そんなこと言われたら私……
あっ、そうだ。
「おい、マリー」
「何ですか? 私に血を吸わせたくなったのですか?」
「お前の耳は壊れているようだな」
「冗談ですよ」
「そうか。なら、いい」
こいつの頭の中には私の血を吸いたいという欲望しかないんじゃないか?
まあ、さすがにそれはないか。ないよな?
「例の薬草の件、どうして私に依頼したんだ? ミシェル様に頼めば私よりずっと早く解決してくれただろうに」
「あの人は自分がやりたいことしかしませんからねー」
「なら、お前が勝手にやればいいじゃないか」
「私は吸血鬼ですよ? 日中は弱体化していますし、夜はクーちゃんとイチャイチャしたいのでそんな面倒なことに時間を使いたくありません」
こいつ、私に面倒ごとを押し付けたのか?
「消去法で私に面倒ごとを押し付けるな。まあ、クレアに依頼してたらもっと面倒なことになってただろうから結果としてはまあ正解だな」
「そうそう、何もかも私の計算通りなのですよ」
「本当か? なら、もし私が依頼を放棄していたらお前はどうするつもりだったんだ?」
「クーちゃんは私と違って真面目でいい子なのでそんなことはしないだろうと思い、依頼しました」
「あまり他人を信用しない方がいいぞ」
「私は基本的に誰も信用していませんよ? けど、クーちゃんは違います。私の本性を知ってもそばにいてくれますから」
「それは……なんというか、お互いに秘密を共有しているからだ」
「本当ですかー? 本当は私のことが好きで好きでたまらないけど、そんな恥ずかしいこと言えないから放置してるだけなんじゃないですかー?」
「う、うるさい! 黙れ!!」
「あれー? 照れてるんですかー? クーちゃんはかわいいですねー。よしよし」
マリー(吸血鬼)はそう言いながら私の頭を撫で始めた。
「許可なく頭を撫でるな! 殺すぞ!」
「冗談でもそんなこと言わないでください。そんなこと言われたら私……」
す、少し言いすぎたかな?
「クーちゃんのこと襲いたくなっちゃいますー」
あっ、こいつはダメだ。
変人だ、変態だ。狂人だ、異常だ。
「そうか。なら、好きなだけ頭を撫でていいぞ」
「え? いいのですか?」
「ああ、いいぞ」
「そうですか。では、遠慮なく」
彼女は気が済むまで私の頭を撫でていた。
私がそれを許可したのは襲われるよりかはマシだったからだ。
決して彼女に心を許したからではない。




