悪役令嬢 ナイトメア
ドス黒いオーラが城、城内、広場に拡大していった。
「オーホホホホホホ!」
高笑いが1層全域に響く。
フルモンを追っていた黒騎士たちが立ち止まり、アリスを見た。
標的がアリスへと変わった。
「アリス! 来るぞ!」
「ああぁ! ハルキが期待してくれているわ……アゲアゲでございますわ!!」
アリス?
意外とまともだったアリスは?
アリスは迫って来る5体の黒騎士に右手を突き出した。
「わたくしの最高に高貴でゴージャスな魔術を見せてあげますわ!」
黒騎士1体に指を指した。
黒い光と線が黒騎士の頭を通り過ぎる。
頭から上が消失した。
今度は指10本で黒い光を線を出す。
黒騎士にわざと当てずに周りの地面と城壁が破壊されていく……
「なんでわらわまで狙うのじゃー!」
フルモンが泣きながら逃げ回っている。
無表情の黒騎士から恐怖と後悔の感情が伝わってきた。
「悪役令嬢魔術【黒の風】ですわ! 貴様らはすぐには殺しません! 後悔と絶望と敗北を心の底から刻み込みますわ!」
黒騎士とフルモンに向かって言い放つ。
アリスの次の詠唱が始まる。
アリスのピンクのドレスが風ではためく。
「悪役令嬢魔術【下僕共やっておしまい!】 さあ来るのですわ!!」
全域を覆う黒いオーラが濃くなってきた。
勇者と回復した神楽坂達が俺のところまで来た。
「ハルキ! どうなっているんだ。アリスは……あ、あ、あ、ああ!?」
神楽坂が途中で言葉を失ってしまった。
黒いオーラから人影が現れた。
それはマダムだった。
「あらあら、また帰って来れたのね〜。ハルキちゃん、アリスちゃん久しぶり。アリスちゃん可愛くなったわね〜」
後ろからドワーフも出てきた。
「おう! アリスのおかげで戻って来れたぞ! よっしゃ! 武器を出すぜ!」
神楽坂の隣から美熟女が胸を強調しながら現れた。
「神楽坂さん! チャラ男様から褒められたからっていい気にならないで! 女は大人の魅力で勝負よ! ふん!」
1層全域でNPCを達がどんどん復活していった。
神楽坂達が泣いている。
「あぁ、まさか……チャラ男?」
美熟女の横にはチャラ男がいた。
チャラ男は頭を掻いている。
「あちゃーー! あんなシリアスな別れをしたのに、すぐに復活なんて! 恥ずかしいぜ!」
いつも通りチャラチャラしたスーツを着崩して適当な喋りをしていた。
神楽坂達はチャラ男の胸へ全力で飛び込んだ。
「わぁーーっ! 死んだかと思ったよ……ぐすっ」
「良かったです……」
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
泣いているのか笑っているのか叫んでいるのかわからない。
「ハルキ……」
メイドが俺の目の前にいた……。
「死んだはずじゃ……」
俺は呆けた顔をしていただろう……。
「言っただろ。NPCは残滓だ、本物ではない。プレイヤーに殺されたら開放される。攻城戦が終わった瞬間全員開放された」
「アリスの魔術のおかげで、ここに帰りたいと強く願ったものは帰還出来た」
「今の私はユミさんじゃない」
「私はメイドだ!!!」
ああ、メイド……
俺はメイドを抱きしめようとした。
メイドはその豊満な胸で抱き締めてくれた。
が、すぐに俺を離す。
「再会を喜ぶ前に仕事を全うする」
アリスがNPCに命令する!
「さあ、あのゴミクズ共をやっておしまい!!!」
全NPCの目が光輝いた。
…………
…………
美熟女の魔術で牽制し、ドワーフの武器が飛ぶ、メイドの拳が黒騎士に刺さる、チャラ男のマイクが剣に変化して剣が走る、マダムの槍術が突き刺さる……
黒騎士達がフルボッコにされた。
されど40層のSCM。
その強さは折り紙付き。ぎりぎりで耐える。
フルモンティはチャラ男に確保された。
アリスがNPCたちを下がらせた。
「これで最後ですわ! 悪役令嬢魔術【ナイトメア】!」
「「きゅっきゅきゅーーい!」」
遠くから駆ける音が聞こえてきた。
何百、何千という色とりどりの首刈りうさぎが黒騎士達に襲いかかった。
一匹一匹がうさぎアリスと同じくらいの力を持っている。
黒騎士に群がるうさぎ達。目が赤く光っている。
断末魔の声を上げる黒騎士達。
足を手を首を狩られ、風魔法でミンチにされていった。
程なくしてうさぎ達は消え去った。
後には何も残らなかった……。
「オーホホホホホホ!! わたくしの完全勝利でございますわ!」
アリスが呆然としている俺に走って抱きついて来た。
「ハルキ様!! もう二度と離しませんわ!」
タブレットが告知する……
「フルモン戦終了しました。フルモンティ専用イベントなので特典はございません。……あ、はい……わかりました」
「失礼しました。召喚したNPC達は今まで通り1層で生活をしてもらいます。ボスモンスターではなくアリス様が主となりますのでご了承ください」
今度こそ俺達は雄叫びを上げた!!
「完全勝利だーーーー!!!」
 




