新しい拠点、富豪は凄い 〇月13日 昼
続けています!ではでは、どうぞ!
※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
斧を構えながらこそこそと物陰に隠れるように目的の地区へと移動して行く、いつどこで誰に見つかるか分からない。殺人犯だっているだろう。例え殺人犯じゃなく良心的な人が居ても厄介だ、一緒に居る事のメリットは確かにある。物資の集まりも早いし、警戒も交代で出来る。ヤバいタイプの人間に見つかっても協力すればどうにかなるかもしれない。だけど、人数が増えれば物資の消耗も増える、それにこの状況は…ゾンビがいる世界からは一生離れられないと思う、そうなると恐怖による依存や恐慌状態にも時間と共になるかもしれない、後は簡単。味方同士で殺し合ってゾンビの餌になる、ならなくても死ぬか物資を全部取られるか…いずれも死ぬ
「それに、私自身こう言う考えを持っていてもその場面に居合わせたら助けちゃうかもしれない、その前に押し切られそう…」
非情になり切れないから人間なんだよ…まだ20だよ?考え方が酷過ぎるよねぇ…っと気落ちしつつも歩みは止めない、塀の前を通る時も警戒を怠らない。石の壁とかならいいけど…腕が通りそうな柵付きの塀が一番危険。さっき体験してぞっそしたよ。塀の向こう側から叫び声をあげながらリュックサックを掴んで来るんだもん…ナイフでゾンビの手首を切り落として即座にダッシュ。腐ってるからやっぱり脆いみたい
「リュックサックは危険かなぁ…」
そうぼやくと目的の地区に来た、お金持ちが好き好んで住む地区なのだが…今は人の気配すらない、正確には"生きている"人の
「すっご…何階建て…?あ、それよりも救急車とか見て回らないと」
6階建てはありそうな家?をぽけぇ…っと見上げた後、目の前に広がる警察の努力の痕跡を漁る事にする。残ってる物資は大切、出来る限り今は荷物にならない物、例えばお菓子とか弾薬とか…あ、ガソリンも確保できるね、今はしないけど
「うん、うん…やっぱり…使う暇もなかったんだね…」
血痕の残る車内に眉を顰めながら何台もの車両を漁る。時々救急車の後ろ側が騒がしいものがあったのでスルーした
「包帯に痛み止め、抗生物質…かな?英語勉強しておけばよかった…あ、これは消毒液だね」
集めた物を綺麗な救急車の中でリュックサックに詰め込んで行く、最後に警察車両から拝借したハンドガンのマガジンを引き抜き、弾丸の数を数える。
「1…2…3…7…8…9…12発…」
少し悩んだ結果、そのままマガジンを収め。腰のフォルダーに収める、威嚇射撃は大事…だよね
…
…
…
「本当に大きいなぁ…お邪魔しますっと」
取り敢えず、敷地内に入る。監視カメラが動いてるけど監視してる人はいるのかな…?試しに両手を上げて振ってみる、勿論人が居た時を見越して武器はみんな隠してある。あるのは服で隠れてるけどナイフとハンドガンだけ
「…反応なしっと…んー、ドアとかガチャガチャしたらサイレンなるかな?」
裏手に回ってブレイカーがないか調べてみる、無いよねぇ…地下に多分あるんだろうけど…さて、どうしようかな…
「窓を割るなんて出来ないし…鍵も…掛かってる…ぐぬぬ…」
どうにか入る手段がないかと、色々と調べてみる。そして…結果を言うと入れた
「いやぁ、すまないね。てっきり不審者だと思って」
そう言って高そうなティーカップに申し訳なさそうに謝りながら、紅茶を淹れて出してくれた男性、つい先ほど地下に向かった記憶のある私としては今の現状に混乱している。
「い、いえ、所でなんで私はこの家に?と言うより、ベッドに?」
「あぁ…それはだね」
とても言い難そうに頬を書く50代の渋面、無精髭がとても似合っています
「僕が君を気絶させたんだ。その、女性とは思わなくてね」
説明を要約するとこんな感じ、監視カメラの前で両手を振る私に気が付いた彼は服装の所為もあってとても警戒した。そりゃそうでしょ、軍人っぽい格好に加えて帽子を深く被りマスクをしている人物がそうしてたら日常でも警戒する。そして、その私が外階段から地下に来て、そのまま地下室に来た時に背後から首に一発、そのまま気絶したのだ
「成る程、道理で首が痛い訳です…」
首を摩りながら痛みに呻くと再度彼は謝ってくれた、どうやら私ほど腐っていないようだ…あれ?私って腐ってるのかな?
「はは、それにしても僕も驚きだよ。君の様な綺麗な女性があんな格好で家に侵入して来るなんてね。まぁ、そんな世の中に代わってしまったと言う事かな」
明るく笑う彼に私は苦笑いしか返せなかった、どうやって逃げようか、荷物はどこだろ?
「そう言えば、名前を聞いていなかったね。僕は翠木 涼太だ。警備会社を運営していてね」
「…双海凛華です…私の荷物は知りませんか?」
渋々と紅茶を小さく啜りながら名前を名乗るとついでにと聞いてみる、最悪全部没収の可能性もある…
「荷物?あぁ、それなら君の部屋に置いてあるはずだよ。外にあったクロスボウなんかも一緒に」
どきっと、した。ちょっと待って、あそこはカメラからも見えてないはず
「?そう警戒しないでくれ、私も君と同じ生存者だ。ここは一つ協力しようじゃないか、見た所心が安らぐ場所が必要そうだし…ここなら使ってくれて構わない。代わりに君の情報と知識を貸してくれないか?」
「…なんですか、その条件」
「ふむ、悪い条件じゃないと思うが…さっきも言った通り、警備会社を営む上で多少の武術や銃器なら扱える。いや、警備会社は関係ないな、僕の趣味だ。だが、サバイバルとなると話は別でね。罠なんて作れないし、物資の優先順位も分からない。ゾンビ共の習性?あれは死んでるから…まぁ、いい。そう言う事だ」
「は、はぁ…」
「どうだ?ここなら安全だし、浄化装置も自家発電も出来る、無論。監視カメラもあるし…あぁ、ガラスは防弾防刃だよ」
「…条件良すぎませんか…?」
ジトっと翠木さんを睨むと困ったように無精髭を左手で撫でる、どうやら向こうも悩んでいるようだ
「良過ぎるか?僕の家を使って良いと言ってるだけなんだが…こうして会えたんだ。一緒に暮らさないか?さっき言ったのは本当だが、一人は心細くてね」
はっはっは、と笑いながら翠木さんはそう言った。この人は私が裏切るとかそう言う事を考えないのだろうか?
「…翠木さんは私がこの家を乗っ取るとか、考えないんですか?」
「そんな事を考えていたら誰も信じられないだろう?それに、少なくとも君は大丈夫そうだ。何よりも綺麗だしね」
はぁ…この人は本当に…まぁ、いいか
「わかりました、条件を飲みましょう」
「本当か?それは良かった!よろしく頼むよ、凛華君」
そう言って笑いながら手を差し出す翠木さんの手を握り返し、しっかりと握手した。フラグって存在するんだぁ…とか、思いながらも私達の共同生活は始まった
面白いと思える方がいますように!ではでは!