第102話 底辺テイマーはサリュリの戦いを見る
開始と同時に参加者たちは雄叫びを上げて、あらかじめ狙いを定めていた相手に襲いかかる。
俺の後ろはすぐ、場外でハットンとサリュリは俺を守るように二人並んでいた。
男たちは雄叫びを上げながら、二人に襲いかかってきた。
「女の影に隠れるような奴が、武道会で生き残れると思うな!」
「その、女にやられるような奴はどいつですか」
サリュリはその言葉を置き去りに、姿を消したかと思うと、男が三人吹き飛んだ。
それは一瞬の出来事だった。
男たちには何が起こったのか分からなかっただろう。シェリルとハットンの身体の一部と混ざった俺にはかろうじて見えた。
一足飛びに距離を詰めたサリュリは正面の男に突きを入れ、そのまま横っ飛びで隣の男をなぎ払うと、反対の男に向かって、上段から剣を振りおろした。
動きとしては基本的な剣術の動きである。ただ、それが恐ろしいほど速い。そして、男たちが吹き飛ぶと言うことはその剣は重いのだろう。
しかし、この武道会。殺人は失格になる。
そんな俺の心配を感じ取ったのか、サリュリは剣を構えて距離を取る他の参加者に言った。
「この剣は今回用になまくらだ。当たり所が悪くなければ死ぬことはないだろう。安心してかかってこい」
「女! 舐めやがって」
「待て、スピード自慢なら、オレと勝負だ!」
そう言って、前に出てきたのは神速のリチャードだった。
背が低く力は強くないが、そのスピードで敵を翻弄し、相手に何もさせないと言われる。
細身の剣を片手に持ち、じりじりと距離を詰めるリチャードに対し、基本的な中段に剣を構えるサリュリ。
先に動いたのはリチャードだった。
右に左にステップを踏みながら、距離を詰め、サリュリの間合いに入った瞬間、地を這うように低い姿勢で、サリュリの側をすり抜けて、背後を取った。
俺は思わず声を上げた。
「危ない!」
俺の言葉と同時にリチャードは吹き飛んだ。
サリュリは、振り向くと同時に襲いかかるリチャードに剣を繰り出そうとした瞬間、ハットンがリチャードを蹴り飛ばした。バトルロワイヤルである以上、誰が誰に攻撃しようが自由である。
「邪魔。カトンボみたいにウロチョロと。さあ、さっさと終わらせましょう」
「ハットンさん、そこは私たちの戦いを見守っている流れじゃないですか」
「なんであたしが、あなたに気を遣わなければならないのよ」
バトルロワイヤルである以上、誰が誰に攻撃しようが自由である。しかし、他の参加者は空気を読んで二人の戦いを見つめていた。それが冒険者としての礼儀だと言わんばかりに。
しかし、魔獣であるハットンにはそんなことは関係ない。それよりも、ハットンには気になることがあった。唖然とする他の参加者を見て言った。
「さて、ダーリン。その右腕の使い方を見せてあげるわ」




