第1話 えちえちすぎる妹と、ダメダメすぎる兄
俺は高校1年にして、すでに枯れている。
非リア充で陰キャな俺の趣味は小説を書くことだ。だがそのたった一つの趣味すら、最近では上手くいかない…。
俺のモテ期は小学6年の冬で終わった。満面の笑みで俺にチョコくれた、最高に可愛い俺の幼馴染はもういない…。
そう、今の俺には何もないのだ…!
寝不足で目の下にクマを作った俺は、最後の力を振り絞ってフラフラとリビングのドアを開けた。
「お兄…ちゃん…!?」
ゲッソリした顔でリビングに入ってきた俺を見て、妹が驚いて声をあげた。
途中で足がもつれて転んだので、そこからは匍匐前進でズリズリと床を這って、ソファーに寝そべる妹に近づいた。
「もう限界だ! お願いだから、お前のスマホから俺の小説を読んで評価入れさせてくれ…」
妹はソファで寝転んで友達とスマホで通話中だった。驚いて立ち上がった妹の手から、スマホが滑り落ち床に転がった。
「今、お兄ちゃんが『もう限界だ、お願いだから挿れさせてくれハァハァ』って迫ってきて取り込んでるから、後でかけ直すね」
「え!? ちょっとお兄さん怖い…!? 大丈夫?」
妹がスマホに向けてそう呟く。すると床に落ちたスマホのスピーカーモードから、ドン引きした妹の友達らしき声が聞こえてきた。
ピッとスマホの通話ボタンを切る妹の指。
「お前、端折りすぎだろ、友達に妙なこと言うなよ!」
俺は無様に床に這いつくばったまま、仁王立ちになって俺を見下ろす妹を見上げた。妹の短いスカートからしましまパンツが見える、今日は水色だった。
妹のパンツが丸見えでえちえちすぎるのだが、これは俺に見せているのか?。『見せてるパンツは見てもイイ!』という俺ルールがあるので、俺は堂々とガン見することにした。
「なに見てんのよ!」
「痛っ!? 痛だだだっ!」
ダン!と音が出るほど勢いをつけ、妹が足で俺の頭を踏みつけた。足で俺の頭をグリグリすると、首がグキッとなるほど俺の頭を横に向けた。
妹の柚は兄の贔屓目を抜いてみても、最高に可愛い。だだし可愛いのは顔だけでツンデレのデレ少なめだ。成長するにつれて年々俺へのツッコミが激しく、なぜか俺にだけツン成分多めだ…。
「そんなことよりダメじゃん、家族が評価入れるのって不正じゃないの? 垢バンされるよ」
「違うぞ! それは家族になりすまして、自分で複数アドレス取って入れた場合だ」
つんけんした態度で、俺を踏みつけていた足をようやくどける妹の柚。
「ふ~ん、よくわかんないけど、お兄ちゃんの小説を読めばいいの?」
「ああ、小説家になろうゼ!というサイトだ」
俺がペンネームを教えると、妹の柚は自分のスマホで素早く検索し始めた。
俺は複数の小説投稿サイトに小説を投稿している。だが新連載の小説のランキングが芳しくない…。
冷静になって考えればわかるはずなのに、いろいろ煮詰まって俺のメンタルは壊れていたんだと思う。『俺の小説を読んでくれ』なんて、妹に恥ずかしいことを言ってしまった。家族を頼ったのは、これが初めてだった…。
「サイト登録して検索っと、あった、これかな?」
俺の小説をスマホで読み始める妹の柚。なんか無言で読まれると、判決を待つ死刑囚みたいにドキドキするな…。
妹の顔がボンッ!と真っ赤になる。そしてハラハラした表情で青くなり、手に汗を握りながら小説を真剣に読んでいる。
どうやら俺の小説は、掴みは上々のようだ。俺は手ごたえを感じ、思わずドヤ顔になった。
『小説は文章のみで勝負すべき!』俺には下手なプライドがあって、これまでツイッターなどで宣伝したり、家族や友達に『評価を入れてくれ』と頼んだことはなかった。
「お兄ちゃん、評価入れといたよ! これでいい?」
そう言って、スマホ画面を俺に見せる妹の柚。
「お前っ! なんで評価1なんだよ!?」
「だってキモイから!」
妹の柚は顔を真っ赤にして叫んだ。
「面白くなかったか俺の小説…? 主人公キモっかったか?」
俺は少し、いやかなり落ち込んで、そう聞き返した。
「違うよお兄ちゃんがキモイ!。リアル妹がいるのに、兄妹がいちゃラブエッチする小説書いてるなんてキモイ! 怖い! 変態! だから評価1にしといた」
妹は顔を真っ赤にしてぷるぷるしてそう叫ぶと、ゴミを見るような冷たい目になり俺を睨んだ。普段から冷たい瞳がより一層冷たさを増している。
「違っ…読んでくれって言ったのは、異世界ファンタジーの新連載のやつで…」
『それじゃない…』と弁解しようとしたが後の祭りだった。死にたくなるぐらい恥ずかしくて、俺は穴があったら入りたくなった。
俺は馬鹿だ…、作者名じゃなくてタイトルで検索してもらえばよかった。いや作品のURLを妹のスマホに送ればよかったのに…。寝不足で意識が朦朧としていて、そこまで気が回らなかったのだ
この日、俺はたった1つの★星評価と引き換えに、妹の信頼を失った…
◇◇◇
翌日の夜。妹の柚がスマホを持って、俺の部屋に飛び込むように入ってきた。
「お兄ちゃん、友達が面白がって小説読んでくれて、評価入れてくれたよ!」
妹は口も聞いてくれなくなる…に違いないと思っていた。だが意外にも、俺に協力してくれるようだ。
「マジか! 柚 超サンキュ~!」
俺は嬉しくなってテンション高く叫んだ。そして喜びとお礼を伝えようと、アメリカ人のように妹の柚をハグした。
「お兄ちゃん、お礼は言葉だけで十分だから…」
だが妹にはハグは余計だったようで、速攻で突き飛ばされ回し蹴りされ、距離を取られた。俺に背を向けているので妹の表情はわからないが、きっと怒った表情をしているに違いない。
パソコンで連載作品の執筆中だった俺は、投稿済み小説の評価画面をいそいそと開いた。だが、その画面を見て固まった…!?
「なんじゃこりゃ!?」
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