自覚してない
私がミシェル様の家に着いたのは深夜頃だった。
まあ、今日中に帰ってこいとは言われてなかったから私がいつ帰ろうと私の勝手だ。
そんなことを考えながら扉を開けて家に入るとクレア(不老不死モンスターハンター)が待ち構えていた。私は咄嗟に逃げようとしたが、彼女の涙を見た瞬間その気は失せた。
私の魔力探知に引っかからなかったということはクレアかミシェル様(ロリ魔女)がアンチ魔力探知でも使ったのだろう。
クレアは私の無事を目視で確認した後、私をギュッと抱きしめた。
「クーちゃんのバカ! こんな遅くまでどこに行ってたの!?」
「いや、どこっておつかいをしに町へ……」
「薬草を買って帰るだけでしょう!? どうしてこんな時間までかかるの!?」
「いや、その……おつかいは二つあってだな」
「二つ? ミシェル様のおつかい以外にもう一つあったの?」
お前、あの時私と同じ場所にいただろ……。
マリー(吸血鬼)のやつ、私だけに聞こえるように言ったのか? それともクレアが聞いてなかっただけか?
「あー、まあな」
「そっか。なら、仕方ないね……なーんて言うと思った?」
「え?」
「クーちゃんみたいな幼くてかわいい女の子が一人で出かけるだけでも危険なのにこんな夜遅くにトコトコ歩いてたらヘビとかオオカミに食べられちゃうよ?」
「はぁ? そんなのやられる前にやればいいだけの話だろ? お前は何を心配しているんだ?」
「はぁ……クーちゃんは自分のかわいさを自覚してないんだね。うーん、どうやったら自覚するのかなー?」
「そんなの自覚して何になる? 私は私だ。というか早く離せ。私はもう寝る」
「あー、ごめんね。そうだよね、クーちゃんなら一人でも生きていけるよね」
「昔の私はそうだった。けど、今は違う。今の私の周りにはクレアとマリーとミシェル様とラファエラさんがいる。だから、その……心配してくれるのは嬉しい。い、以上だ! おやすみ!!」
「クーちゃん……。かわいすぎるよー!!」
クレアは愛玩動物を愛でるように私の頭を執拗に撫で始める。
「うわっ! い、いきなり抱きつくな! 気持ち悪い!」
「クーちゃーん! 私のお嫁さんになってー! 絶対幸せにするからー!」
「私にそういう趣味はない! というか、はーなーれーろー!」
「クーちゃん! クーちゃん! あー、やっぱりクーちゃんはかわいいなー」
クレアがおとなしくなるまで私はずっとクレアに頭を撫でられていた。




