第73話 底辺テイマーは巨大なタコを見る
「あんたの冒険職はテイマーなんだろう、超一流の。だから、モンスターを弱らせさえすれば、最後はあんたがテイムしてくれるんだろう」
そうだった。俺はテイマーだった。たった一匹しかテイムできない底辺ではあるけれど、テイマーには間違いない。領主はそんな俺のテイマーとしての腕を見込んで、討伐チームに入れたのだろうか。魔柿猿のボスをテイムしたのを信じてくれたのだろう。
しかし、俺にそんな巨大なモンスターをテイムできるのだろうか?
「あ、ああ。確かに俺はテイマーだ。しかし……」
「よし、あんたは最後の切り札だ。テイムできる状態になったら教えてくれ。俺たちはあんたがテイムしやすいようにサポートするからな。これでミーティングは終わりだ。もうすぐしたら、島に着くぞ。魔法使いは奴を陸地へ追い詰めるぞ。その後は戦士達が弱らせて、最後はテイムで、この街の長年の脅威は払拭されるぞ」
魔法使いの男の声に、冒険者達は鬨の声を上げると、各々最後の準備を始めた。
その勢いに押されて、俺が底辺テイマーであることを言うタイミングを失ってしまった。
俺にこんな大人数で挑んでも倒せないモンスターをテイムできるだろうか。
そんなことを考えていると、船長が声を上げた。
「もうすぐ、島に着くぞ~! 準備をしてくれ~」
周りは目に見えて緊張した空気に包まれた。
その空気に、俺も覚悟を決めた。できるかどうかは分からない。しかし、やるしか無いだろう。
~*~*~
俺は戦士達と一緒に島に上陸する。
動かない地面にほっとしながら、周りを確認すると、広い砂浜の先には木々が生い茂り、森の向こうには山が見える。島と言っても小島ではなく、それなりに大きな島だった。その周りが漁場と考えると確かに漁師としては魅力的だろう。
そんなことを考えていると沖で魚が跳ねた。この距離でもはっきり分かると言うことはかなりの大きさだろう。それが、一匹だけでは無く、何匹も跳ねていた。ここに漁師がいたならば、慌てて船を出しているだろう。
そんな魚の一匹は触手に絡み取られた。
「奴が出たぞ! 魔法使い隊、行くぞ」
船からその触手を見つけたリーダーの魔法使いの男が叫んだ。
船は沖合へ移動し、その触手の主の近くに移動すると、巨大な雷が触手を貫いたのを開戦の合図に、魔法使い達とタコのモンスターの戦いが始まった。
タコはその巨大な触手を使い、振り回し、絡め取り、時には高圧水を吐き出し、船を沈めようとする。
それを阻止しつつ、島へ追い込もうと動く船、船員と魔法使い達。
その攻防はどのくらい続いただろうか。とうとう、船よりも大きなタコはその全容を砂浜に表した。
「でかい。大きさだけから言えば、ハットンより大きいか?」
その姿を見て、俺はつぶやいた。




