第92話 底辺テイマーは血を抜かれる
俺たちは、ドワーフの里に来るといつも泊まっているランリーの部屋の前に着くと、ハットンが俺に言った。
「ごめんなさい、ダーリン。流石にあたしも疲れたから休ませてもらうね」
いつもなら、シェリルがいないことを良いことに、俺と一緒の部屋に入ろうとする所なのだが、珍しく、素直に自分の部屋で休むと言い始めた。
瀕死のシェリルのことばかり考えていたが、ハットンもガルダの攻撃を受けて、決して万全の状態ではない。それなのに、俺とシェリルをここまで連れてきてくれたのだろう。
「ありがとう、ハットン。大丈夫か? 何か必要な物はあるか?」
「大丈夫よ。一晩、休めば治るわよ。それじゃあ、おやすみなさい」
「そうか、ゆっくり休んでくれ」
そう言って、ハットンは自分の部屋へと消えたあと、俺はこれからのことを考えることにした。
シェリルの毒については、ランリー達に任せるしかない。
シェリルが治ったら、まずはワタリガと合流して、戦力を集中させる。魔獣の数が同じならば、こちらが固まって各個撃破をすれば良い。
俺は大きなベッドに横になり綺麗な天井をぼんやりと見ながら、今後のことを考えていると、乱暴にドアを開けられた。
「マックス、ちょっと血をよこせ」
白衣姿のランリーは部屋に入ってくるなり、俺の腕を押さえて血液を抜き始めた。
ちょっと、待て。鍵をかけてたよな。それにそのぶっとい注射器は何だ? 前に来たときと全然大きさが違うじゃないか。そんなもんで取られたら死んじゃうんじゃないか。
「何だ、急に」
「うるさい、時間がないから黙って血をよこせ。お前の血はシェリル後と混ざって、半分魔獣の血になってるんだ。シェリルの輸血に使うんだよ」
ランリーは俺の血を少し抜くと、何やら検査をし始め、俺はその姿を唖然としながら見守るしかない。
どうやらその検査の結果が出たらしく、ランリーは驚きの声をあげた。
「おい、どうしたんだ? ほとんど、魔獣の血になってるじゃないか? 最近、またシェリルに血を分けてもらったのか?」
「いや、そんなことないけど」
「ん? その右手、おかしくないか?」
「ああ、これはハットンにあげたら、なんかこんなにして返してきたんだ」
「これ、魔獣の一部になってるじゃないか。まあ、良い。詳しい話しは後だ。時間がない。これなら願ったり叶ったりだ。血をもらっていくぞ」
「良いけど、これでシェリルは助かるのか?」
「分からん。分からんが、お前の血がなければ、どうしようもないんだ。最善は尽くす。それじゃあ、もらっていくぞ」
そう言うとランリーは容赦なく俺の血を抜き始めた。
疲れと貧血で目の前が暗くなり、そのまま眠ってしまう。シェリルの無事を祈って。




