第55話 底辺テイマーはグリフィスと仲良くなる
俺とシェリルを挟んで、ハットンとグリフィスがいるという、ただの人間は俺一人と言う珍しい状態で温泉につかっていた。
それなりに風があるため、上半身を出していると、のぼせることもない。
グリフィスも初めはおびえていたが、何もしなければハットンもおとなしくしているとわかり、安心して湯に入っている。
そんなグリフィスを見て、シェリルがある提案をしてきた。
「ねえ、マックス。グリフィスの羽根って触ったことがある?」
「触るも何も、グリフィスなんて話でしか聞いたことがなかったよ」
「あら、初めて見たの? だったら触ってみたら良いのに」
まるで自分の飼い猫を触らせるかのように気軽に言ったが、獰猛なグリフィスがそう簡単に触らせてくれるはずがない。今はおとなしいが、暴れ始めたら俺などあっという間に八つ裂きだろう。
「触ってはみたいけど、流石に無理だろう。かなり凶暴だって聞いてるぞ」
「大丈夫よ。ワタシが付いてるから」
「そうか?」
俺は恐る恐る近づいた。グリフィスは威嚇はしないまでも、近づく俺をじっと見ながら、いつでも逃げられる態勢を取っていた。
「大丈夫、危害を加える気は無いから」
俺は何も持っていない事を示すように、両手を挙げてゆっくりと近づいた。
二人の魔獣が睨みを利かせているからか、グリフィスはおとなしくしている。
ゆっくりとグリフィスの身体を撫でてみた。
温泉で温まっているからか、ほんのり温かく、しっとりとした羽根がとても気持ち良かった。思わず何度も撫でていると、かすかに震えているのがわかった。
「大丈夫、大丈夫。おびえる必要はないぞ」
俺はそう言い聞かせながら耳の周りを触ってやると、落ち着いてきたようで気持ちよさそうに目を閉じはじめた。
「ねえ、この子をテイム出来るんじゃない?」
懐いたように俺にすり寄るグリフィスを見て、シェリルがそう提案してきた。
撫でる手を止めずにグリフィスに尋ねる。
「なあ、俺にテイムされてくれるか?」
グリフィスは話せない代わりに、甘えるように鳴いた。
どうやら、テイムされてくれるようだ。
俺は早速、契約紋を発動させる。これをグリフィスに当てて、受け入れてくれればテイムは完了する。
思えば、ソナーバッドを失ってから、一時的に魔柿猿をテイムしただけだ。ソナーバッドはもちろん、魔柿猿に比べてもグリフィスは格上である。今の俺が実力では押さえつけてテイムなど夢もまた夢のモンスターである。
つまり、グリフィスが受け入れてくれなければ、この契約紋は一瞬で破棄される。
俺は緊張しながら、契約紋をグリフィスに近づけた瞬間、シェリルが叫んだ。
「危ない!」




