第67話 底辺テイマーは港町へ戻ると決める
「まあ、マックスの性癖は置いておいて、どうやら無事に左腕が付いたようだな」
笑いながらそう言うランリーに、俺はとりあえずお礼を言うことにする。
「ああ、前よりも違和感はない。右手よりも調子がいいくらいだ。ありがとう」
「それは良かった。異常を感じたらすぐに連絡しろよ。魔獣の細胞を人間に移植するなんて、世界初めてなんだからな」
「あ、ああ。分かった」
一転、真剣な顔をして忠告をしてきたので、俺も真面目に答えたのだった。ランリーの言うことの半分くらいしか理解できないのだが、だからこそ、その忠告はちゃんと聞いておこうと肝に銘じた。
新しい左腕の事が落ち着いたので、俺は本来の仕事に戻ることにする。
「なあ、ランリー。今回、ドワーフの酒を多めにして欲しいんだ」
「何だ、マックス。ここの酒が気に入ったのか? だけど、あんまり飲み過ぎるなよ。ここの酒は口当たりはいいけど、アルコール度数は高いからな」
それは身に染みて分かっている。一度、飲み過ぎて、ひどい目に遭ったから。しかし、最近はあまりそういうことも無くなってきた。飲むことで酒に強くなったのかもしれないな。
しかし、ランリーの言葉は素直に聞いておこう。
「ああ、気をつけるよ。それに、俺が飲むというよりも友人と会った時に振る舞いたいんだ」
「友人? まあいい。酒を多めに注文しておくよ。他に希望はあるか?」
俺の希望を聞いたランリーは遠信を使って、指示を出していた。
他にも、売れ行きの良い物をお願いしたのと同時に、ランリー達が欲しいものを確認する。
「穀物類は大分に貯蓄も出来るようになったから、海の幸が欲しいな」
「魚とかか。干物でいいか?」
「干物の方がいいな。良い酒の肴になるって評判なんだよ。塩がきつい方が好まれるんだよ」
海の幸と言えば、あの港町か。そろそろ、船も完成しただろうか?
ドワーフの街が分からないように、回り道をして行けば、ちょうどいい頃に着くかも知れないと考えていると、そんな考えを見透かしたように、ランリーが言った。
「お前が設計書を持って行ったあの船が、もうすぐ完成するみたいだぞ。領主がかなり急がせて造らせているみたいだぞ」
「そうか、あれが出来るのか。進水式には来てくれと言われていたからちょうどいいかもしれないな」
俺は良い思い出も悪い思い出もある、あの港町に思いをはせていた。
まあ、今回はまっすぐ領主を訪ねるつもりだから、おかしな事は起こらないだろう。
それよりも、あの設計図がちゃんとしたもので、船が問題なく出来ていることを祈るのみだった。
この時、俺は港町で大事件に巻き込まれるなど考えてもいなかった。




