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光化

 ……やっと……やっと意識が……戻る……。

 私が目を開けるとそこにはクレア(不老不死モンスターハンター)の背中があった。


「おい、クレア。なぜお前は私を背負っているんだ?」


「あっ、起きた? いやあ、クーちゃんの意識がないってことが分かった時はどうしようかと思ったけど、体を休めるために強制スリープモード? 的なものが発動してるんだってマリーちゃんが教えてくれたからほっとしたよー」


 マリーめ、余計なことを。


「そうか。それより、なぜ私の居場所が分かった?」


「クーちゃんの魔力はこの森のどのモンスターより優しい感じがするから、すぐに分かるよー」


「優しい? どこがだ。私はお前たちを……」


「クーちゃんは私たちを見捨てたんじゃない。私たちを妖精から遠ざけるために一人で妖精にいどんだ。そうでしょ?」


「ち、違う! 私は……!」


「何が違うの? そうじゃなかったら今頃森は火の海だよ。森を守りながら戦ってたってことは私たちの家まで火が回らないようにしてたってことでしょ?」


 く、クソ。どうしてこの女はこういう時だけ鋭いんだ?


「む、無意味な破壊は何も生まないから、だから森を守りながら戦っていた。ただ、それだけのことだ」


「ふーん、そうなんだ。まあ、そういうことにしておこうかな」


 今のこいつには勝てない。

 私が何を言っても私を見捨てはしない。

 なぜだ。なぜお前はそこまで私にこだわる?

 私の容姿が好きだからか?

 それとも私がかわいいものだからか?


「お前はバカだな。こんな私を生かしておいても何もいいことはないぞ」


「いいことならたくさんあるよ。クーちゃんがいてくれるだけで私は毎日幸せだし、抱き心地は最高だし、同じ空間にいるだけですっごく癒されてる。こんなこと今まで一度もなかったよ」


「それは私の魔法かもしれないぞ?」


「ううん、魔法じゃないよ。魔法だったら使ってる時に心臓の鼓動が少し早くなるもん」


 なぜそれを知っている?

 こいつには魔力が見えているのか?


「そ、そうか。しかし、私は弱い。正直、足手まといだ」


「今はそうかもしれないけど、これからどんどん強くなるよー。クーちゃん、伸びしろしかないもん」


「なぜそう言い切れる?」


「私の光がそう言ってるからだよ」


「さっきお前が使っていたやつか」


「そう、光そのものになる魔法『光化こうか』。あんまり長い時間使えないけど、あの状態なら誰にも負けないよ」


「そうか……」


 私は家に着くまでクレアの背中で静かに泣いていた。体に必要な水分をみずから放出する愚行。

 バカだ、私はこいつよりバカだ。恥ずかしすぎて爆発しそうだ。


「クーちゃん、泣きたい時は泣いていいんだよ」


「うるさい! 私は泣いてなどいない!」


「そっか」


 クレアはそれから家に着くまで何も言わなかった。

 くそう、ちくしょう。次は絶対負けない。

 今よりずっと強くなってみせる。

 だから、泣くのは今日限りだ。

 これからは何があっても泣かない。

 そう、何があっても。

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