私が止めてやろう
夜になったな。
よし、さっそくやつを倒しに行こう。
「ミシェル様」
「なんじゃ?」
「あんたは強い。正直、今の私ではどうやっても絶対に敵わない。だから、その……」
「みなまで言うな。安心せい、お前たちが留守の間この家はわしが守る」
「ありがとうございます。このお礼は必ず」
「恩とか礼とかどうでもいいからとっとと用事を済ませてこい」
「はい。行くぞ、クレア」
「え? あ、あー、うん」
私とクレア(不老不死モンスターハンター)はマリー(吸血鬼)が衰弱するまで彼女の血を吸った吸血木を倒しに向かった。
「なあ、クレア」
「なあに? クーちゃん」
「その吸血木とやらはどこにいるんだ?」
「え? あー、えーっと、なんか普通に移動できるらしいから、もしかしたら近くに……」
「キエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」
耳が裂けそうなくらい不快な声が頭の中で暴走している。
なんだ!? この不快な声は。
頭がおかしくなりそうだ。
両耳を塞いでも聞こえてくるその声はとある巨木から発せられている。
「さぁ、食事の時間だー!!」
しなやかな枝が私たちを襲う。が、私にはオートカウンターがある。
しかも相手は木だ。燃やしてしまえばそれで終わる。
「クーちゃん! 危ない!!」
「来るな! 私のことはいい!」
私はクレア(不老不死モンスターハンター)を蹴飛ばした。
こいつの血を吸うと不老不死になってしまう。
それはナナギや薬草で判明している。
だから、本当は私一人で倒しに行きたかった。
しかし、こいつは心配性だ。
かわいいものが絡むと特に心配性だ。
お前のかわいいもの好きは長所でもあり短所でもある。
だから、早めにそれを……どうにかしておきたかった。
「クーちゃん!!」
「心配、するな。私は死なない」
「ふっふっふっふっふ。さぁて、まずはこの幼子の血からいただこうか」
私の体に刺さっている無数の枝が私の血を吸おうとする。
私は血を吸われる前にフレイムドラゴンに変身した。
「な、なにいいいいいいいいいいいいいいい!?」
「残念だったな。私は! 化け物だ!!」
私が口から放った火炎ブレスはやつの体を焼き尽くした。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
やつの断末魔が森中に響き渡る。
うるさいな……静かにしてくれ。
頭に響くから。
「よし、死んだな。あとは火が広がらないように消火しておこう」
フレイムドラゴンからレイクスネークになった私はそいつがこの世からいなくなった後に口から水を吐いて火を消した。
私は人の姿に戻ると地面に座り込んでいるクレア(不老不死モンスターハンター)の元まで歩み寄った。
「おーい、クレアー。終わったぞー」
返事がない。もしかして腰が抜けて動けないのか?
それとも……。
「おい、クレア。だいじょう……」
「バカッ!!」
クレア(不老不死モンスターハンター)はそう言いながら私を抱きしめた。
「バカとはなんだ? お前の血を吸われたら大変なことになるから庇っただけだ」
「それがダメなの!! なんで分からないの!?」
こいつ、怒っているのか? いや、違う。
こいつは今……。
「すまない。なんだかよく分からないが、お前を悲しませてしまったようだな」
「クーちゃんは……もっと自分を……大切にして。お願いだから」
そうか。お前にとって私は自分より大切な存在でその私が自殺行為をしたから泣いているんだな。
「すまない。これからは気をつけるから、もう泣かないでくれ」
「無理だよ。自分じゃ止められないから」
「そうか。じゃあ、私が止めてやろう」
「え?」
私はクレア(不老不死モンスターハンター)の目から零れ落ちている少し熱を帯びている透明な液体を舌で舐めとった。
マリー(吸血鬼)やミシェル様にクレア(不老不死モンスターハンター)の泣き顔を見せるわけにはいかない。
クレアにはいつも笑っていてほしい。
お前が泣いていると私も泣きそうになるから。




