第38話 底辺テイマーは声をかけられる
「俺は夢があるんだ」
「夢?」
シェリルは運ばれてくる料理を見ながら答えた。
「そう、夢があるんだ。伝説と呼ばれるモンスターや魔獣に会ってみたいんだ。そしてテイムしてみたいんだ」
そう、それは俺が冒険者になった理由。話でしか聞いたことがないようなモンスターが本当にいるのだろうか? そしてどんな生態をしているのか見てみたい。そのために危険な冒険者になり、テイマーになったんだ。
「そうなの。会いたいって言うのは分かるけど、なんでテイムしたいの? テイムするって危険じゃない。伝説級のモンスター相手だと命がけになるわよね」
テイムするには契約紋をつける必要がある。それはモンスターに仲間と受け入れて貰うか実力で押さえ込むしかない。伝説級のモンスターが簡単に仲間として受けいるとは思えない。そうすると実力で押さえ込むしかないのだが、それはシェリルが言うように命がけだ。しかし、俺にはそれでもテイムしたい理由があるのだ。
「そんなの簡単な理由だよ。シェリル達みたいに話が通じれば良いんだが、魔柿猿たちみたいに通常は話が通じないが、テイムすれば意思疎通が出来るようになる。やつらがどんなことを考えているか知りたいんだ」
そう、俺はモンスター達がどんなことを喜んで、どんなことに怒り、何に悲しみ、どう笑うのかを知りたいのだった。俺の父親から小さい頃に聞いたいろいろなモンスターの生態を聞いてからずっと思っていたことだった。俺にテイマーとしての才能は無いのは知っている。でも、それとこの思いとは別だ。だから俺はテイマーになったのだった。
「あらそうなの。じゃあ、ワタシが今、何を考えているか分かるわよね」
「それはもちろん。お姉さん、ビールを大ジョッキで二つ、あと大兎の丸焼きをひとつ追加で!」
俺は酒場のウェートレスに注文すると、半分ほどビールが残っているジョッキをシェリルのジョッキにちょっとぶつけた。
「さすが、マックス。愛してるわよ」
隣に座っているシェリルが俺のほっぺにキスをした。
そんな俺たちに厳つい顔をした大男が声をかけてきた。
「よう、あんたたち見ない顔だな。さっきの話を聞くと冒険者か?」
「そうだけど、あんたは?」
「ああ、おれは戦士をしているヘイルと言うもんだ。パーティのメンバーを探しているんだ。あんた、テイマーだってな。どんなモンスターを何匹テイムしてるんだ? それにそっちの女も冒険者か?」
ヘイルと名乗った筋肉質の男はシェリルにも話しかけた。
シェリルはヘイルを見ようともせず、ジョッキに口を付けていた。
「申し訳ないけど、今は何のモンスターもテイムしていないんだ。それに彼女は冒険者じゃない」
「テイマーが何もテイムしていない? なんだ、ハズレか。役立たずが俺たちと同じ冒険者を名乗るんじゃねえ!」
ヘイルはそう言い捨てて俺たちのテーブルを蹴ると、兎のスープが半分くらいこぼれ落ちた。
「ちょっと待ちなさいよ!!!!!!!!」
それまで上機嫌だったシェリルが低い声を出した。




