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用済みになったキメラ

 とある研究所。


「うーん、なんか人間をベースにキメラ作るより妖精かなんかをベースにした方がいいかもしれないなー。よし、未完成だけど試作品306号は廃棄しよう」


 人工的に合成獣キメラを作ろうとしたものがいた。

 しかし人間をベースに作ろうとすると、すぐに死んでしまうということに気づいた。

 試行回数でなんとかなると思っていたが魔力量が少ない人間ではまず無理だった。


「おい、試作品306号。起きろ」


「……なん、ですか?」


「あー、えーっとな、未完成だけど正直これ以上人間をベースにしてキメラを作ってもうまくいかないと思うんだよ。だから、その……廃棄してもいいか?」


 廃棄……。

 私には、ここに来る前の記憶がない。

 記憶を消されてしまっているのかもしれないが、記憶がまったくない。

 私より早くここにいた人たちはみんな死んでしまった。

 みんなモンスターの細胞を取り込んだ後、早くて数秒遅くて数日で体がバラバラになって死んでしまった。

 私もいつかそうなるのだろうと思っていたが、今のところそうなるきざしがない。


「私はもう……用済み、なのですか?」


「まあ、そうなるかなー。成長しないし感情をあらわにすることもないし、それにぶっちゃけ妖精の方がいじりやすいんだよねー」


「そう、ですか……」


 ああ、そうか。今まで死んでいった人たちの死は全て無駄だったんだ。

 そして私もいずれそうなる……。

 あー、でも妖精さえいなければ私は廃棄されずに済むんだろうな……。


「うん、まあ、こればっかりはどうにもならない。じゃあな、試作品306号」


「……はい」


 私を化け物にした人が赤いボタンを押すと私が入っている水槽の中に紫色の液体が流れ込んできた。

 おそらく毒か何かだろう。

 私に生きたいという欲はない。

 だから、私はゆっくり目を閉じた。

 どんなに足掻いても死からのがれることはできないと思っていたからだ。

 意識がだんだん遠のいていく。

 さようなら、私を化け物にした人。

 もし来世があるのなら私は必ず妖精を根絶やしにします。

 そしてあなたに認めてもらいます。私こそがあなたの最高傑作だということを……。


 *


 あ、れ? おかしいな……。

 私はたしか死んだはず……。

 目を開けると見慣れた床が挨拶してくれた。

 どうやら水槽の外にいるらしい。

 体が重い……。

 けれど、状況を把握するにはまず立ち上がって歩いてみないと何も分からない。

 私は床に両手をつけて上体を持ち上げた。

 それと同時に両足も床につけて立ち上がろうとした。

 何度か失敗したが、なんとか立ち上がることができた。

 あの人の姿はない。ん? あの人って誰のことだ? まあ、いい。忘れているということはどうでもいいことだったのだろう。

 けれど、これだけははっきり覚えている。

 それは妖精を根絶やしにするということだ。

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