第107話 底辺テイマーは少女に会う
俺は気絶どころか、モリャシュが死んでしまったではないかと心配になった。どちらにしろ、俺がやることはひとつだ。
カサミの拘束を解くと、モリャシュの契約紋があるカサミの胸に手を当てる。
魔力差があったとしても、抵抗すべきテイマーが気絶していれば、契約紋の上書きは可能なはずだ。
俺は右腕にありったけの魔力を込める。
「気絶解除!」
俺が契約紋を発動する直前に、魔法剣士のトリモンドが魔法でモリャシュの気絶を解除してしまった。
このままでは、俺の契約紋に対して、モリャシュが抵抗する。ただでさえ、初めに契約した方が有利な上に、魔力量が多いモリャシュの契約紋に俺の契約紋ははじかれてしまう。その抵抗は先ほど契約紋を確認するためにテイムをした時と比べものにならないはずだ。
それは無駄にカサミを苦しませることを意味する。
しかし、タイミング的に俺は契約紋の発動を止めることが出来なかった。
「いでよ! 契約紋」
重なり合う青と赤の契約紋。
青と赤の光が混ざり合い、赤紫色になる。これがお互いの契約紋がせめぎ合っている状態だ。そして、その色が青に戻れば俺の契約紋は拒否される。拒否されたエネルギーは俺に反射されて、身体ごと吹き飛ばされるだろう。
俺は衝撃に備えて、腰を低くして、目を閉じ、歯を食いしばる。
しかし、いつまで待っても衝撃は来なかった。
俺はおそるおそる目を開くと、目の前には顔を真っ赤にしている可愛い女の子が立っていた。
年の頃は10才を過ぎたくらいだろう。
赤毛をなびかせて、くりくりした大きな瞳。か弱そうな身体。
その膨らみかけた胸に俺は右手を当てていた。
状況の分からない俺にその女の子は話しかけてきた。
「ご主人様のエッチ」
「え、いや、たしかに女の子の胸を触っていたら、エッチと言われるのは仕方が無いが、ご主人様って何だ? 大体君は誰だ? カサミはどこに行った?」
俺は年端もいかない女の子からエッチと言われて、混乱して言い訳を始めた。
それに対して、女の子は俺の手を握って、微笑みかけてきた。
「だって、わたし、テイムされちゃったのですから、マックスさんはわたしのご主人様ですよね」
「いや、俺がテイムをしたのはカサミだけど?」
「だから、わたしがカサミですよ」
そう言うと、カサミを名乗った女の子は可愛らしくその右手にチョキをつくって、ちょきちょきしはじめた。
何がどうなったのか分からないが、俺はカサミをテイム出来て、カサミが人間の姿になったと言うことか? たしかに魔獣なら人間の姿になってもおかしくない。しかし、あの状況ではモリャシュのテイムに打ち勝つことなど出来ないはずだ。だったら、奴は本物のモリャシュではなく、偽者だと言うことなのだろうか? しかし、子供とはいえ、偽者に魔獣をテイム出来ることが可能なのだろうか?
そんなことを考えている俺に、モリャシュの悲痛な叫びが届く。
「貴様! なんで、ボクがテイムした魔獣をテイム出来るんだ! ボクは百のモンスターをテイムする男だぞ! お前ら、殺してやる!」
その声に呼応するように、多数のモンスターが現れたのだった。




