第74話 底辺テイマーは冒険者達の戦いを見る
砂浜と岩場の上をねっとりとしたタコがうごめいていた。
その大きな目が真っ黒な目で周りを見回し、太い触手は獲物を探しているように独立して動いているようだった。
「奴の皮膚は弾力があり、剣撃や矢が効きにくいから気をつけろ。まずは火矢を放て、戦士達は奴を海に逃がさないようにしろ」
屈強な戦士が巨大な斧ハルバードを構えながら出した指示通り、多量の火矢が放たれる。
しかし、火矢のほとんどはその皮膚にはじかれ、なんとか刺さった火矢も海水と粘液で火は消されてしまう。
その結果はあらかじめ冒険者達にも分かっていた。火矢でタコにダメージを与えられるとは考えていない。
その火矢で粘液を乾燥させるため。あの粘液は刃を滑らせ、ダメージを逸らせてしまう。戦士達が戦える場を作るためである。
そしてあらかじめ設置された油樽に火をつけるため。
タコを中心に二メートル以上の炎の壁が出来上がった。
タコを逃がさないためと粘液を乾燥させるために張った罠は見事に作動した。
そのタコに向かって、緩めること無く火矢が打ち込まれると、苦しんでいるのか、中でタコが動き回っていた。
ここまでは順調だ。この後、火が下火になったところで戦士達が弱らせた後、俺がテイムすることになる。
どこのタイミングで、俺に任されるのだろうか?
そんなことを考えた瞬間、誰かが叫んだ。
「伏せろ!」
その言葉に俺は即座に反応して、頭をかばいながら地面に伏せると、その上を何かがすごい音を立てながら通過した。そして、海水のしずくが身体に降り注いだ。
ミーティングで話していた、高圧水鉄砲だろう。それを広範囲にまき散らして鎮火を図ったようだ。
それを読んでいたかのように戦士達が突っ込んだ。
「今だ! 粘液が復活する前に、ケリをつけるぞ」
完全では無いにしても粘液は剥がれ落ちているため、武器が効くだろう。
そこに向けて戦士達が刃を立てるも、一撃でその触手を切り落とせる者など無く、巨大な木の根のような触手を数人がひとチームになり、少しずつ傷を付ける。
タンク役の大盾持ちが触手を押さえ、アタッカーが攻撃をする。冒険者は決定打を与える
時間はかかっているが、徐々にダメージを与えている。これならば俺が出るまでも無く倒してしまうのでは無いかと思われた。
俺以外の冒険者が総出でタコに対処しているのを確認したタコの瞳が、妖しく光った。




