第34話 底辺テイマーは再度ドワーフの街に向かう
俺達は真っ暗な夜道を領主の馬車に乗って、宿まで戻った。
「なあ、なんであの街への道を教えちゃだめだったんだ?」
「あそこにいた時、ドワーフ以外の種族を見たことある? ワタシ達しか無かったでしょう。そもそもワタシ達だって初めは捕まりそうになったじゃない」
シェリルに言われて、あの未来の街を歩いていたのは背の低い童顔のドワーフたちだけだったのを思い出した。そして侵入者には厳しい対応で、シェリルがランリーと知り合いでなければあのまま捕まって殺されていたのかも知れない。それほど厳重に侵入者を拒んでいる秘密の街。
「そんな街の道を教えて、人間が押しかけたりしたら、ワタシ達が教えたとすぐに分かるから、二度とあの街に足を踏み入れることも出来ないし、ワタシ達を信用したランリーも処刑の対象になるのよ」
「処刑? そんなに? しかし、なんでそんなに秘密主義なんだ?」
「そんなの簡単よ。彼らが根っからの技術屋だからよ」
「どういうことだ?」
「彼らはただ新しい物を作ることに喜びを見いだす種族なのよ」
「ああ、それは俺にも分かる」
「ただそれだけなのよ」
「そこが分からない」
「新しい物がどう使われるかまで考えないのよ。かといって、自分達が作った物を悪用されたくないの。だから自分達が作った物を極力外に出したくないの。だから、あんな山の中に街を作って、ひたすら自分達の好奇心を満たすために物作りをしているのよ」
新しい物を作りたい。しかしそれは悪用されたくない。だから、外部の人間を受け入れないのか。
確かに、彼らの技術が表に出れば世界は一変するだろ。それは戦争の種にもなるし、戦争の被害も桁外れに大きくなる気がする。ドワーフはそんなところまで責任を取れないと言っているのだろう。
「ちょっと待て、なんでそんなところに何の説明もなく俺を連れて行ったんだ?」
そんなところだと知っていたら、俺の心構えも変わっていた。
ランリーとシェリルが知り合いだと言っても、彼女が俺だけ殺される可能性だって十分ある。そもそもランリーが生きていなかった可能性だってあっただろう。
「え!? だってワタシが選んだ旦那様をランリーが気に入らないわけがないじゃない。そのままのあなたを見て欲しかったんだもの」
何だその自信は? そう俺はあきれたが、無邪気に可愛く笑うシェリルを見て何も言えなくなった。
~*~*~
次の日、朝から市場に行き荷馬車とランリーに頼まれた食料を大量に購入した。
馬は山道を昇りやすいように一頭でも馬力のある重種馬にした。
今回は荷物も多いため、食料は日持ちする物を基準に野菜や干物や塩漬け物を中心に購入した。それなりに時間がかかることを想定して、自分達の生活用品も用意すると、誰にもあいさつすることなく早速出発した。




