決意
「……ん…?」
意識が朦朧として居る中、青年は目を覚ました。目視できる限りでは、ぼやけてあまりわからないが、何処となく薄暗く寂しげを感じる。いつも寝泊まりして居る空き家になった家とは、何処となく似てる様で似てない様で…
「…こ…こ…は……?」
無意識にそう呟く。
「…ゲリラの本拠地」
「…!?」
予想外な女性の声が聞こえ、青年は完全に意識を取り戻した。上半身を立てようとする。しかし、何か鉄製の物に拘束されて居るらしく、起き上がる事が出来ない。
「…今の貴方では無理」
「何故だ」
「…貴方の装備を外したから」
「何処にある?」
「…それは教えられない。兄からの命令だから」
鎧の一部には、装備した者の魔力を増幅する機能があった。鎧を着ていれば、魔力による身体強化によって、この拘束は破壊出来ただろう。
一応、起き上がる事を何度も挑戦したが、結局は無理だった為、体力の事も考えて諦める事にした。
「じゃあ、質問を変えるが… 俺が騎乗していた竜は知らないか?」
「…知らない。
…だが、貴方を見つける前、何かが飛び立っていったのは知ってる」
「…そうか」
きっと、その『飛び立っていった』のはゼロの事だろう。やはり、俺を見放したのだろうか…
「ところで、これから俺はどうなるんだ?」
「これは兄が決める事だからわからない」
「そうか…」
敵に拘束されている今、正気を取り戻した俺は、不安と悲しみにより黄昏を覚えた。
一方その頃、同じ基地内の違う部屋にて…
そこでは、様々な種族の者達が集まり、とある会議を行なっていた。
『突然ですまないが、明日の日が沈んだのと同時に、作戦を決行する』
『ようやくですか… ところで、その作戦とは?』
『先程渡した資料を見てほしい。
明日の日が沈むのと同時に、水上戦闘機による敵航空基地の爆撃。それと同時に、混乱の約10人で構成された部隊を敵航空基地を投入。基地を制圧させ、奴等の制空権を奪い取る』
『そ、それだと、いくら我等の兵が如何に優秀であっても、少人数での奇襲は危険なのでは?』
『安心して下さい、前日その分野を得意とする者達を引き入れる事に成功して居る。その者達も戦力として加えるつもりだ』
『ボス… いくら何でも彼等を信用し過ぎなのでは?』
『…まぁ大丈夫だろう。俺等を裏切れば帝国軍からも我等からも敵対されるだろう。それに、ここは島だ。彼等が船と航行技術を持たない限り、この島からは逃げられはしない』
『そ、そうなのだが…』
『なら大丈夫だろう。
作戦決行は明日、それまでに武装の整備を行っておけ、戦場で武器が整備不備で使用不可となれば、ただ事では済まないからな。
あと、この作戦が成功すれば、敵を一気に叩いて行く。
では、解散』
「…と言う事で、作戦は明日の日が沈んだ頃になった。それでも大丈夫かな?」
「かなり強引だな… まぁ、俺はいつでも行けるのだが… 二人はどうか…」
戦車を整備中、作戦の決行日を考えた本人から聞かされた。突然過ぎね? まぁ、昨夜のアレ(前話)が敵にバレている可能があるからな…
「私もジョンも大丈夫よ、いつでも行ける」
「わかった、じゃあ明日の朝まで自由にしてて。後の細かい事は、移動中に説明するから…」
マウザァは用件を伝えると、基地の奥にへと向かって行った…
愛車の整備が終わり、ある程度暇が出来た頃…
俺は牽引式の荷台から、ある物を取り出していた。
「やはりあったあった」
『カトウどうした?』
突然、背後から英語で話しかけて来た。この声が誰なのかは、大体わかるが取り敢えず振り返る。
『ん? あぁ… ジョンか…
これか? これは… 持って来た荷台から、まだ弾に余裕のある武器を取り出していたのさ』
『なるほど… これも、なかなか味のある武器だな』
『そうだろ? 曾祖父から頂いた品で、反動は結構あるが、グリップはなかなか握り易く、火力も結構ある。更に、リボルバーでありながらサプレッサーを装着出来るから、使い方によってはかなり強力だぜ?』
『そうだろうな… 明日の作戦に持って行くのか?』
『ああ、持って行くつもりだ。まぁ、今回はサブマシンガンが主武装になりそうだけどね』
そう言いながら、取り出したリボルバーを空のホルスターに仕舞い込んだ。
後で、これも整備しなければな…