第85話 底辺テイマーは魔獣城へ行く
俺たちの魔獣協会への旅はすんなりと終わった。
通常は馬車で一ヶ月以上かかるであろう道のりは、一週間とかからなかった。俺以外は魔獣の集団。荷物があるとは言え、馬の駆歩以上の速度で、数時間も走れる。
そしてモンスターが出るどころか、シェリル達を見て逃げ出すのだから、旅に障害もあるはずもなかった。
その間、ボロボロになった俺の身体は、安静にしたおかげで大分直っていた。
なんだか、最近、身体の回復が早くなった様な気がする。
「ここが魔獣協会!」
「ええ、昔何一つ変わってないわね」
そこは高い高い山の頂上。直径一キロはある火口。その中に雨水で出来た湖があり、その真ん中には強大な建物が一つ。決して優雅とは言えない無骨な城。巨体な魔獣達でも十分に過ごせるそこが魔獣城である。
地上からは決して見ることが出来ない。そして、多少、山に登ったところで、火口は深く他の山からも見ることが出来ない。つまり、この山にピンポイントで登るか空か探す以外、見つけることの出来ない建物だった。
麓までやってきた俺たちは、ハットンの触手に捕まり山頂まで浮かんでいった。
その城の中の巨大な広間に、魔獣が六人そろっていた。
巨大な猛禽類が、ぎろりとワタリガを睨んで状況の説明を求める。
「どういうことだ、ワタリガ。お前がシェリルを殺すと言うから任せたのに、なんで連れてきているのだ? 捕まえてきたわけでもなさそうだよな」
「ああ、そうだな。それについてはワシの実力不足だ。ワシは、シェリルとマックスに負けた」
「負けたのか? 負けたのになんで喰われていないんだ?」
「ああ、負けた。負けた上に、情けをかけられた。助けられた命だから、ワシは彼らの要求でここまで連れてきた」
「彼らの中に、ハットフィールド。お前も入っているのか?」
鷹の魔獣はとがめるような口調で、ハットンに尋ねた。
シェリルの抹殺はワタリガの役目であったとしても、魔獣協会の決定を無視した形で俺たちと一緒にいるハットンに、何を考えているのかと問いかけているようだった。
綺麗な半透明のクラゲの姿になっているハットンは悪びれる様子もなく答えた。
「何言ってるのよ、ガルダ。あたしは何も言ってないわよ。ダーリンが来たいって言ったから付いてきたのよ」
「そうか。それで、シェリルは命乞いに来たのか?」
ガルダと呼ばれた鷹は俺の左で隣で大人しく座っている、銀狼に問いかけた。
シェリルは、チラリとガルダを見ると、俺に顔をすり寄せながら答えた。
「別にワタシは命乞いをしに来たわけじゃないわよ。マックスが来たいって言うから付いてきただけよ。あんた達がいくら来たって怖くもなんともないわよ。マックスと二人ならね」
「お前達三人とも、たかだか人間一人に手玉に取られているのじゃろう」
それまで黙っていた大蛇が口を出した。
俺はタマモを見ると、興味がなさそうに毛繕いをしている。どのタイミングで、タマモに酒を渡すか考えていた。
そんな俺に鷹の魔獣ガルダは話しかけてきた。
「それじゃあ、あなたは誰で、何の為にここに来たのですか?」




