第172話 底辺テイマーはマルビィの話を聞く
「何を言ってるんだ? マルビィ。あいつらをそのままにしていたら、これまで以上の大群でやって来られるぞ」
「彼らは敵じゃない!」
「どういうことだ? 手短く話してくれ、あいつらを逃がすと厄介なことになるんだ」
俺は左腕の大砲に魔力を込めながら、マルビィに説明を求めた。
「彼らは……僕をここから連れ出してくれるんだ」
「どういうことだ? あいつらはお前たちの敵じゃないのか?」
「違うんだ。あの人は、この戦いが終わったら、僕を人が住む世界へ連れて行ってくれるって約束したんだ」
「全く話が見えない。この戦いと言うのは、あいつらは誰かと戦っているのか? それにあの人って言うのは誰だ?」
俺たちが話をしているうちに、マガミが乗り込んだ船は仲間の大砲により、火の手が上がり、今にも沈みそうだ。
「彼らはブラックドラゴンと戦うつもりなんだ。そのために、大量の食糧が必要で、その準備をしている。そう、ヴァレリーは言ってた」
「ブラックドラゴンを倒すなんて無理よ。マガミに落とされるような船が……」
シェリルはあきれ顔で言った。
俺も同意見だ。俺はシェリルの強さを知っている。そのシェリルでさえ、かなわないと言うブラックドラゴンが、たかだか人間に倒せるはずがない。たとえ、何万人いたとしても。
だが、別にそれを止める必要も俺はないと思っている。痛い目を見ないと分からない人間もいるだろうから。
それよりも、今はマルビィの話だ。
「ヴァレリーって言うのは、あの船に乗っているのか?」
「あの船団長だから、乗っているはずだ。だから、あの白狼を止めて」
「分かった」
「ありがとう」
マルビィはホッとした声で礼を言った。
俺はシェリルに今後の動きを指示する。
「シェリル。マガミの所に行って、ヴァレリーと言う男を探すように言ってくれ。それが終わったら、左の船に行って、ヴァレリーを探してくれ」
「分かったわ。それで、マックスはどうするの?」
「俺は右の船に行ってくる」
「大丈夫?」
「まあ、危なくなったらすぐ逃げるから、その時は、よろしく」
そう言って、俺はシェリルにキスをする。
「わかったわ。決して無理しないでね」
そう言うと、シェリルは銀狼の戻り、沈みかかっている船に飛び乗った。
それを見たマルビィは驚きを隠せない様子で、俺に尋ねた。
「あんた、一体何者なんだ?」
「俺か? ただの底辺テイマーだ。それより、あっちの船に近づいてくれ」
「わ、分かった」
マルビィは素直に俺の指示に従い、船を進ませた。




