第72話 底辺テイマーは鍵だと言われる
魔法使いの男が今回のターゲットについて説明を始めた。
島に巣くうのは巨大なタコだという。
最大五年寿命のタコではあるにも関わらず、もう十年以上前には発見されているらしい。
大きさはこの船ほどの大きさだというが、にわかに信じがたかった。
八本の巨大な足は振り回されるだけで、脅威であるだけで無く、その吸盤には神経毒を持つ棘があるらしい。その足で巻き付かれると、麻痺をした上にその巻き付ける力で骨を砕かれる。
その足を逃れるべく、遠距離から攻撃をしようとすると、その口から排出される高速水鉄砲は高圧水に当たるとただではすまないし、その水鉄砲を使って高速移動をする場合もあるらしい。
「常に水中にいる上に、脳と心臓が九対あり、それをほぼ同時に潰さなければ倒すことは不可能。過去に水中から引っ張り出して、いくつかの心臓と脳を潰すことが出来たが、不利になった奴は逃げだし海の底深くで再生して戻ってくる」
「それって一気に全てを潰すしか倒す方法がないのでは? この戦力でそれが可能なのか?」
俺は集まった冒険者達を見回した。歴戦の冒険者であるのは間違いない。しかし、巨大な蛸を一気に倒せるほどの火力があるとは思えない。先ほど魔法使いの男の言うように、いくつかの脳と心臓を倒すことが出来ても、また逃げられるかもしれない。いや、もしかしたら、逃がさない対策を考えているのかも知れない。
「我々の力では、奴を倒すことは不可能だと考えている」
「じゃあ、俺は勝ち目のない戦いにかり出されているのか?」
「いや、勝ち目はある」
「え!? いま、倒せないって言ったじゃないか」
「ああ、倒せないし、倒す必要もない」
「ちょっと待て、どういうことだ?」
倒せないのに勝ち目があると言うことはどういうことだ?
今回は防衛戦ではなく、蛸のモンスターを倒して、漁場の安全を確保しなければならないはずだ。ならば、モンスターが逃げた後、戻ってこないように罠でも張るのだろうか?
そんな事を考えていると、魔法使いの男は俺に向かって指を差した。
「鍵はあなただよ」
「俺が鍵?」
「なんだ、聞いていないのか? 俺達が奴を弱らせた後に、あんたがトドメを刺すんだ」
俺がトドメを刺す? この左腕の事を言っているのか? いや、今まで一度も使用した事がないし、誰にも話したことがない。左腕の武器の事を知っているはずがない。それに、左腕の武器には使用数の上限ある。ランリー曰く、魔獣さえも倒すほどの威力だが、一気に巨大な蛸を倒す事が出来るのだろうか?
「俺がトドメを刺す!?」
「ああ、そうだよ」




