血しぶき
マリー(吸血鬼)は朝になる前に家に戻りたいと言った。
そうだな、クレア(不老不死モンスターハンター)が目を覚ました時、家に誰もいなかったら寂しがるもんな。
私はマリーが迷子にならないように彼女と手をつないで家まで歩いた。
目的地に到着するとクレアが薪割りをしていた。
「あっ! おかえり! 二人とも。どこに行ってたの?」
クレアは斧を切り株の上に置いた。
「湖の近くで月を見ていたんだよ。なあ? マリー」
「はい、そうです。ふわあ……そろそろ寝たいので私はこのへんで失礼します」
「ああ、分かった。ベッドまで自分で行けるか?」
「あー、大丈夫ですー」
本当に大丈夫なんだろうか?
フラフラしている、危なっかしいなー。
マリー(吸血鬼)が家の中に入るとクレアは私にこんなことを言った。
「クーちゃんはいつからマリーちゃんと仲良くなったの?」
「別に仲良くはない。ただ、放っておくとどこかに行ってしまいそうだから私という名の鎖で拘束しているだけだ」
「ふーん、そうなんだー。じゃあ、私も拘束してよ」
「は?」
「あー、ごめん。今のなし。クーちゃん、手をつないでほしいんだけど、ダメかな?」
なんだ、そんなことか。
「お安い御用だ」
「ありがとう! クーちゃん!!」
まったく、お前は本当に……。
私が彼女の手を握ろうとした時、何かが切断される音がした。
肉と骨がちぎれ、切断された体の一部が地面に落ちる。
私の体は血しぶきを浴びて真っ赤に染まった。
「……え?」
私の目の前にあるはずのものがない。
クレアの顔がない。
クレアの顔は私の足元にある。
な、なんで? どうして? 私がやったのか?
違う、私じゃない。私はこんなことしない。
じゃあ、誰がやったんだ? 誰が……誰がこんなことを。
「やったー! 仕返し成功! どうだ! 思い知ったか! 人間が妖精に手を出すとこうなるんだよー! ざまあみろ!」
「……許さない」
「ん? なんだ? 化け物」
私はこの世で最も憎い存在をにらみつけると、殺意を剥き出しにした。
「お前は絶対に許さない! 殺してやる!!」
「ははっ! やれるものならやってみろ!」




