第47話 底辺テイマーは勇者と戦う決意をする
はっきり言おう。テイマーにとってモンスターの力が冒険者としての力そのものだ。つまり何を言いたいかと言うと、モンスターを一匹もテイムしていない俺の今の実力は、冒険者の中でも底辺クラスだ。ちなみに一匹しかテイムできない俺はテイマーとしても底辺なのだが。そんな俺が勇者様と戦うとどうなるか、火を見るよりも明らかだ。瞬殺である。もう、楽しいほどにぼこぼこだろう。しかし、これは模擬戦で大怪我を追うほどはしないだろう。それに勇者様と手合わせをしたと言うだけで、十年は話のネタに困らないだろう。そう考えた俺は覚悟を決めた。
「分かりました。お手合わせお願いします」
そう言った俺の言葉に娯楽に飢えた街人達は歓喜の声を上げた。
場所は祭りにも使われる街の広場。
真ん中には櫓が組まれており、その周りはダンスを踊ったり、屋台が出せるようになっていた。
勇者の戦いがが見られると街中から人が集まってきた。
街にも道場があるのだろうか。大きなかごに入った色々な木剣から、武器を選ぶように俺と勇者の間に置かれた。その木剣を選びながら、勇者は俺に話しかけた。
「それで、キミの冒険者職は? どんな武器を使いますか? 私は基本的にどんな武器でも使えますが、剣を使わせてもらいます。あと、魔法は使いませんので安心してください」
そう言いながら、勇者様は細身の木剣を手にして、重さを確かめるように片手で振って見せた。
俺はかごの中でひときわ長い棍を手に取った。
どう考えても普通でやっては相手にもならないだろう。ならば武器のリーチで実力の差を少しでも埋めるしかない。
棍を構えながら、俺は先ほどの勇者の質問に答えた。
「俺の冒険者職はテイマーです。ですから普段武器は護身用の短剣ですが、今回はこれを使わせていただきます」
「ほう、テイマーか。そのわりにはモンスターは近くにいないようだが、飛行種のモンスターでもテイムしているのかな?」
そう言って勇者は抜けるような青空を見上げると、そこには鷹が一羽、円を描きながら飛んでいた。
「周りの人達に危害を加えなければ、モンスターを使役してもらっても大丈夫ですよ。グリフィスでもワイバーンでも」
そう言って、勇者は友人にするような笑顔を俺に向けた。
その笑顔を良い試合をして皆を楽しませようと俺は受け取った。俺が派手に動けば後は勇者がなんとかしてくれるだろうと。
そして、その数分後、俺は大いに後悔した。




