第109話 底辺テイマーはどちらに助勢するか悩む
ハットンの左手を受け止めているのは、勇者だった。
どこから現れたのかは分からないが、ハットンとモリャシュの間に立ち、モリャシュを守っている。
突然の登場に思わず、俺は叫んだ。
「勇者! なぜここに」
「私がここにいるのは当たり前だろう。それよりも、魔王こそ、なぜここに」
「魔王だと」
「モリャシュは少し、黙っていてください」
勇者の言葉に勇者の後ろにいるモリャシュが反応する。
そのモリャシュを勇者がかばうように、制した。
その姿から、二人は知り合いで間違いないだろう。しかし、武道会の主役である勇者がモリャシュの暴走を止めないと言うのはどういうことだろうか。
俺は、勇者にモリャシュの暴走を止めるように願いでる。
「勇者様、モリャシュ様の暴走を止めてください。これでは武道会がめちゃくちゃです」
「ははは、武道会を無茶苦茶にしようとたくらんでいるのは、魔王。あなただろう。モリャシュの魔獣を取り戻しに来たのかね」
「違う。カサミは俺たちの仲間だから返してもらったが。それよりも勇者、あなたに話がある」
順番は違ったが、勇者と話すことができた。もともと俺たちの目的は勇者を仲間になってもらうことだ。そしてシェリルに毒を注入したジャカツから解毒剤を手に入れる。
武道会などどうでもいいのだ。
俺は仲間になってくれるように勇者へ交渉しようとした。
その時、地獄の底から響いてきたかのような女性の叫び声が響き渡った。
「サルーン! ギザッッッマ!!!!!」
神速の女剣士が、勇者に切りかかった。
サリュリの殺気のこもった剣を、勇者はその細身の剣で受け止めた。
俺は勇者と会いたがっていたサリュリが勇者に襲い掛かったことに驚いた。しかし、それ以上に殺人は武道会を失格になるのに、魂すら切り捨てる気迫で襲い掛かったことに驚いた。そしてその様子に恐怖すら覚えて、俺は思わず後ずさりをすると、ハットンが俺の背中を支えてくれた。
「ダーリン、危ないわよ。あれは普通の人間同士の戦いじゃないから」
ハットンが言うように、俺の目にはサリュリと勇者サルーンの戦いを目で追うことができないほど早かった。
そんな戦いの合間にサリュリの憎悪に満ちた声が聞こえてくる。
「探したぞ。師匠の心臓を返せ!」
「それは無理な相談ですよ。彼は人では届いてはいけない高みに行ってしまいました。それを野放しにするわけにはいかないのですよ。彼は我々に対して脅威になりますからね」
「ならば、貴様を殺して、取り戻すのみ!」
サリュリと勇者の会話から察するに、サリュリは彼女の師匠の心臓を取り戻すために、勇者に会おうとしていたのだろう。師匠が戦えないのは、何らかの手段で勇者が師匠の心臓を盗んでいたかららしい。
俺としてはサリュリたちに力を貸してたい。しかし、勇者の力も借りたい。
俺がどちらに力を貸すべきか悩んでいた時、地響きとともに地面からソレが姿を現した。




