第97話 底辺テイマーは王都に行く理由を話す
「何ですか、これは!?」
俺は思わず叫んだ。
アルコールが強いだけの安酒。割ったり、薄めたりする用の安酒である。ドワーフの酒を飲み慣れてしまった俺には受け入れられる様な物ではなかった。
俺はバッグの中の入れていたドワーフの酒を男に渡した。
「こんなの酒じゃないです。これを飲んでください!」
「お、返杯か? おお、なんだ、この酒! 美味い! こんな美味い酒を飲んだのは初めてだ!」
「師匠、終わりましたよ。って何飲んでるんですか!?」
「おお、終わったか。もうちょいゆっくりとしてて良かったんだけどな」
サリュリと呼ばれた女剣士は、先ほどまで戦闘をしていたとは思えない涼しい顔で帰ってくると、酒を飲む男に文句を言う。
男はサリュリが無事に帰ってきたことに何の疑問を抱いていない様子を見て、男のサリュリに対する信頼が見て取れた。そして、応援にも来なくて、無事に戻ったことにねぎらいの言葉もない男に対して文句を言うわけでなく、ただ、飲酒に対して文句を言うサリュリを見て、お互いに信頼し合っているなかだと俺は理解する。
「い、いや、ほら、そこの御仁が上等な酒を振る舞ってくれると言うんだ。それを断るというのはほら、武人としての恥だろう」
「何言ってるんですか、武人の誇りなんてとっくの昔に捨ててるでしょうが! すみません。うちの師匠がご迷惑をおかけしまして」
サリュリは驚くほど腰を低くして、俺達に頭を下げた。
詳しい話を聞く前にこのような態度をすると言うことは、普段からこの男に迷惑をかけられているのだろう。それでも、同行していると言うことはこの男も相当の実力者なのだろう。
「いえいえ、彼の言うとおりですよ。俺が勧めたんですよ」
「ほら、言っただろうが、サリュリは疑いすぎだ。しかし、本当に美味いなこの酒は」
「良かったら、あなたもどうぞ」
「あ、どうもすみません」
サリュリは素直に酒を受け取ると一口付け、美味い美味いと飲み始めた。
その様子を見た俺は、二人のことを探り始めた。
「二人は冒険者なのですか?」
「いえ、私たちは武芸者です。旅をしながら剣の腕を磨き、王都に士官にやってきたのです」
サリュリの説明からすると王都の騎士団にでも入るつもりか、貴族の私兵にでもなるつもりだろうか?
どちらにしてもサリュリの実力なら何の問題も無いだろう。そして、その師匠であるこの男も問題無いだろう。
顔を少し赤くなったサリュリは俺たちの様子を見て、言葉を続けた。
「もしかして、あなたたちも王都武道会の参加者ですか?」
「武道会?」
「ええ、来週は年に一度の王都武道会ですよね。モンスターが出ても落ち着いた様子でしたから、武芸者か冒険者かと思ったのですが……」
「まあ、冒険者で間違いは無いですが、武道会のことは知りませんでした」
「そうですか、では王都には何の用で行かれるのですか?」
「ああ、勇者に用事があって……」
「勇者!」
俺の言葉にサリュリが、立ち上がらんばかりに驚いた。




