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青年と竜


 月は雲に隠れ、その場を暗闇に支配されている…


 そんな中、一騎のこの世界では当たり前のように存在する竜と、その竜に一人の青年が騎乗していた。


 その竜は、御伽話に出て来る、蝙蝠の翼を生やし大きくし強靭にしたタツノオトシゴを紫電の機体程のサイズにし、凶悪な爪と脚は蜥蜴の様に4脚付けた感じのになっている。あと、身に纏っている白色の強靭な鱗は、鋭く、例え至近距離から矢を放っても、堅い鱗にそのまま弾き返され、何事もなかったかの様に空を舞うだろう(空を舞う前に、矢を放った者に報復するかも知れないが…)。


 一方、その竜に騎乗している青年は…

 透き通っている金髪をショートくらいの長さで、顔は保護用のゴーグルを嵌めている為あまり見えないが…地球で言うゲルマン系の顔立ちに入るのだろうが… 多分、なかなかの美形である事は確かだ。服装は、鉄製の鎧で胸元に青く透き通った宝石が埋め込まれている。だが、鎧ではあるものの、彼の体型に合わせている為か、なかなかの細さであり綺麗に整備されている為か動き易そうだ。あと、座高がそれなりにある為、身長も高いかも知れない。


「月は隠れてしまっているが… 今日は良い飛行日和だな そうだろ?ゼロ」


 青年は静まり返った闇夜に、小さいながらも音源を作り出し、彼を乗せている『ゼロ』という竜に気軽に話しかけた。

 すると、それを頷くかの様に行動で表した。その行動は… 簡単に言えば宙返りである。その突然の行動を取る前に、青年は手綱を強く握り、そのゼロの胴体を跨いでいる脚に更に強い力を加え落下を防いだ。


「おお、そうかそうか! そうだよな」


 指示もない突然の行動(宙返り)を忘れたかの様に、青年は笑みを浮かべそう答えた。きっと強い絆があるのだろう。


「…ゼロ、ところでさ… 最近の陸・海軍の行動、かなり最低だよな…?」


 冷静になった彼の、突然の問い掛けにゼロは軽く首を下げた。


「だよな… 何故かこの島を占領する時、陸・海軍は突然ならず者等を陸・海軍に引き入れ『この島を占領した暁には、この島の人間を自由に使っていい』なんて言ってしまったからな…

陸軍と海軍は人道を失ったのか!…て言ってやりたい…」

『ぐるる…』

「え? 言い過ぎだ? はは、すまんすまん…

…でもまぁ、この島に配属する事になった俺等竜騎士は、ある意味左遷させられたような物だからな… それに、竜騎士に替わる()()()()()()の奴等が出たせいで、今の竜騎士は()()()()()()()()()()()者達が何故か配属される様になったからな…で、左遷させられた竜騎士の大半は、国家に忠誠なんてなくなった奴等だし…


上は何を考えている? このままでは空軍がクーデターを起こすかも知れないぞ…」

『ヴヴ…』

「あーすまんすま…ん? ゼロどうした?」


 ゼロは突然、周囲を見渡す様に睨みつけ始めた。自然界では竜が頂点に立つ為、小動物どころか戦闘に慣れない人間や竜種以外の生物は、この睨み付けるだけで恐怖に怖気つくだろう…


「敵か…?」


 青年も今までの行動が嘘だったかの様に、目付きや表情を変えた。今の彼の目先に人が居れば、その睨まれた人は殺気を感じて逃げるか恐怖で足が竦むだろう。


ウゥゥゥ…


「…なんだ? この音は…?」


 青年の聴覚に、いつものフライトでは聴く事のない音により、一層警戒を深めた。


「何かが近づいてくる…!」


 その音は時が経つ度に、徐々に大きく甲高くなり始めた…


「ッ! 上か!? ゼロ! 速度を上げろ!」


 青年な何か危険を察し、ゼロに命令を下した。

ゼロは素直に従い、速度を急激に上げた。風による圧が加わるなか、青年は身を一段と屈め抵抗を減らした。


 すると… さっきの音と共に、翼を広げた何かが空気を切り裂きながら、ゼロがさっきまでいた所を急降下して行った…


「なんなんだ… あれは…?!」


 回避後、速度を緩めホバリング状態をゼロに取らせ、青年は突然と姿を見せた謎の飛行物体に、それを目で追いながら、青年は驚きを隠せないでいた。

 その飛行物体は、高速で回転する首を水平に戻し、樹々に当たらないギリギリの行動を飛行し、速度を上げると、今度は上の方に首を動かした。すると、胴体を斜めにしながら高度を上げて行く… そして、それが水平を取り戻した頃には、青年がいる高度にまで戻ってきて居た…


「クソ!また攻撃が来るぞ! 速度を上げて回避態勢をとれ!」


 そう言われると、ゼロはホバリングをやめて再び高速飛行態勢に入り、速度を上げ始めた… が、その飛行物体はもう既に背後について居た…


「ッ!背後を取られた! 自由落下!」


 自由落下… それは名の通り、落下する事だ。

ゼロは翼を畳む事で、強制的に浮力を失わせ、強制的にら高度を落とす… すると、先程までいた高度を白い閃光の様なものが何本も光の道を作り出されていた。この世界の一部の人からすれば、幻想的見えるかも知れない。だが、青年はこれが奴の攻撃だと本能で察した。


「今だ 翼を広げろ!」


 ゼロと青年に強いGが加わる。青年は意識が遠退きそうになったが、何とか耐える事に成功した。

 その飛行物体が彼等の頭上を背面飛行で通り過ぎて行く… 青年は人が2名乗っている事を確認した。しかし、青年はそんな事を無視し、青年は更なる指示を下した。


「撃てぇ!」


 ゼロはその飛行物体に向けて、火炎放射を行った。火炎放射は飛行物体の尻尾に命中する… しかし、束の間の事だった。その飛行物体からの報復が行われたのだ。

 何かが、連続で破裂する音が発生した。それと同時に、青白い筋の様な物が何本も空中に描かれる…

 流石に、その攻撃はゼロの強靭な鱗を貫通する事はなかった… だが、不幸な事に高度な運動からホバリングに移行したばかりである為、まだ体勢的に不安定であった。この状態からの外部からの強い衝撃だ。これを指す事はつまり…


 体勢が崩れた事により、ゼロ自身ですら自身の身体を上手い様に操作が出来なくなっていた。



 青年とゼロは、暗闇に支配された森の中にへと吸い込まれて行った…







目標撃墜(ターゲットキル)

「お見事… だが…」

「機体の損失は気にしないでいいよ。そんな事より、 損失した部分… 上昇機は難なく使用出来るかな?」

「ああ何とか… 着陸ぐらいなら何とか出来そうだ」

「そう… 良かった。だけど、油断大敵だよ」

「そうだな。ところで… さっきの奴は… 例の空軍か?」

「十中八九そうだよ。多分あれは… 夜間警備かな?」

「そうか… とりあえず、着陸したら墜落現場を観に行くか」

「ああ、それは大丈夫だよ。確かこの時間には食料調達班の者が狩りをしているはずだ。彼女等に頼もう」

「大丈夫なのか?もし敵の兵が生きて居たら…」

「大丈夫なんじゃないかな? 彼女達は狩もそうだし、無傷で森に入って来た敵兵を生け捕りにしているし…」

「そうか…」

「あ、無線借りるよ『………』」


「この世界の言語… 早く学ばないとな…」






「イテテテテテ… 随分と高い所から落とされたな… 重力軽減魔法を使っていなければ、今頃死んでいただろうな」


 青年はあまりしない体勢で倒れていた為か、身体を痛めながら立ち上がる。鎧は傷つき、皮膚には所々引っ掻き傷が出来ていた。


「しかしまぁ、ここは何処だ? なぁゼロ?」


 見慣れない森の中、いつもの様にゼロに呼びかけた。しかし、ゼロからの返事は帰ってこない。


「ゼロ…? おいゼロ…!? 居るなら返事をして来れ…!」


 返事は返って来ず、それどころか気配すら感じ取れない。


 俺を置いて何処かに行ってしまったのか…


「俺とゼロの友情は、俺という片方の思い込みだったのか… ?

…きっとそうだ…」


ガサッ


 何が植物が擦れ、揺れた音がした。


「ゼロ!?」


 俺はすかさず、音が鳴った方に視線を向けた。


ガルルルル…


 しかし、ゼロではなかった。何か狼か魔獣だろうか…? 闇で影しか分からない。


 その影は高速で接近し始める。多分、俺を殺し餌とするのだろう。

 …まぁ良い、もう死んだって構わない。


パスッ


 何か拍子抜けた音がすると、その影は速度を緩めすぐ目の前で転倒した。

 接近して来たからわかった、やはり狼だった。しかし、その狼の額に小銀貨がすっぽり入るぐらいの穴が空いており、体液を流して絶滅していた。


………


 何か視線を感じる… 周囲を見渡すと、人型のシルエットが視界に入る。それは何か杖の様な物を持っていた。


「誰だ…」


 抵抗もせず、俺はただそれを見続けた。

それは徒歩で近付いてくる。雲の隙間から月が覗き、俺とそれをそっと照らした。


………


 美しい女性だった。金色の長い髪が光沢を作り、美の女神の加護を受けて居るのかと言えるほどの顔立ち… 胸もかなり美形でシュッとした腹周り、脚は美脚と言っても過言ではなく、身長もなかなかの物だ…

…まるで、天使がそのまま人に化けたかの様な容姿だ。

 更に機動性を良くする為か、露出が激しく… それが似合って居た。

多分、本人はそれを狙って居ないのだろうが… 自然に男が寄って来そうだ…


 だが、その女性はただの美女ではない。



森の…番人(エル…フ)?」

「………」


 そう、エルフだ。森の番人だ。我が国が敵対する存在だ。

 エルフは俺を睨み続けて居る。きっと今から、帝国側の兵である俺を殺すのだろう… 狼に風穴を開けたあの魔法で…


「そうか… 憎き我を殺しに来たか…

…殺せ、憎いのだろ?」

「……」


 エルフは両手で持っていた杖… いや、アレは敵国の兵が使っていた銃という兵器か… を構え… ずに、腰にぶら下げていた小さな銃を手に取った。


 エルフはその小さな銃の一部を動かし、カシャンという音を鳴らした。

 そして、俺にそれを向けて構え、容赦なく火を噴かせた。


パスッ… ぽと…


 そんな音が鳴ると… 額に痛…みが…伝わって…く…る…


 青年の視野には、そのエルフが二重にも三重にもなる様に見え始め、意識が遠のいて行く…


…こ…れ…が……… 死………な……の……………か……………


 青年の意識は完全に途切れた。




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