今すぐきれいにな・あ・れ☆
……来たか。
「やあ、久しぶりだね。試作品306号」
「はぁ……お前のクローンはいったい何体いるんだ? アスクレピオス」
「さて、何体だったかな。そんなことより少し散歩でもしないかい?」
「窓から私の部屋に侵入してきた不審者と散歩か……。まあ、別に構わないが」
「君ならそう言うと思ってたよ。じゃあ、行こうか」
「ああ」
おかしい、静かすぎる……。
「僕の崇拝者によってキメラにされた女、クレア。月からやってきた吸血鬼のプリンセス、マリー。呪われし髪を持つ少女、ルナ。君の師匠、ミカエル。猫が大好きなラファエル。いつも自由なガブリエル。ルシフェルのことが大好きなウリエル。恥ずかしがり屋のルシフェル。君のことが大好きなアズラエル。不完全な君のクローン、リット。元ハーデスの槍、バイデント。ヘルメスとアフロディーテの息子、ヘルマプロディートス略してヘルス。フランケンシュタインになり損ねた欠陥品、ムメイ。デビルキャットのメス、ビィー。地龍のメス、プロン。私の天敵『エア』の子ども。君が助けた奴隷たちの中で一番強い、獣人のナッツ。幼少期がない女神、アテナ。嫉妬深いゼウスの姉、ヘラ。かまどの神、ヘスティア。二つの人格を持つ女神、アルテミス。そして、魔王因子から生まれた小さな黒蛇、スー」
「……よく知ってるな」
「これくらい当然です」
「で? お前の目的はいったい何なんだ?」
「君は四人目の処女神に選ばれたそうですねー」
「ああ、まあ、そうだな」
「普通なら祝福すべきなのでしょうが、僕は祝福しません」
「は?」
「君は不完全だからこそ価値があるのです! 未発達な心身と適合率ほぼゼロのキメラシステム、そして今まで誰もその身に宿すことができなかった全てをゼロにできる力、魔王因子を持つ最悪にして最高の存在、それが君なんですよ! それなのに君は処女神などというわけの分からないものになろうとしている! これはいったいどういうことですか!!」
「そんなの私にも分からない。でも、これだけは分かる。私はお前のことが大嫌いでお前にあれこれ言われるとなぜか腹が立つということだ」
「静かに燃える怒りの炎、いいですねー。しかし、君は誰がなんと言おうと僕のものです。なので、あなたに不必要な存在は全て抹消します」
「なに? まさか! お前!!」
「クロノスの懐中時計、発動!!」
クロノスの懐中時計だと!? くそ! やられた!!
「魔王因子は君の肉体と精神、そして記憶がなければ使用できないことは君のクローンたちが教えてくれました。つまり、君が僕の操り人形になれば僕はこの世界の王になれるというわけです!! ということで今から君のキメラシステムを反転させます。キメラシステム、反・転!!」
くっ! 体内にいるモンスターたちが暴走している! このままでは私まで暴走してしまう!!
「あー、それと君が暴走したら先ほど僕が述べた不必要な存在たちを魔王因子で抹消してもらいます。僕が名前を言ったら消してくださいね……って今の君は返事できないですよねー」
ああ、ダメだ。もうすぐ私は私ではない何かになってしまう。みんな、すまない。どうやら私はいつまで経っても未熟者のようだ。
「さぁ、目覚めの時だ! 僕の最高傑作、アルティメットブラックキメラクイーン・ゼロ!!」
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「魔王因子によって強化された暴走状態のモンスターたちの融合体! そう、これです! これこそが僕の理想、そして僕が長年追い求めていた真のキメラです!! さぁ、早くその力を使ってこの世の全てをゼロにしてください!!」
「ダメです。ということで、さようなら。エターナルクリア!!」
「はぁ? いったい何を言って……お、お前は! エアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ふぅ……これでアスクレピオスは二度と復活できませんね。さて、もう一仕事やりましょうか」
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「安心してください。痛みは一切ありませんから」
まあ、成功するとは限りませんが。
「それでは、行きますよー! 今すぐ、きれいにな・あ・れ☆」
「……あれ? ここはどこ? 私は誰?」
「やったー! 成功ですー! あっ、でも記憶喪失になってますねー。うーん、まあ、そのうち思い出すでしょう!」




