新しい所有者
時間だな……。
「おい、こんな夜中にどこに行くつもりなんだ?」
「ナッツか」
「質問に答えろ。まさか本当にいなくなるつもりじゃねえだろうな」
「だとしたらどうする?」
「私もお前と一緒に行く」
「ダメだ」
「なんでだよ! 私が未熟だからか?」
「お前をあんなところに連れて行くわけにはいかないからだ」
「あんなところってどこだよ」
「冥界だ」
「め、冥界? なんでそんなところに」
「うちにバイデントという黒髪ツインテールの美幼女がいるだろう」
「え? あー、いるな」
「あいつはハーデスの槍だ」
「はぁ?」
「そしてあいつは私についてきた。だが、たまにハーデスに顔を見せないとあいつはこっちにいられなくなる。で、あいつはそれが嫌で嫌で仕方ないらしい。それをどうにかするには私が冥界の天使『冥天使』になり、あいつの新しい所有者になる必要がある」
「なるほど。つまり、それになるには冥界に行ってなんかしないといけないわけだな」
「まあ、そんな感じだ。そしてそれが済んだら私はこの世での記憶を消される。まあ、正確にはバイデントが必要ないと思う記憶だけだが。とにかくそういうことだから、明日の朝みんなに伝えておいてくれ」
「ちょっと待て」
「もうすぐ約束の時間なんだ。許してくれ」
「許さねえ。勝ち逃げなんて許さねえ!」
「分かってくれ、ナッツ」
「分かんねえよ! そんなこと急に言われても!! なんでもっと早く言わねえんだよ!! 他にいくらでも方法があるだろ!!」
「ないんだよ、そんなものは。だから、こうしてこっそり一人で」
「お前はそれでいいのかよ」
「なに?」
「お前はそれでいいのかよって言ったんだよ!! 答えろ!!」
「構わない。記憶を消される程度で済むならマシな方だ」
「それ、他のやつらに言ったのかよ」
「言ったら止めるだろうから言っていない」
「だろうな。あんたのことだ、勝手に決めて勝手に実行しようとしてるんだろう」
「ああ、そうだ」
「そうか。なら、さっさとバイデントと話せよ」
「話したところで何の解決にもならない」
「話してもねえのに結論出すな! 何なんだよ! お前は!!」
「クー様ー、誰と話してるんですかー?」
「バイデント、私は別に誰とも」
「バイデント! こいつ、お前のために冥天使になろうとしてるぞ!!」
「え? それは本当ですか? クー様」
「……余計なことを。ああ、まあ、そうだな」
「あー、そういえば、まだクー様に話していませんでしたね。クー様はとっくに私の新しい所有者ですよ」
「なん……だと?」




