第5話 俺のことが大好きな幼馴染
ベットに横たわる俺の傍には、メス顔でデレている妹がいた。俺は薄目を開け妹の柚をチラ見して、すぐ目を閉じる。
「お兄ちゃんの小説…私の妄想みたいな内容だったよ…、お兄ちゃんが私と同じエッチな妄想してくれて嬉しい」
俺の頬を指でぷにぷにと押す妹の指。妹は俺の臭いをクンカクンカかいで恍惚とした表情を浮かべた。そして俺の顔に唇を近づけ、頬を染めたドキドキした表情で、ぺろりと舐めるように頬にキスする。
『どうしよう…こんな時はどのタイミングで起きればいいんだ?』
パニくった俺は嬉しいのと恥ずかしいのとで、ダラダラと汗を滝のようにかいた。寝たふりをしたせいで起きるタイミングを完全に失ってしまったからだ。
あと少し寝たふりして、デレた妹を堪能するか? いや、すれ違うのも間が悪いのも…もう嫌だ! 今こそ気持ちを伝えるチャンスじゃないのか?
『いや、でもなんて言えばいいんだ!?』
ヘタレな俺は決断できなくて、妹のなすがままにされていく。シャツがはだけ、妹の指で胸筋を撫でまわされる。
『ああ、気持ちいいので、これはこれでいいかな~』なんて思い始めた、そんな時―…
「…起希…くん…」
ふいに妹の唇から俺の名前が漏れた。
柚は幼馴染だった頃、俺のことを『起希くん』と呼んでいた。名前で呼ばれ、なつかしくて胸がきゅうっと苦しくなる。
「…起希…くん…、起希くん…起希く…ん…」
だが名前を連呼された瞬間、俺はドキンとした。まるで泣いているような声だったからだ。
俺の中に一つの考えがストンと落ちてきた。
俺がおちゃらけていないと柚と向き合えないように、柚もツンケンしていないと向き合えないのだとしたら…?
もしそうなら、チョコをくれた小6の冬から、ずっと俺を好きでいてくれたんじゃないのか?
俺がそんな仮説を構築していたとき、ふいに妹が俺の上に乗ってきた。俺は堪らなくなって、ついに声を上げた。
「ワザとじゃないと思うんだが、布団の上からお前の足が俺の息子を踏んでるから、とりあえず右足どけてくんない?」
「っ!? きゃああああっ!」
俺がなんともマヌケな声をかけたせいで、妹の柚が真っ赤になって悲鳴をあげる。そして猛烈な突き飛ばし&回し蹴りを食らい、ベットから吹っ飛ぶ俺。
「お兄ちゃん…いつから起きてたの!?」
「結構…初めのほうから」
俺は痛む身体を起こして、ベットの上で羞恥で悶えている柚の前に座った。
「もしかして…わたしの恥ずかしい告白全部聞いちゃった…?」
「ああ、柚が痴女だって身をもって体験したわ」
「お前、今も俺のこと好きなの?」
俺は至近距離にいる柚の額にコツンと自分の額を当てた。そして、今までずっと聞けなかった言葉を口に出す。
「…うん、好き…」
柚は頬を染めてこくりと頷く。
「よかった、俺も小6の頃からずっとお前のこと好きだわ」
目の前にある柚の瞳が潤んでいき、泣きそうな、でも嬉しそうな表情になる。
「ねぇ、二人きりのときは、また起希くんって呼んでいい?」
「ダメ」
柚は甘えるように聞いてきた。だが俺が即答すると、物凄い悲壮な顔になった。
「二人きりのときだけじゃなく、これからは毎日名前で呼んでくれ」
「いいの…?」
「ああ、父さんと母さんには柚が好きだって、ちゃんと話すよ」
もう間違えない、今言わなきゃいけない言葉がある。後まわしにすると、すれ違ってしまう気持ちがあるんだ
「なんか、お兄ちゃん…ううん、今日の起希くんカッコいい!」
「柚ずっと陰で泣かせてごめん、4年間もヘタレでごめんな…」
「変わらないね、後からごめんって謝るとこ…」
「でも、そういう優しいとこも好きだよ」
少し照れながら、柚は最高に可愛い笑顔をみせた。それに合わせたように俺の心臓がトクンと跳ねた。
触れられるばかりじゃなくて、俺も柚に触れたい…、そんな堪らない衝動が沸き上がる。
「なぁ、そんなに気に入ったなら、今から俺の小説みたいなことシテみるか?」
俺は柚の耳元にそう囁いた。すると、いつも優勢優位な態度だった柚が、ボンッ!と音が出そうなぐらい顔を赤らめた。
「お前、そんな顔もできるんだな?」
「どんな顔よ!」
恥ずかしさと期待で頬を染める柚に、キスを落とす。
「俺が大好きな、すげーエロ可愛い幼馴染の顔」
「っ~!? バカバカバカ~!」
照れて噛みついたように叫ぶ柚の唇をキスで塞ぐ。俺しか見たことがない表情で柚は恥じらうが、拒みはしない。言葉とは裏腹に、柚の腕が俺の身体に甘く抱き着いてくる。
組み敷いた腕の中には、もう俺を虐める妹はいない。そこにいるのは俺のことが大好きでたまらない、そんな顔をした幼馴染の柚だ。
おかえり、俺の幼馴染―
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!
この5話で完結ハッピーエンドとなります。
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