第66話 底辺テイマーは痛みを知る
慌てたシェリルを見て、それ以上に慌てたのは俺の方だった。
「何をした、ランリー!」
「そうよ、何なの? 今の」
俺達の姿を見てランリーは満足そうな顔をして、説明し始める。
「さっきのは、激痛衝と言って、神経に直接痛みを与える武器なんだよ。これは痛みを感じる生物なら、どんな生物にも効くはずだ。ただ、殺傷能力は無いけどな。あと、痛みと持続時間は反比例で調整できるぞ」
「……ごめん、相変わらず何言ってるか分からない」
難しい言葉を言われても俺にはさっぱり分からない。まあ、いつものことなので、素直に分からないと言えば、ランリーはもっと優しい言葉で説明してくれる。
「要は、痛いと感じる生物に痛みを直接ぶつける武器だ。触らないと発動できないのが欠点だが。それと、痛みを強くすれば、痛いと感じる時間は短くなり、痛みが小さいと、痛みを感じる時間を長く出来る。例えば、手をつねった位の痛さなら、一週間くらいは続ける事が出来るぞ」
「なんとなく分かった。じゃあ、二人がまた喧嘩をして暴走しそうになったら……」
「そう、これで痛みを与えて正気に戻せばいい。死ぬことはないから、正気に戻るまで何度でも使ってやれ」
痛みでびっくりしているシェリルを、ランリーは悪い笑顔で見ていた。
以前に、魔獣であるシェリルをワンパンで倒す武器を作るとか言っていたが、冗談ではないのかもしれない。やっぱり、この左手の大砲はあまり使わない方がいいのかもしれないと改めて、気を引き締めた。
「ねえ、ランリー……」
「なんだ?」
「この武器って、試してみた?」
「バカか、試すわけないだろう」
今度はシェリルが悪い顔をして、ランリーの小さな手を力強く掴んだ。
「じゃあ、一度試してみなさいよ」
「いや、いやじゃ。なんで、私がそんな事をしなきゃいけないんだ?」
「そりゃ~説明無しにワタシに使ったからよ。さあ、マックス、やってあげて」
「いやだ! なあ、マックス! そんなひどいことしないよな」
ランリーはすでに泣きそうな顔を俺に訴えてきた。
ランリーが可哀想な気もするが、不意打ちで使ったランリーも悪いだろう。痛みのレベルを下げて、激痛衝を使う。
「ぎゃ!」
ランリーは悲鳴を上げて、痛みに耐えるべく跳ね回っていた。
そんなランリーを見て、シェリルが笑い転がっていた。
「マックス! お前がそんな奴だとは思わなかったぞ」
「ランリー、そう言うなよ。俺自身にも使ってみるから、それでみんな一緒だろう」
「マックス、正気か?」
俺はそう言うと、自分の右腕を掴んで使用してみると痛みで体がビクンとする。
確かにこれはきつい。それもいきなりやられては心の準備もできずに跳ね上がるだろう。
心の準備をしていた上に冒険者として、それになりに痛みには慣れている俺は、二人よりは楽なのかもしれない。しかし、痛みを強くすれば、相手を一時的に無力化できるだろう。なかなかいい武器をつけてくれた。これなら、モンスターにも使えてテイムしやすいかもしれない。
自分に激痛衝を使用しながら、ニヤニヤ笑っている俺を見て、何やらシェリル達三人が変な誤解をしていたのだった。




