第108話 底辺テイマーはトップテイマーの暴走を止めようとする
モンスターの出現に観客席から悲鳴が上がる。
それもそうだろう。数匹のモンスターならば、モリャシュがコントロールしていると安心できるが、何十匹ものモンスターが相手ではいつ、自分たちに襲いかかってくるか不安だろう。
そもそも、こんなことを運営が許しているのだろうか?
俺の疑問に答えるように、運営の叫び声が響き渡る。
「モリャシュ様、危険ですので、モンスターを引っ込めてください。お願いします」
そんな運営の言葉を無視するように、モンスターたちは大舞台に集まり始めた。
それに対してまだ生き残っている参加者たちが、サリュリとの敵対するのを止めて、驚きの声を上げ始めた。
「なんだ、こいつらは!」
モンスターは参加者たちを襲い始めた。それもモンスターたちが連携をとりながら襲いかかっている。
この段階で残っている参加者たちに弱い者はいないだろう。しかし、それでも数の暴力で遅いかかかるモンスターたちに犠牲者も出始めてきた。
俺はモリャシュに向かって叫んだ。
「止めるんだ!」
「うるさい! たまたま一匹、リテイムしたからって、調子に乗るな! このザコめ」
美男子とも言えるモリャシュは、だだをこねる子供のようにそう言うと、モンスターが俺に向かって襲いかかってきた。
傷ついたカサミを下がらせて、俺は左腕を構えた。
大砲で吹き飛ばす!
しかし、俺の射線上に色白な美しい女性が背中を見せて立ちはだかった。
「ダーリンのことをザコって言ったわね」
そう言ってハットンが腕を振るうと、モンスターたちは宙に舞った。
そして、ハットンはモリャシュを守るように防御力の高いモンスター共も吹き飛ばし、モリャシュの前に仁王立ちになる。
その、美しくも冷酷な美女を前に、モリャシュは先ほど空を舞った記憶がよみがえり怯えた。
このままではまた、空を舞う。
先ほどのビンタで、左の頬は大きく腫れている。この美しいモリャシュ様の頬が。そして、このままでは右の頬も叩かれる。そう直感したモリャシュは助けを求めることにした。
「サルーン! 助けてくれ!」
「うるさい!」
モリャシュの言葉に、ハットンは面倒くさそうに左手を振る。
モリャシュが気絶すれば、このモンスターたちも動きを止めるはずだ。すでに参加者の数はかなり減っている。この混乱が収まれば、予選も終わるだろう。
そうすればカサミの手当ても出来る。
俺はまた、モリャシュが宙に舞うのを待った。
しかし、大きな音を立てて、その手は止められた。




