表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/29

イケメン(生還)

 


 教室を脱出した俺は持ち前の要領の良さを発揮していた。


 時にはその剣でモンスターを葬り、時には肉壁を盾に、時にはおとりにして、無事に塔の入り口へ着いていた。


 ――肉壁3人いてよかったぜ。敵もそんなにつよくねえ。流石勇者なだけあるぜ。レベルも4に上がったしな。

 ――よし。これで俺は退避完了だぜ!


 塔に足を踏み入れる。


 踏み入れた瞬間、俺は浮遊感と目眩、激しい頭痛に襲われてた。




 気付くとまさしく異世界と言わんばかりの大きな城の前にいた。

 目の前といっても歩いたら数十分かかる距離。


 恵比寿は大きな門を背にしている。

 正面、城の前は広場になっている。


 ――ていうか塔じゃねのかよ……





 恵比寿は塔に入ったはずが、城の前にいる。

 

「え、ここどこなの!?」


「察するに、異世界ということでよろしいでしょう」


「恵比寿君! 私たちどうすればいいの!?」


 うるせえな、自分で考えろよ




 呆けて突っ立っていたら、執事服をきた初老の男性と、メイド服を着た少女が恵比寿に近づいてきた。


 ――なんだこいつら? 城の住人か? 


 俺は二人をじっと見て、品定めをした。


 ――じじいはいらねえがメイドは悪くねえな……


 初老の男性は俺の前で立ち止まり、丁寧にお辞儀をして語り掛けてきた。


「退避の方ですね? おめでとうございます。無事退避した方には後程、報酬がございます。とりあえず、モンスターパニックが終わるまで、あちらのスクリーン前のコロシアムでお待ちください」



 メイド服の少女は無機質な声で俺に告げた。巨乳なのに無表情だ。


「案内する」


 メイドの胸がぷるんと揺れる。




 俺たちは城に向かうではなく、脇にそれた広場の道を歩いて行った。


 広場は広大である。まるでヴェルサイユ宮殿の庭園の様だ。……見たことないけどな。

 広場の右奥に、とある空間があった。


 近づくと空間は窪んでいて大穴が空いている。

 空間の端の方はなだらかな階段のようになっている。

 中央奥に巨大なスクリーンが中に浮いている。


 まるでライブ会場のようだ。2000人は軽く収容できそうな広さである。

 

「ここはなんですか?」


 俺は仮面を被って、丁寧でさわやかな口調で喋った。



 二人は恵比寿を無視して先に進んで行った。


 ――おい、無視かよ……くそじじいが……俺は勇者だぞ……



 メイドがぼそっ呟いた。


「コロシアムって言っただろう脳みそ足りんのか」


 俺はメイドの口調にドン引きして固まってしまった。


「は、はい……」






 窪んだコロシアムに着く。


「こちらでしばしお待ちください」


 さっさと元来た道に帰る2人。


 俺はコロシアムを見渡すと、知っている同級生が何人もいた。


 同級生たちは俺を見つけるとすぐさま駆け寄ってくる。


「お~い!! 達也! 無事だったか!!」


「恵比寿く~ん、怖かったよ!!」


「さすが恵比寿、退避できたんだね」


「俺死んじまったよ……」


 一斉にしゃべり始める同級生たち。


「そんなことないよ。パーティーのみんながいたからどうにか塔に辿りつけたんだよ」


 ――ああ、役に立ったぜ。肉壁としてな!


 俺は人好きにする笑顔で受け答えをした。


 死亡した生徒は城内にある教会で復活した。

 城への転移時間はばらつきがある。

 死んだ者の装備がなくなっている。

 LPは減っていなかった。

 タブレットはハンドフリーで使える。

 藤崎がクラスメイトを犠牲にしようとしたらしい。

 ここは塔の1層らしい。等々……


 ――大した情報はないな……当たり前か、今はおとなしくして俺のハーレムを築く下準備をするか……


 妄想にふける。


 奥の巨大スクリーンに動きがあった。


 スクリーン画面上部にメッセージが流れ出る。


【モンスターパニックが終了するまで、こちらの映像を観ながら今しばらくお待ちください】


 画面には体育館裏で戦っている神楽坂幸子が写っている。


「うお、すげええ!」


「なんか映画みたいだね」


 生徒たちがわいわい騒がしくなってきた。


 神楽坂の戦闘だけではなく、ほかの生徒の逃走劇やモンスターに殺される瞬間など様々な場面に切り替わっていく。


 ――あいつは死んだのか?


 俺は藤崎ハルキの事を無視できない。目障りなハエだと思っている。


 スクリーンを通して警告音が発生する。

 新しいメッセージが流れる。


【ボスモンスターが出現しました。皆様応援をしてあげてください】


 そこに映るのは、赤い鬼に瞬殺された神楽坂幸子。


 素早く身構えて対処する藤崎ハルキとピンク色のうさぎ。

 現時点の生徒から見て、別次元の激戦が始まっていた。


 ――おーいおいおいおいおい!! なんだよこれは! 勇者の俺より目立ってんじゃねよ! くそむかつく!


 恵比寿は戦っている藤崎をみて、今までに無い嫉妬の渦に巻き込まれていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ