第98話 底辺テイマーは武道会に出ることにする
「あなたは、勇者と知り合いなのですか?」
サリュリは殺気を放つほど驚いていた。
その殺気に俺の、ハットンの細胞と混ざった右腕が反応しようとするのを、慌てて押さえ込みながら、答える。
「知り合いというか、ある街で戦った仲ですね」
「戦った……そうですか」
サリュリは俺の言葉に少し落ち着いた様子だった。
そういえば、俺と勇者は農業の街で、手合わせをしただけの仲でである。友人とも仲間とも違う。ただの知り合いか? そもそも、勇者は俺の名前を知っているかどうかも怪しい。
そんな俺が突然訪ねて、会ってくれるだろうか?
不安がこみ上げてきた俺に、サリュリは話しかけてきた。
「そうすると、武道会で優勝しなくても、勇者と会えるのですね」
「……それが、今思えば、勇者は俺のことを覚えている覚えているか心配になってきた」
「そうですか。私たちは勇者に会うためにやってきたので、あなたたちが紹介していただけるとありがたかったのですが……仕方ないですね。予定通り、武道会で優勝するしかありませんね」
サリュリは酒を飲み干して、覚悟を決めるように言った。
武道会で優勝すれば勇者と会うことが出来る。その時に助力をお願いすることができる。
しかし、俺が優勝できるのだろうか? 底辺テイマーの俺に。それでも、優勝して勇者の力を借りなければ魔獣協会に対抗することは厳しいだろう。
「俺たちも、その武道会に出る。それで、四人の内、誰が優勝しても四人で勇者に会うと言うのはどうだ?」
「四人?」
サリュリの師匠は俺、ハットン、サリュリの順に指を差して数えると不思議そうな顔をする。そして同じようにサリュリもサリュリ、俺、ハットンの順に指を差して不思議そうな顔をして俺に尋ねた。
「もう一人はどこにいるのですか?」
「え! あなた、サリュリさんの師匠でしょう。それなのに武道会にでないのですか?」
「ワシが、武道会に?」
師匠はナッツを取り出して、食べるとサリュリと顔を見ると笑い始めた。
サリュリも釣られて笑い始める。
「師匠が、ははは、武道会に……わはは」
「なんで、笑っているんだ」
「だって、師匠が武道会に出ても、すぐに負けてしまいますよ。私より弱いんですから」
「サリュリさんの師匠なら、かなりの腕ではないのですか?」
俺は師匠を見た。帯刀はしているもののサリュリほどのすごみを感じられない。しかし、それはあくまで戦闘中でないからだと思っていた。
当然、弟子が師匠を超えることも珍しくない。しかし、その場合、弟子は独り立ちして、師匠は新たな弟子を取ったりする。
「まあ、師匠は師匠ですから、戦力に考えないでください」
「そうだよ。ワシを戦力に数えないでくれ」
「サリュリさんは独り立ちしないのですか?」
「独り立ちと言っても、私はまだ、ヒトカゲ流の免許皆伝をもらってないですから」
そう言って、サリュリは笑った。




