第86話 底辺テイマーは提案する
「俺はマックスと言います。シェリルが閉じ込められていたダンジョンで、彼女と知り合いました。シェリルがダンジョンを出たのは俺のせい何です」
俺の言葉に、ガルダと蛇の魔獣が殺気立つ。
俺を殺せば、シェリルが大人しくダンジョンに戻ると思ったのだろうか? しかし、その殺気に対して、シェリルとハットンが殺気を返す。そして、ワタリガがいつでも俺を守れる体勢を取り、タマモだけが相変わらず毛繕いをしていた。
「とりあえず、最後まで話を聞いてください。あなたたちは、シェリルが昔のように暴食の限りを尽くすのを恐れて、ダンジョンに閉じ込め、今は殺害しようとしていますよね」
「……」
「しかし、多少は大食漢ではあるけれど、彼女くらい食べる者はいくらでもいるレベルです。それは、ずっと一緒にいるハットンが証言してくれるはずだ。だからシェリルの殺害命令を撤回してもらいたい」
「本当か? ハットフィールド?」
「ええ、そうよ。昔の暴食ではないわね。マックスといる限り、バカみたいな暴食には走らないと思うわよ」
「そういえば、温泉でもそんなに食べなかったにゃう」
ハットンの答えに迎合するように、それまで黙っていたタマモが独り言をつぶやいた。
それをガルダは聞き漏らさなかった。
「どういうことだ? タマモもシェリルに会っていたのか?」
「会ってたにゃう。温泉は入りに行ったら、ハットン姉さんたちがいたにゃう」
「なんで、お前はそんな大事なことを報告しないんだ?」
「だって、聞かれなかったにゃう」
あっけらかんと答えるタマモにガルダは頭を抱えた。
鳥が頭を抱えると言う珍しいシーンを見ていた俺は、彼らに答えを求めた。
「あなたたち二人の証言がある状態で、シェリルの殺害命令をそのままにするつもりか?」
「……人間よ。そこの暴食がした罪を実際に見たことがあって、そんなことを言っているのか?」
「罪? 食事をすることが罪だと言うのか? それであれば生きとし生けるものはすべて罪人じゃないか」
「そうだな。私を含めて罪人だ。しかし、その罪にも重さの違いがあるだろう。私の眷属も多く喰われ、やっと数が増えてきた。それをまた、同じことを繰り返すわけにはいかない。それはここに居るみんな、同じ気持ちのはずだ。世界を喰い滅ぼすこいつを放置するわけにはいかない。これが魔獣協会としての結論だ。わかったら、シェリルを置いて、帰りなさい」
ガルダはそう言い放ち、対話を切り上げようとする。
聞く耳を持たないということか。それならば、それでやりようがある。魔獣協会のルールを使わせてもらおう。
俺はこうなることを想定して、切り札を考えていた。
「魔獣協会の結論と言いますが、魔獣協会は多数決制ですよね。それでは、もう一度、今の状況を考慮して、シェリルを殺害するべきか、決を採ってください」




