清掃開始
仕事へ行く準備をする。
黒のロングコートを着て、動きやすいように黒のジーンズを履く、黒の靴を履き、黒のマスクをつける。ホントの黒づくめ。でも『清掃』をするのであればこのくらいが丁度いい。そもそも『清掃』とは敵組織のボスだけを捕え、それ以外を抹殺する。ただそれだけだ。だから気付かれずにやった方が単純に楽なのである。
「コルボさん、行きましょう。」
ビリーに促され、軽く頷き、目的の建物の上へと行く。僕はビリーに軽く触れふわりと浮かせる。さらっと使ったが、これは僕の異能力の1つ、触れた物、生物の重力を操作出来る。
「ぅわ…」
何回かビリーに使ってはいるが、やはり浮くのは違和感がまだあるらしい。バランスを崩しそうになりそうになるビリーを軽くサポートしつつ屋根の上へと乗る。
排気口から中へ進入し、中の様子を探る。ボスは……さすがに厨房にはいないようだ、シェフから殺るか…
「ビリー」
「はい」
「まずは、あのシェフを殺るぞ」
「了解です。」
意識を集中する、金網をすり抜けシェフの真後ろに飛ぶ、これも異能力の1つ短距離の瞬間移動みたいなもの。
「お仕事、お疲れ様です。」
「?!誰だ!」
「おやすみなさい」
ふぅ…と息を吐きシェフを眠らせ、ビリーに合図を送る、ダクトから降りてきた。
「殺すんですよね…?」
「そうだね」
「なんで眠らせるだけにしたんですか?」
「ボスの場所聞かなきゃでしょ?」
「………」
ビリーが悲しそうな目をして露骨に眉を下げる。拷問はするのも見るのも嫌いなビリーだ、少し酷だとは思うが、今後ビリーがしないといけないかもしれない事だ、慣れのためにも手伝いをしてもらうことにする。
シェフを拘束した後指を鳴らす、その瞬間目を覚まし、戸惑うような素振りを見せ、僕を見た瞬間、殺意にもなりえるような、恐怖にもなりえるような、そんな気を発した。
「始めようか、じゃあ、単刀直入に、ボスの居場所は?」
「………」
「言わないの?」
「……言うわけねぇだろ」
「……ビリー」
「…はい」
ビリーはとても硬い表情でナイフを取り出した、そして薄く、シェフの指の皮を剥いだ。
「いっ……!!」
皮のあった場所が赤く染り、次第にゆっくりと血が滴ってくる。ビリーは怯えた顔をしている、自分のした事で他人が傷つくのが嫌なのだろう。ビリーは優しい、その優しさは、この世界ではいらないんだ。ごめんね、だから、その優しさを捨てろ。
シェフは3本目までは我慢していた、声もあげなかった、しかし4本目を削いだ時から叫び声をあげるようになり、10本目を削ごうとした瞬間
「言う!言うから!やめてくれ!!」
「どこだ」
「…それは知らない」
ビリーに目配せをする、無言でナイフを指に押し付ける。シェフの顔が歪み、しどろもどろになりながらも言葉を紡ぐ。
「し、知らないが、そいつの補佐官がいる部屋はわかる!」
「…どこだ」
「2階に上がったら尋問室がある…そこにいる。」
「そうか、教えてくれたあんたに慈悲をあげよう」
シェフは一瞬希望を見た時の目をした。しかし一瞬で絶望の目に変わる。僕がシェフの腕を潰した。近くにあった肉を叩くハンマーの重力を最大にして。原型が無くなるまで。筋肉の繊維がニュルニュルと腕だったものから出てくる。赤い液体が飛び散る。
「なんでだよって目をしてるね。シェフくんが今後、シェフとしても生きていけないようにしてから殺してあげる。そしたらシェフくんは、これまでに味わったことの無い苦痛を味わえるし、絶望も知れるでしょ?経験は人生の糧だよ?まぁもう死ぬけど。」
そう言いながら首をはね、飛んだ頭も潰す僕は、周りから見たらとんだサイコパスだろう。
飛んだ血を腕で拭いながら、怯えきったビリーに声をかける。
「ビリー、ごめんね、尋問室に行ってそいつからボスの居場所聞こう、この中の人を抹殺しないといけないけど、それも僕がするから、頑張って着いてこれる?」
「…はい。」
泣きそうな目になっても、僕に着いてきてくれるビリーは、何を目指していて、なぜ僕に着いてきてくれるのだろうか。でもビリーは必要だ、最後に、ビリーの力が絶対に必要なのだ、今回の相手は、ビリー自身も気づいていない異能力を初めて使わせる。ビリーは無意識で使っている。その能力を初めて意識的に使わせる。
それはそうと早く終わらせなくては、廊下や部屋の前にいる警備は、首を掻き切り殺して行った。声を上げさせないように、素早く、的確に切っていく。ビリーは震えて動けなくなっていた。可哀想に、あらかた片付け終わったあとビリーの元へ行く、カタカタと震えていた。
「ごめんね、僕はビリーに優しくできない」
「大丈夫です…ごめんなさい…コルボさん……」
泣き出してしまった。気を使えるない僕が悪いのに、ビリーを抱きかかえ尋問室へ向かう。辛い思いをさせてごめんね、ビリー。尋問室の様子を伺う、扉越しに音を聞いてみるが無音だ、警戒しつつも、ゆっくりと扉を開けてみた。
補佐官らしき男が、待っていたと言わんばかりに目を合わせ、微笑んだ。
なんかよう分からんくなってますね、すみません。