第105話 底辺テイマーは役割を決めて共闘する
なぜ、カサミがこんな所にいる? 俺は混乱した。
ワタリガと再会し、家に戻ったはずなのに、なぜここにいるのだろうか? もしかしたらカサミではない他の魔獣か? いや、ハットンもカサミだと言った。
俺は叫んだ。
「カサミ! どうしてこんな所にいるんだ!?」
「あ……あ、ああ」
カニの魔獣は俺に向かって、何かを訴えようとこちらを向いたが、トップテイマーであるモリシャスに操られてまともにしゃべれないでいた。
その動きと表情から、カサミは俺に助けを求めていると分かった。
テイマーからモンスターを開放するにはテイマーが契約を解除すれば良い。しかしこんな状況でモリャシュが契約を解除するとは思えない。
そうして、もうひとつは……
「ねえ、ダーリン。あのテイマー殺していい?」
ハットンが言うように、テイマーを殺せば、契約しているモンスターは解放される。しかし、殺してしまえばハットンが武道会を失格になってしまう。
そうすれば、俺たちが優勝する可能性が低くなってしまう。そうすれば勇者に会うことが出来なくなる。
俺はハットンを止めた。
「駄目だ、ハットン」
「じゃあどうするの?」
実はもうひとつ手がある。他のテイマーが契約を上書きをした上で、契約を解除する。これにはテイマー同士のレベルの差が必要になる。普通であれば底辺テイマーの俺がトップテイマーのモリャシュの契約を上書きなんて出来ない。
俺は、心配そうなハットンに答えた。
「任せろ、ひとつ考えがある」
「それは何?」
通常、俺とモリャシュでは契約の上書きなんて成功するはずがない。ただし、モリャシュが気絶をして、抵抗できない状態にしてしまえば可能性はある。
俺はハットンに指示を出す。
「ハットン、モリャシュを気絶させてくれ。その間に俺がカサミを助ける」
「分かったわ」
「ちょっと待って、何の話? あの魔獣を助けるって言うの?」
俺たちがカサミを救う話をしている側で、サリュリが疑問の声を上げた。
そういえば、サリュリたちにはハットンが魔獣と言うことを話していない。だから、俺たちが魔獣であるカサミを倒すと言うのならばともかく、助けるという意味がサリュリには分からない。
しかし、今そのことを詳しく説明する暇はない。俺は端的にサリュリに説明した。
「あの魔獣は俺たちの仲間で、モリャシュに無理矢理に契約されている。だからモリャシュを倒すのを助けてくれ」
「良く分かりませんが、分かりました。それで、私は何をすればいいのですか? モリャシュを倒せばいいのですか?」
俺の雑な説明に納得してくれたサリュリは剣を構える。しかし、そのサリュリにハットンが指示を出す。
「あのいけ好かない男はあたしが気絶させるから、あんたはあたしたちの邪魔にならないように、他のザコどもの相手をしてちょうだい」
「ザコ……ども?」
ハットンにそう言われて、サリュリは他の参加者を見た。予選が始まってそれなりに時間が経っている。この時点で残っている者たちは腕の立つ者ばかりだ。それを見て、ザコと言い放つハットンに驚きを覚える。しかし、あの神速のリチャードを軽く一蹴した実力は本物だろう。
それにどちらにしろ、全員倒して優勝するつもりであった。
サリュリは覚悟を決めた。
「分かりました。お二人の邪魔にならないように他の人達は任せてください」
こうして、俺たち三人は役割を分けて共闘することになった。




