第110話 底辺テイマーは勇者を煽る
武道会の大舞踏台を突き破って表れた巨大な蛇の魔獣。
シェリルを助けるために俺たちが、倒すべき敵ジャカツが姿を現したのだった。
「見つけたぞ、人間にハットフィールド。シェリルが見当たらないということは、死んだのじゃかつ?」
「ジャカツ!」
その姿に思わず、俺は叫んだ。
シェリルを助けるために倒すべき敵。仲間を集め、力をつけてから探そうと考えていた相手が目の前に現れたのだ。
しかし、奴を倒せるだけの力が俺たちにあるのだろうか。勇者の力を借りることは出来てない。だが、そんなことを待っていては、ジャカツに逃げられるかもしれない。
幸いなことに、ジャカツは一人でこの場に来ている。それに対して、こちらはハットンと俺がいる。同じ魔獣同士、ハットンとジャカツの実力が同レベルなら、俺がいる分、有利なはず。
ならば、やることは一つ。
ジャカツを倒す!
「ジャカ……」
「魔獣! 魔王! 何を考えている。グラブジラは取り返したのに、ヨルムンオロチまで召喚するとは。いよいよ本格的に、我々の動きに気が付いて、先手を打とうということですか?」
俺がジャカツに向かおうとしたとき、勇者サルーンがサリュリから距離を取って叫んだ。
まずい。勇者はジャカツと俺たちが仲間だと勘違いしている。
それもそうだ。魔獣であるシェリルとハットンが俺の仲間だと、勇者は知っている。その上、カサミをテイムしてしまっている。すべての魔獣が俺の仲間だと勘違いされても仕方がない。
俺は言い訳をしようと考えて、やめた。
それよりも、もっといい考えが浮かんだ。
「勇者、そうだ。奴はお前を倒すための切り札だ。倒せるものなら倒してみろ。シェリルやハットンい尻尾を巻いて逃げ出したお前なら、手も足もだないだろうがな」
初めて会ったとき、シェリルとハットンから逃げ出したことを煽り、勇者をジャカツにぶつけることにした。
勇者が俺の煽りに乗ってくれることを祈った。ジャカツの言葉を冷静に聞いていたならば、ジャカツが俺を狙ってきたことに気が付くはずだ。
そんな俺の内心の不安に気が付いているのか、付いていないのか、サルーンは手に持っている剣をしまい、サリュリとの戦いでも抜かなかった細身の剣を抜いた。
「何を言うのですか。あれはただ聖剣を取りに行っただけですよ」
聖剣、それは読んで字のごとく勇者に与えられる聖なる剣。
それは勇者の能力を大幅に強化し、魔を滅する剣と言われているが、詳細は普通の人間には知らされていない。
その剣は儀式用のように美しい装飾を施されている。この剣でサリュリの剣を受ければ、一撃で折れてしまうだろう。
明らかに撃ち合うための剣ではない。
その剣をサルーンは求めた。
ただの剣ではないはずだ。
その剣の実力を知りたい。
俺は勇者に言った。
「そんなおもちゃで、ジャカツを倒せるはずがないだろう」
「魔王よ、あなたの切り札がどれほどのものか見せていただきましょう」




