしてだ?
マリー(吸血鬼)は助かったじゃないか。
今さら込み上げてくるな。
くそ! 泣きたくなんかないのに……どうして。
「クーちゃん、ごめんなさい。私のせいですね」
「お前は少し黙っていろ」
「クーちゃん」
「聞こえなかったのか? 少し黙れ!!」
マリー(吸血鬼)が私をギュッと抱きしめる。
私はベッドの上で必死に抵抗した。
こんなところ誰にも見られたくない。
知人であってもダメだ。
「は、離せ!」
「離しません」
「離せ! 殺されたいのか!!」
「クーちゃん、今は我慢しなくていい時ですよ」
「黙れ! 私は別に我慢なんて……」
「クーちゃんは今、泣くのを我慢しています。我慢は体に良くないです。さぁ、思い切り泣いてください。私はしばらく黙っていますから」
「本当だな?」
「はい、本当です」
それを聞いた直後、ダムが決壊した。
私はまだまだ未熟だ。
けど、ついさっきまで楽しそうに話していたやつがいきなり死んでそのあとすぐ復活したら、悲しくて泣いているのか安心してほっとしたから泣いているのか分からなくなる。
こいつは本当に困ったやつだ。
泣きたくなんかないのに……。
「そうか……。なら、しばらくこのままでいてくれ」
「はい、分かりました」
私の涙はいつしか血涙になっていた。
体の水分が徐々になくなっていくのを感じる。
でも、涙は止まらない。
ラファエラさんほどではないが、止まる気配がない。
この体は不便だ。けど、私が私を失わないように泣きたい時は泣くことにしよう。
私は白いベッドが私の血涙でほとんど真っ赤になってしまうまで泣き続けた。
はぁ……人間の体というのは不思議なものだな。
いったい誰がこんな機能を付けたんだろうな。




