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プロローグ

どうも、 初めての方ははじめまして、 私の書いた他の作品を見てくださった方はお久しぶりです。

実はテスト期間やスランプにより、 一か月以上投稿が遅れてしまいました。 大変申し訳ございません。 今後も、 此方の事情により、 この様な事になると思いますが可能な限り投稿をし続けます。


さて、 話を戻しますが、 この作品は『特典に旧式兵器(九九式狙撃銃)を選んだ転生者の異世界航海記』の別ルートの様な作品です。 ストーリーは、 もし神様に出会う事もなく、 仕事中に召喚されたらという話です。 なので、 ヒロインは本家の方にも回想編時のみに登場した “杉野 明香” という年下だけど上司である人物がヒロインとなっております。 あと、 この作品自体は、 主人公の職場の事などが回想編として多く出てきます。


私からは以上です。 では、 本編へ




 アフリカのとあるジャングルにて…


 俺はただ任務をこなしていた。


 木に登り、 紐で通された一丁のボルトアクションライフルと矢入れの箱を背負い、 腰に銃剣とリボルバーをぶら下げ、 オリーブドラブの塗装を施されたコンパウトボウを左手で持ち、 麻酔針がついた矢を射る準備を行っていた。


 獲物は当然人間。


 無言で風を読み、 獲物を見つめる野獣の様に、 ただ敵を見つめる。 自身を可能な限り森と一体化させた。


 そんな時に、 胸元に付けていた黒い箱…… 無線が振動を起こす。 正直なところ、 あまり良くないタイミングだ。 だが、 上の命令の為、 俺は無線に出る事にした。


「こちらアーチャー、 狙撃ポイントに到着した」

『了解、 こちらも狙撃ポイントに到着した。 二十秒後に攻撃を行う』

「了解、 こちらは貴殿のサポートをする。 オーバー」


 無線で、 出来るだけ音量を下げた為か、 そこそこ離れていた敵兵には気付かれなかった。 もしかしたら、 バレているかもしれないが、 バレてない事を祈ろう。


 因みに、 さっきの通信相手は俺より一歳年下の女性だ。 年下ではあるが、 この仕事では先輩であり、 狙撃や接近戦などの戦闘術は、 俺よりは格上だ。 俺が優っているものがあるとすれば、 騎乗術と弓術ぐらいだろうか…


 そうこう思っているうちに時間が来た。


 俺はただ狙いを付けて弓を射る。


 麻酔針の付いた矢が弓の弦の弾力性を活かし放たれ、 矢が空気を切り裂きながら進んだ。 重力を受けて放物線を描き落ちて行く。 銃器による狙撃と比べたら、 射程も命中精度も劣っている。 だが、 これも感覚的に計算通りではあるし、 何よりサップレッサーを付けた銃器程に音も出ないのが利点だ。



 そう思いながら目標を双眼鏡で覗くと、 倒れた丸太に座っていた奴の横腹に命中した様だ。


 彼が呻きながら何かを叫んで居ると、 まだ味方がいたのだろう。 茂みの中から二人が彼の元に寄ってきた。 俺は取り敢えず、 背負っていたライフルと手に持っていた弓を取り替えた。 当然、 スコープ付きで大戦時の骨董品だが、 高い命中精度を誇っていた。



 呻いていた奴が、 麻酔により深い眠りに付いた頃、 敵兵は俺が居る方向を警戒し、木に隠れてしまった。狙撃の基本なのだが、 狙撃ポイントを変えることにする。


 木から降り、 体勢を低くして双眼鏡を覗くことにする。 すると、 そこに居た二人の敵兵は銃器を地面に落とし転がり回ったり、 膝こと地面につけただ悲鳴を上げていた。 よく見ると、 彼等二人共両腕の一部から血が流れていた。 きっと彼女のだろう、 彼女の狙撃銃は銃身自体がサップレッサーな為、 音がないから恐ろしい。 あと、 わかった事があるのだが、 どうやら俺の出番はない様だ。


 いや… 取り敢えず銃剣装着してその場を制圧するかな…


 俺は茂みを掻き分けながら、 敵がいる方向に向かって前進した。



 茂みを掻き分けて進んでいると、 視野の一部である太めの木の枝に不自然な揺れが見えた。

熱帯の筈なのに、 背筋に寒気を感じる。

俺は素早く前に伏せて回避した。


 何かが発射される音と空気を切り裂く音がし、 背後の樹木を傷付け、 音が奏でられた。



 これは、敵の攻撃だった。


 俺は即座に反撃を行う。

 もう引き金を引けば射撃が出来るライフルを、 即座に照準を合わせてトリガーを絞る。

 日本人にとっては、 結構扱いやすい反動とさっき狙撃された時の銃声より若干低めの音が響き体に伝わる。


 その弾丸は、 敵狙撃手に命中したようで彼は木の枝から落ち掛ける。 しかし、 敵の狙撃手は勇敢な様だ。 理由は落ちる前に俺にもう一射撃行った為だ。


 バンッ! という音と共に、 弾丸が俺の左頬を掠め、 そのまま地面に突き刺さった。

その後、 何かが落下した音も聞こえた。


 俺は急いでそこに向かい、 落下したものに銃口を向けた。

 銃口を向けた先には、 右脚の一部が血に染まった樹木の柄のギリースーツと市街地戦に有効な某大国の半自動狙撃銃を装備した大柄(日本人からして見ては)な男性が倒れていた。


「武器を外せ… 全部だ」

(注、 日本語で書いていますが現地語(英語)で話しております。 ここからの会話も同じです)


 俺は武器の解除を求めた。 さて、 俺の脅迫に乗ってくれるだろうか…?


「嗚呼… わかった…」


 彼は低めの声でそう言うと、 伏せたまま、 装備として装備されていた手榴弾や拳銃、 ナイフなどを地面に置き始めました。


「これで良いか…?」

「そのまま伏せろ…」


 彼は武器を全て置かせそのまま伏せさせる。 だが、 まだ隠し持っているかも知れない為、 銃口は向けたままにしておいた。


「…俺は何も情報を持っていない…」


 彼はそう吐いた。 正直な事、 俺はただの戦闘専門の傭兵かレンジャーだ。 拷問してまで情報は欲しいとは思わない。


「いや、 俺からは何も聞かない」

「ではなんだ…? 殺害か? 殺害なら俺を殺せ… ただ、 仲間は殺さないでくれ…」


 今受けてる任務に、 暗殺という依頼はないのだが…


「今の状況で、 敵意を向ければ殺す。 何もしなければ殺さない」


 彼は目を丸くしていた。 きっと彼は何度かこのように捕まった時があったのかも知れない。


「俺はただ、 貴殿等を捕虜として会社に届けるだけだ」


 俺は手を差し伸べながら、 そう問に答えた。 彼の視点は、 この右手に寄った。


「立てるか?」

「ああ…」


 俺の右手を掴み、 立ち上がろうとするも、 俺の弾が右脚に命中していたからだろう。 彼は軽くよろけ、 彼は少しうめき声を上げた。


「大丈夫か? もし弾が貫通していなければ取るが… どうする?」


 俺の使ったボルトアクション式ライフルは、 使う弾薬は貫通性能が高く、 近距離の肉片程度なら簡単に貫通する為、 多分無いと思うが一応聞いてみた。


「いや、 大丈夫だ… 貫通してる」


 彼はそう言って否定したが、 心配だった為…


「そうか… すまないが右脚を出してくれないか?」


 と、 口に出した。 それを聞いた彼は首を傾げながらも右脚を出す。


「何をするんだ…?」

「痛むだろうが、 応急手当て」


 そう言いながら、 隠し持っていたポーチから止血剤と消毒液、 包帯などを取り出した。



「…取り敢えず、 こんなもんか…」


 簡単にだが、 消毒して止血して包帯を彼の右脚巻いた。 これで多少はマシだろう。

 そう思っていると、 彼は眉を潜めていた。


「敵なのに… 何故そこまでする…? 俺には理解ができない…」


 どうやら、 俺のやった行動が理解出来ないでいるらしい。


「さぁ、 何故だろうな」


 俺はそう言って返答した。 彼の顔は曇ったままだ。 こればっかりは、 俺自身もわからない… ただ、 前から助けれたら助けなければと思ってしまうんだよな…


「まぁ、 取り敢えず行くぞ」


 俺はそう言って、 彼の肩を強引に肩車しながら、 俺はとあるところに向かった。





 夕方になり、 そのとあるところに着いて…

 そこはジャングルと平野のちょうど中間部分に位置し、 俺らがジャングルを抜けると、 既に一人の透き通る白い髪の少女が旧式の戦車の背後に止めて待っていた。


「遅い!」

「……すまない」

「……」


 この職場の先輩に叱られた。 まぁ、 今回は人助けしていたからね、 仕方がない。

 話変わるが、 その職場の先輩はさっき無線で出ていた女性で、 名前は“杉野 明香” と言い、 外見も声も名前も可愛いらしいし人としても良い人間だ。 ただ、 侮っていると普通にやられるし本気出してもやられるだろう。

 因みに、 外見は白く透き通っている髪をポニーテールにした髪型をしており、 顔立ちは東洋系で、 身長もそこそこありスタイルも良い。 …だけど、 人によるだろうが、 胸小さいのがマイナスに見られるかもしれない… 俺的にはデカすぎると戦闘時に邪魔になってそうと思う…


「ねぇ… 加藤、 何か思った?」

「いえ、 何も…」


 あと、 感も良く働いているようだ。

因みにだが、 俺の名前は“加藤 健二”だ。


「ところで、 肩車されてる人誰? 」


 先輩はようやく彼のことを質問してくれた。


「ただの敵狙撃手だよ」

「そう… 実は私もよ… 敵歩兵3名だけど」


 どうやら手間も省けたようだ… というか、 どうやって連れてきたんだ…


「すまないが俺の仲間は何処に…」


 突っ込みたいのを耐え、 彼は仲間の事について話した。 仲間が無事か見たいのだろう。 すると…


「あの戦車の背後、 もう手当済みよ」


 と、 先輩は答えた。 先輩… 手当出来たんですね…


「そうか、 助かる…」


 と言って、 右脚を引きずりながら向かおうとした。 俺は手伝おうとしたが、 「ここからは俺だけで行く」と言われ、 断られた。


「逃げ出したりはしないだろうか…」

「まぁ大丈夫なんじゃない。 それに逃げ出しても武装は全部奪ったし」



 その後、 俺は戦車の背後に回ってみたが… 置き手紙を残してもう彼等は居なかった。 これは一本取られたというべきだろうか?


 先輩に逃亡の事と手紙の事を話し、 その置き手紙を二人で見た。 置き手紙に書かれた文字は、 単語ひとつひとつが読みにくかった為、 ゆっくりと先輩と二人で翻訳してみると、 ある事が分かった。

 それは、 あの歩兵3人は新米だったようでもう一人の狙撃手が補助をしながら訓練を行っていたというらしい。 後、 彼等が書いていた事は名前と感謝の言葉ぐらいだった。

 あ、 もう一つわかった事があった。 それは、 もう彼等はハンターの道から脚を洗い、 違う道を探すという事らしい…

先輩も俺も、 攻撃と手当しかしてないのだがな…







 次の日、 この地域には深い霧が発生していた…


 俺と先輩は日が暮れるからと、 たまたま、 この地で野宿していた為、 この現象に巻き込まれた。


「霧か… 久々に観た…」

「私も…」


 俺も先輩も霧は久々に観る光景だった。 理由? 二人共しばらく日本に帰っていなかったからだ。

それにしても、 この時期に況してや湿地帯ですらないこの地域で霧とは何かがおかしい…


 俺がそう考え込んでいると、 先輩は少し大掛かりな無線機と向き合っていた。 だが、 その無線機をマニュアル通りに周波数などを合わせていると、 ある事に気付いたようだ。


「あれ…?」

「先輩、 どうしましたか?」


 俺は先輩に問いかけました。 すると、 彼女は無線機と睨めっこするのをやめ、 こちらに体を向けました。


「無線が繋がらない」

「周波数が違うのでは?」


 先輩は一応、 機械音痴の分類だからな…

俺はそう内心思って、 「俺がやりますよ」と言って席を譲ってもらった。



「……繋がらん…」


 周波数を合わせようがバッテリーを替えようが、 聞こえる物は『ざー』という雑音しか流れて来なかった…

 念の為に、 スマホや胸ポケットに付けていた無線機を使うも、 近くの店どころか本部にすら繋がらない(スマホは当然圏外)。



「危ない!!」

「グハッ!?」


 無線機に向き合っていた俺は、 先輩のタックルにより横から壮大に倒れた。


「せ、 先輩… い、 痛いd」


バン!! チュイン


 突然の発砲音、 それとほぼ同時に背後に止めていた戦車の装甲により、 撃ち出された弾が弾かれる音が奏でられた。


 更に、 これだけではなかった。 その発砲音の後、 何十丁分の銃火器から放たれる音が一斉になった。

その流れ弾は俺達には命中しないものの、 その流れ弾は無線機を壊し、 あまり聞きたくもない戦車の装甲に傷が付く音が連続にして聞こえて来た。


「クソッ!? 敵襲か!」


 そう叫びながら護身用に装備していたリボルバーとナイフをポーチから取り出し手に持った。


「先輩! 俺が敵兵を引きつけるから武器を!」

「わかった!」


 そう言って、 先輩は匍匐で武器を取りに向かった。

 それを見た俺は、 威嚇用に一発目を狙わずに発砲した。



 当然、 命中するわけでもない為、 俺はすぐにリボルバーのハンマーを下ろす。



 霧が晴れてくる… だいぶ目視できる様になって来た… 目視出来てわかった事は、 敵がこちらに向かって来るのが分かるぐらいだろうか…? というか、 無線機を破壊した敵か……?


 まぁ、 そんな事より、 こちらから攻撃するのなら麻酔を使うが、 敵襲してくる敵なら実弾使って殺しても良いよね。 この様な戦場は敵を殺さないと意味がないから…


 という事で、 薄い影が若干見える程度なのだが、 こちらに向かって来て尚且つ近付いてくる敵に向けて一人一人射撃を行った。


 これといって早撃ちでも狙い撃ちの名人でもないのだが、 放った5発の弾丸は、 狙った通りに命中した。


 命中した敵兵は悲鳴をあげてその場にひれ伏す。 こう言ったのは自動拳銃の方が戦い易くて良いのだろうが、 俺的にはリボルバーの方が使いやすい。 威力も高いし故障もしにくいし、 何より見た目も良い。 だけど、 難点もある。 それは俺が使用しているリボルバーはいちいち弾倉に弾を込めないといけないという事や日本人の体格からしたら反動が強いという難点などがあった。


 まぁ俺自体、 その反動にも慣れてしまったし何よりいちいち弾倉に弾を込めないといけないという作業をしなくても良いクイックローダーという方法を使用しているし… 因みにクイックローダーとは弾倉ごと交換すりという方法らしい。


 そして、 もう既にクイックローダーをし終わっていた。 直ぐに射撃に移る。しかし、 もう既に遅かった。 それは、 敵兵はもうすぐそこまで来ていたからだ。

 即座に銃口を向けるも怯まず突進してくる。 俺は、 敵に恐怖を覚えた。 だが、 霧でぼやけていてなかなか見えなかった中、 色々と分かったことがある。 それは衣装と武器だ。 敵はまるで、 大航海時代の海賊の様な格好をしていて、 武器も曲刀とプリントロック式の単発拳銃を装備していた。

 この時代にそんな兵器を使うものなどあまりいない(と言うか競技やコスプレ、 映画の撮影など以外は無いと思う…)。 とは言っても、 俺自身も骨董品を使っているから言えないが…


 曲刀が音を立てて振り下ろされて、 良い思い出も悪い思い出も脳裏に流れて来る…

 嗚呼、 もう終わりか… 俺はそう確信し目を閉じた。


ターン!


 …… 背後から銃声が聞こえてきた。 きっと先輩が反撃をし始めたのだろう。


 … アレ? 俺死んだんじゃ…


 俺はゆっくりと目を開けた。 すると、 曲刀を振るい下ろそうとした敵兵は、 その場に倒れ、 脳天を撃ち抜かれて絶命していた。 きっと先輩がやってくれたのだろう。 そう思いながら反撃に移った。 後で礼を言っておかねば…


 そう思っているうちにも敵は距離を縮めて来る為、 攻撃を続ける事にした。






 敵の海賊? が、 形成を立て直す為のものか、 それとも諦めたのか分からないが、 敵は俺らに背を見せながら逃げて行った。 逃げる時、 背を見せながら逃げるのは敵を侮辱しているようにも見えるし人によっては容赦無く殺すから、 余計に危険なんだがな…


 さて、 話を戻し、 今回の戦闘の結果は、 弾薬の減りが少しは気になるが、 怪我も故障も最低限に抑えられた。


 俺は取り敢えず、 仕事で使用している戦車の車内に避難する事にした。 周囲を警戒しながら後退する。 此処は敵の領地と思っていた方が良さそうだからだ。 だが、 周囲を警戒するも、 敵は現れず、 普通に目的地に到着する。 何かあって火災でも起こされたらお終いだからか、 戦車を移動してくれていたようだ。


 俺は車体をよじ登り、 砲塔に付いているキュポラーから車内に入った。




「何故、 ここに…」


 車内に入れたのは良いものの、 其処にはもう既に出て行った筈の男が、 車内で先輩と会話を楽しんでいた。

 その男は、 俺よりも一回り大きく、 車内では全く隠蔽できないギリースーツを着込み、 スコープ付きの某大国製の半自動式狙撃銃を両手で持ちながら銃座に座っている。 因みに、 先輩はその隣の運転席に座っていた。


「ようやく戻ってきたか…」

「戻ってきたではない、 何故貴様はここに居る…?」


 俺は戦う気力はなくなっているものの、 取り敢えず、 リボルバーの引き金に指を触れた。


「武器は閉まってくれ、 俺はただ、 貴殿等を助けに来ただけだ。 忘れたか? 俺が居なければ、 多分貴殿は死んでいたぞ」

「え… 助けられた記憶がないのだが…」


 今回の戦で、 俺は目の前の男に助けられた記憶はない…. 筈だ。

 …いや、 もしかしてアレか…?


「曲刀で斬られかけていた時の狙撃は俺のだぞ」

「アレか… あの時は助かった、 感謝する。

…お礼と言っては何だが、 食料はいるか?」

「いや、 いらない。 第一、 レーションはもう食い飽きてね…

それに、 今日から貴殿等の所で働こうと思ってね」

「いや、 レーションではなく日本のクッキー菓子なのだが… ん? 貴様、 今何と………」


 俺はそれを聞き出そうとした。 しかし、 操縦席に後付けされていたモニターで監視をしていた先輩は、 あることに気付き、 明るそうな目付きを一変させ捕食者が獲物を狙うような目付きに変わった。


「第二陣がくる。 戦闘態勢に入って」

「了解、 俺はもう一度外に出て支援する」

「わかった、 貴殿の背は俺に任せてくれ」

「ああ、 援護感謝する」


 俺はそう言って、 再び外に出た…… はぁ、 軽機関銃かサブマシンガンかをいつでも取り出せるようにしておけば良かった…


「すまない、 一つ言い忘れていた」

「どうした?」

「今度から俺の事を“貴様”ではなく、 “ジョン”と呼んでくれ」

「……ああ、 了解した。 後方は任せた、 ジョン」


 俺は彼に背後を任せジョンと共に車内から出た。



 外に出ると、 其処にはまたさっきの者と似たような武装をした男達が突撃して、 接近していた。 俺はガンポーチからリボルバーを取り出し、 ハンマーを引き狙いを定めて引き金を引いた。 乾いた音が草原を響き渡らせた。 それに続いて、 音質の違う乾いた音が間隔を1秒程開けながら絶え間なく鳴り響く。 目視出来る敵兵の頭に、 1発1発確実に命中していた。 因みに、 敵兵は今の所、 背後からの奇襲はなさそうなので、 ただ前方に向けて撃ち続けた。


 ジョンの使う半自動式狙撃銃の弾倉の内部が空になった時、 俺は彼と交代し敵の接近を許さない様に射撃を続けた。 途中、 先輩が乗る戦車から砲撃が行われ、 かなり後方にいた敵の野砲を破壊した。 野砲なども歩兵からしたら厄介なものの為、 正直助かった。


「敵は旧式の兵器を使用しているからって、 敵の数が多い上に、 野砲まで用意されたら此方が不利になるからな。 貴殿の上司は有能だな」


 自身のことではないが、 先輩を褒めてくれるとどことなく嬉しいかな。


「ええ、 先輩は強くて有能、 更に美少女で一部除いたスタイルも良いから本部では人気者ですよ。 あと話を変えるが俺の事を“貴殿”ではなく“加藤”か“健二”とでも呼んでくれ」

「わかった」

『ねぇ加藤? 何か言った?』

「いや、何も」

『へぇ… そう…』

「あと、 勘が鋭いか…」


 結構離れて、 無線機もオフにしていたはずなのに、 先輩に聞こえていた? 様だ。 勘が鋭いか…


 まぁ、 俺達は攻撃を絶え間なく続けた。



 戦闘が長引き、 弾薬の減りが深刻的な程になって来た頃… あと、 10名狩れるか狩れないかの状態になってきた。 途中、 敵の救援が来た様で、 そのせいで少し押され始めていた。 俺とジョンはそれでも後退しながら、 可能な限り攻撃を続けていた。


 そんな中、 背後から妙なものが大量に降って来て、 吶喊する敵兵の足元よりも一歩手前に落下した。 軽く地面は湿気ており、 其れが地面にぶつかっても、 ボトッという音しか聞こえてこなかった。 因みに、 それはスプレー缶の様な形をしており、 どう見てもこの敵兵が使うものではなさそうな代物である。


「閃光弾だ! 目を瞑れ!」


 背後から声質的に若い男の声が聞こえてきて、 取り敢えず、 彼の言葉に従う事にした。 俺もジョンも射撃をやめ、 目を瞑り、 すかさず腕で目元を守る。 すると…


 甲高い破裂音と共に瞼を閉じていても分かるほどの強い光が発せられていた。 しかも、 その光源は前方で大量に炸裂し、 目を開けていたら失明していたかもしれない。 だが、 音自体もそれなりに強く、 聴覚がおかしくなりそうだ。


 ようやく、 それらが止んだ頃に目を開けると、 其処には気絶しているものや目を塞ぎ、 何かの言語を叫んでその場を転げ回る敵兵などが居た。 もしかしたら、 聴覚をやられた敵兵もいるかも知れない。


「我、 これより撤退する」

『ええ、 撤退を許可する。そう言えば、 ()()()原住民さんがこの車両を隠せる場所にまで連れて行ってくれるみたいだわ。 取り敢えず戻って来て』

「了解した」


 俺はナイフに、 ジョンは自動拳銃に持ち替え、 周囲を警戒しながら後退を始めた。



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