全細胞に録音
朝、目を覚ますとマリー(吸血鬼)が私の首筋に噛み付いていた。
ついに本性を現したか。まったく、吸血鬼なんてみんな同じだ。少しくらい吸血衝動に抗ってみせろよ!
私はそんなことを考えながら彼女を引き剥がそうとした。
しかし、それをする必要はなかった。
なぜなら、思い切り噛み付いていなかったからだ。
つまり、彼女は甘噛みをしていたのだ。
「あー、クーちゃんの血のにおいがするー。においだけで頭がクラクラしますー。もっと、もっと私にそのにおいを嗅がせてくださーい!」
「ダメだ! 今すぐ起きろ!」
私が彼女の頭にチョップをすると彼女はゆっくり目を開けた。
「あっ、クーちゃんだー。おはようございまーす」
「おはよう。マリー。お前の嫌いな朝がやってきたぞ」
「嫌いというか苦手なだけですよー。ふわぁ……あー、よく寝た。なんだかいつもより体が軽いような気がしますねー。クーちゃんと一夜を共にしたからでしょうか?」
「お前、本当に吸血鬼なのか? もう少し弱体化しろよ」
「ちゃんと弱体化してますよー。あー、お腹空いたー。クーちゃん、血を吸わせてくださーい」
「私の血はお前のものではない! 全部私のものだ!」
「えー、少しくらいいいじゃないですかー。ちょっとだけ吸わせてくださいよー」
「ダメだ! お前がピンチにでもならない限り、私の血はやらん!」
彼女はニヤリと笑う。
「へえ、そうなんですかー。ふーん、へえ」
「い、今のはなしだ! 忘れろ!!」
「嫌でーす。全細胞に録音させたので一生忘れませーん」
「ふざけるな! 今すぐ忘れろ!!」
「嫌でーす」
「忘れろ!!」
「嫌でーす」
「忘れろ!!」
私たちはそんなことを言いながら家の中を走り回った。
吸血鬼というのはみんなこうなのだろうか?




