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固有特性

 ラファエラさんは一日中ミシェル様の腕を抱きしめていた。

 ミシェル様はたまーに嫌そうな顔をしていたが無理やり引き剥がすと彼女が大泣きして世界が水没する恐れがあるため諦めて放置していた。

 なんというか、姉って大変なんだな。


「クーよ、お前に頼みがある」


「何ですか? もうメイドにはなりませんよ」


「そうではない。まあ、なんだ。その……ラファエラのことなんだが」


「私には関係ありません。自分でなんとかしてください」


 本人があんたのとなりにいるんだぞ?

 私を厄介ごとに巻き込むな!

 私が自分の部屋に戻ろうとすると、ミシェル様は私の手首を掴んだ。


「まあ、待て。とりあえず話を聞いておくれ」


「あなたの妹と関わると不幸になるんです。なので私を巻き込まないでください」


「妹といっても血のつながりはないのじゃよ。じゃから、まあ、義理の妹じゃな」


「そうなのですか?」


「ああ、そうじゃよ。まあ、わしらの創造主は同じじゃがな」


 創造主? まるで誰かの手によって生み出された存在みたいな言い方だな。


「どうしてそうなったのですか? 何か理由があるのですか?」


「わしらはな、生きているだけで周りに影響を与えるのじゃよ。例えば、わしの家……わしらを守ってくれているこの木が何年経っても元気なのは、わしの固有特性『消えない炎』の影響じゃ」


 き、消えない炎?

 うーん、なんとなく不老不死っぽいイメージがあるな。


「それってもしかして自分と自分の周囲にいる生命体を不老不死にする力なのですか?」


「うーんとな、自分の周囲にいてなおかつわしに認められなければその力は発動しないのじゃよ」


 なるほど。まあ、もしそうじゃなかったらこの森にいるやつらみんな不老不死になってるな。


「その固有特性というのは消去できないのですか?」


「それはできぬ。なにせ、わしらにとって固有特性は呼吸のようなものなのじゃから」


「そうですか……。それでラファエラさんの件はどうするんですか?」


「うーん、まあ、ラファエラが満足するまではこのままじゃな。クー、話を聞いてくれてありがとう。お礼にキスをしてやろう」


「え? い、いいですよ。私は別に何もしていませんから」


「遠慮するな。ほれ、近う寄れ」


「は、はぁ」


 ミシェル様は私のひたいに優しくキスをすると「おやすみ、クー」と言ってから自室に向かって歩き始めた。

 その間、私は彼女にキスをされた部位を触りながら疲れを誤魔化し切れていない彼女の背中を見ていた。

 おやすみなさい、ミシェル様。今日はゆっくり休んでください。

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