第63話 底辺テイマーは義手をパワーアップする
「ところで、魔獣二人が暴れ始めたときにお前は止められるのか?」
まるで草原の街でのことを知っているかのような口ぶりで、ランリーは聞いてきた。
二人に俺の言葉が届けば、まだ戦いを止められる可能性があるが、そうでなければ俺に止める術はない。
「……」
「そうだろう。止められないだろう。だったら、二人を止めるだけの力を欲しくないか?」
ランリーは先ほどの怒った顔から、何かを企んでいるような顔に変わった。なにか、嫌な予感がする。しかし、農業の街でも一触即発状態になっていた。あのまま、また二人が暴れたらと思うとぞっとする。
「まあ……欲しいかな」
「欲しいのか、欲しくないのかはっきりしろ!」
「欲しいです!」
ランリーの言葉に思わず返事をしてしまった。
ランリーは罠に獲物がかかった狩人のような顔をしていた。
「そんなあなたに、アップデートプラン! 旧式の左手の義手を、今ならなんとタダでアップグレードをしてやるぞ!」
「え! タダで!」
「そう、タダで」
ランリーは嬉しそうに俺の言葉を繰り返した。その姿に俺は嫌な予感がした。冒険者の常識として、タダほど怖い物はない。絶対に裏がある。
「それで、タダの代わりに何があるんだ?」
「もしかして、何か疑っているのか? いつも食料品を運んできてくれるお礼だよ。お礼」
「食料品は商売として、ちゃんと代価を貰っている商売だ。商売は信頼大事だろう。ちゃんと教えてくれ」
俺は真剣な口調でランリーに言った。
「話を聞いて途中で止めたって言うなよ」
「いや、それは内容次第だが……そんなにやばい話か?」
「いや、たいしたことない。この前、シェリルが来たときに一部細胞を貰って培養していたんだよ。それを使ってちょちょいとその左腕を改造しようかと思ってな」
俺はその話を聞いて、何が問題なのか全く理解できなかった。細胞って何だ? 培養ってどういう意味だ? ランリーはたまに俺が知らない言葉を使うことがあり、ただでさえ頭の悪い俺には分からなかった。
「さっぱり意味が分からないんだが、頭の悪い俺にも分かるように説明をしてくれないか?」
「要はシェリルの身体の一部を、お前の中に入れるんだよ。前は血を入れたが、今度は肉を使うんだよ」
「はぁ? それの何が問題なんだ?」
「人間であるお前に、魔獣の肉を入れると拒否反応を起こすかもしれない」
「ああ、それなら大丈夫だろう。シェリルが俺に害する事をするはずがない。さっさとやってくれ」
ランリーは俺の言葉を聞くと、手術台の上に俺を眠らせると、義手の改造を始めたのだった。




