ラファエラさんの涙
ミシェル様と共にミシェル様の家に戻ろうとした時、数分前に失神したはずのラファエラさんが目を覚ました。
「待って! お姉ちゃん! 私を一人にしないで!」
「わしらが誕生した時から何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も言われてきたことがある。お前はそれを忘れてしまったのか?」
「う、ううん……そんなことは、ないよ」
「そうか。では、その時が来るまでお別れじゃ」
「う……うう……」
ラファエラさんはその場に座り込むと地面とにらめっこしながら泣き始めた。
「ミシェル様、その時とはいつのことですか?」
「魔王が復活した時じゃ」
「復活したらどうなるのですか?」
「わしらの手で再びやつを倒さねばならぬ」
「倒さないとどうなるのですか?」
「やつは存在しているだけで災いをもたらす。無意識のうちにやつは命を食ってしまうのじゃよ。じゃから、倒さねばならぬのだ」
「そうですか。では、なぜラファエラさんを突き放そうとしているですか?」
「わしらはいざという時以外、一箇所に集まってはいけないのじゃよ。わしらが長時間一箇所に集まると世界のバランスが崩れてしまうのじゃよ。じゃから、わしらはできるだけ接触しないようにしておるのじゃ」
「それはなんとかならないんですか?」
「無理じゃな」
「その結果、ラファエラさんの涙でこの森が水没したとしてもですか?」
「ああ……。ん? クー、お前今なんと……」
ラファエラさんの涙で私たちがいる部屋は浸水していた。
このままではいずれこの部屋は水槽になってしまう。
「お姉ちゃん……お姉ちゃん……お姉ちゃん」
「ラファエラ、お前……」
ミシェル様がラファエラさんのそばまで歩み寄る。
ミシェル様はラファエラさんの顔に両手を添えると彼女の頬に優しくキスをした。
「お姉、ちゃん……」
「ラファエラ、しっかりせい。お前がいつまでも泣いていたらこの世界から陸がなくなってしまう」
「じゃあ、私と一緒に暮らそう。私、お姉ちゃんがいないとダメなの。お姉ちゃんの温もりが欲しいの。愛が欲しいの。私を温められるのはお姉ちゃんだけなの。もう一人は嫌なの」
「ラファエラ……。はぁ……まったく、お前というやつは。よし、分かった。同棲を許可する」
「本当に? 嘘じゃない?」
「嘘ではない。さぁ、帰るぞラファエラ」
「う、うん!」




