伝言
ちくしょう……。
どうすればあいつに勝てるんだ?
ミシェル様が使っていない部屋のベッド。
そこに座った状態で拳を強く握りしめている私。
そんな私のそばにある窓。
そこから入ってくる月明かりを遮った者がいた。
「こんばんは。クーちゃん」
「……マリーか。何しに来た?」
「とりあえず中に入れてください。クレアさんの伝言を聞かせたいので」
「……分かった」
マリー(吸血鬼)と一緒にベッドに座る。
お前は私のような幼女の血を好む変態だが、他人が弱っている時に吸血するようなやつではない。
まあ、そうしないという約束やルールなんてものはないが、なんとなくそう思える。
だからといって、私はお前のことを完全に信用しているわけではない。
たとえ、お前と出会った日の夜のことを忘れたとしても。
「で? その伝言ってのは何なんだ?」
「クレアさんの伝言その一。『ミシェル様はかわいいものが好き』」
「は?」
「クレアさんの伝言その二。『ミシェル様の部屋にはかわいいぬいぐるみがたくさんある』」
「おい、ちょっと待て」
「クレアさんの伝言その三。『ミシェル様の趣味はお菓子作り』」
「いや、だからちょっと待て」
「伝言は以上です。では、私はこれで」
「は? いや、ちょっと待て! なんだよ、それ! それだけか? おい! なんとか言えよ!」
彼女は自分の顔をグイと私の顔に近づけると、私の頬を舌で舐めた。
「もういい! 帰れ! 二度と来るな!」
「ふふふふ、照れてるクーちゃんかわいい。よしよし、また明日来ますからねー」
「頭を撫でるな! とっとと失せろ!」
「はいはい」
彼女はそう言うと、窓から外に出ていった。
はぁ……今日はもう寝よう。




