第111話 底辺テイマーは魔獣に向かう勇者を見る
勇者は俺の狙い通り、ジャカツに向かう。
ジャカツは、自分に向かってゆっくりと歩いて来る人を見降ろしていた。
「お前もあいつの仲間じゃかつ。人間ごときが我々魔獣の戦いに首をつっこむなじゃかつ」
口を大きく開けてその長い舌をちょろちょろと出し、サルーンをにらんでいる。
その巨大な口はサルーンなど簡単に丸呑みできるほどの大きさである。しかし、サルーンはそんなジャカツの姿に恐れを抱くどころか、不敵な笑みすら浮かべていた。
「私たちは、この世界から魔獣を排するために、何百年も研究を重ねてきた。その成果をここで出させてもらいますよ」
そう言って、サルーンは聖剣を構えた。
静かに構えているのに、その姿に俺は恐怖を感じる。その剣先が自分に向いていないことに安堵の念を覚えた。
それはジャカツにも感じたのだろう。明らかに緊張したように、サルーンをはるか上にある頭を左右に振って、サルーンの出方をうかがっている。
どちらから、先に動くのだろうか? 俺は二人の動きを見逃さないように、目を凝らす。
「サルーン!!」
二人の静寂を破ったのは、サリュリだった。
先ほど、サルーンと戦い、肩で息をしていたサリュリはジャカツの登場により、息を整えていた。
サリュリには俺たちとジャカツの関係は知らない。そして、俺たちと勇者との関係も。
ただ、サリュリは自分の師匠の心臓を取り戻すためだけに、サルーンに襲い掛かる。
ただでさえ、速いサリュリが、思いがけないところから、思いがけないタイミングでサルーンに襲い掛かったため、見ている俺が不意を突かれて驚いた。
しかし、それを難なくかわすサルーンだったが、それはジャカツにとって十分なスキだった。
シェリルを倒した毒牙を飛ばすと同時に大木を一撃で叩き折りそうな尻尾の一撃を繰り出した。
たとえ牙を躱しても、その細身の聖剣では尻尾を受けられないだろう。
このままでは何もできないままサルーンが倒される。これでは、サルーンをけしかけた意味がない。事情を話して共闘した方がよかった。
俺は思わず、叫んだ。
「危ない!」
しかし、焦る俺とは裏腹に、サルーンは静かに剣を構えると、飛んでくる毒牙に向けて剣を突き出した。
俺から見ても、明らかに距離が離れすぎている。空振りだ。
俺はサルーンを助けようと、左腕の大砲を毒牙に向けて構えた時だった。




