悪役令嬢 覚醒
『フルモンティ様……私は本当に喋れるのですか? 私は一体何なのですか?』
フルモンティが真剣な顔つきになった。
「なんじゃ、まだ自分を理解していなかったのじゃな」
「お主の職業は『悪役令嬢』なのじゃ。前世やらが複雑に絡みあって今のお主があるのじゃ」
アリスは震えている、不安そうな顔で俺を見る。
俺はアリス座り込んでアリスの小さな手を握った。
「まあ、よい。今はハルキなのじゃ! 一緒に20層までいくのじゃ!」
フルモンティは邪気のない笑顔で俺に抱きついてきた。
俺は……アリスが心配だ……
「フルモンティちゃん、俺はアリスと冒険をする。だから一緒にいけないよ」
「嫌なのじゃ! 嫌なのじゃ!」
ダダをこねるフルモンティ。
アリスはじっと考えこんでいる。
その時タブレットが鳴り出し、俺達に告げた。
「……上層部から許可を承認済み、現時点でフルモンティを一時的にプレイヤーサイドへ降格」
「始末人の手配完了」
「フルモンティ専用特別イベント「始末人VSフルモンティと仲間たち」を開始……しやがれ! このイカれロリが!」
俺はアリスの手を引いてそっと離れようとした……
「フルモンティちゃん……頑張ってね……」
フルモンティは自分の身体を弄りながら焦っている。
「ふぁ!! ボスモンスターのチカラがなくなっているのじゃ! ヤバイのじゃ……タブレットのやつアメリカンジョークも通じないのじゃ!」
自業自得じゃないかな……
『ハ、ハルキ様! これを見てください!』
アリスのタブレットに映し出されていたのは、フルモンティパーティー承認済み画面であった……
そいつらは現れた。
無骨な黒い鎧に全身覆われた騎士。黒い禍々しい剣を携えている。
尋常じゃない黒い闘気は明らかに格上のそれ。
身動き一つもしないそいつらは、俺達に敵意をむき出しにしている……
とんだとばっちりだ……
「黒騎士が5体なのじゃ! ヤバイ、ヤバイのじゃ! あいつらは40層にいるSCMなのじゃ!」
俺の周りを走り、テンパっているフルモンティ。
お前のせいだよ!
遠くにいる勇者たちが異変に気づいた様でこっちに向かっている。
アリスはまだ考え込んでいる……
「フルモンティちゃん、いやフルモン、あいつから逃げられるのか?」
「……前のわらわなら瞬殺なのじゃ……でも今は逃げるのさえ難しいのじゃ……そ、その呼び方は嫌なのじゃ……」
言い終わった瞬間フルモンは吹き飛ばされた!
「ぎゃーーーー!」
黒騎士がいつの間にか接近していた!?
くっ、盾を生成……
生成するまもなく俺の腹に剣が突き刺さる。
「きゅ!?」
アリスが別の黒騎士に切られた……。
黒騎士達はフルモンティを追い回しに行った。
瀕死の俺達が残された。
アリス……
俺はチカラを振り絞ってアリスを抱きかかえる。
俺の回復魔術が発動して二人に光が包み込む。
アリスは一度死んだら終わりだ……
死なせるものか……
アリスの回復が追いつかない……
毒か? 呪いか? 傷口が開く。
「きゅきゅ……きゅ?」
アリスは弱りきった身体なのに俺の心配をしてる。
絶対死なせるものか!
「俺の命を……」
チカラを振り絞ってアリスを抱きめる。
進化した時の感覚を思い出せ!
メイドとの戦いを思い出せ!
俺のLPを全力で注ぎ込め!
次の瞬間、俺の中のものがごっそり抜け落ちたのを感じた……
アリスが……
俺の腕の中で光っている……
大きくなっている……
……え、まだ大きくなるの?
アリスは人と変わらないサイズになった。
傷は閉じている。
良かった……そろそろ俺が限界だ……
もう目を開けてられない……
倒れそうになった俺に魔力が注がれた。
アリス?
抱いているアリスの感触が変わった。
モフモフの心地良い感触から、それは人肌の暖かさと女の子の柔らかさであった。
アリスが全裸の女の子に変化した……
「ハルキ様! やっとやっと会えましたわ!!」
アリスはメイドとそっくりな顔で抱きついてきた!
髪はピンクだが、美しい髪を縦巻きロールにし、前髪はパッツンにあっている。
凶悪的なダイナマイトボディなのに、気品がありどこぞの貴族か、と言いたくなる。
全裸であった。
巨乳だ……柔らかい……
……今はそんな事考えている場合じゃない!
俺の傷が消えてなくなる。
「アリス……? その姿は……?」
アリスは全裸で立ち上がる。
その立ち姿はとても美しかった。見惚れてしまう。
柔らかい雰囲気が一瞬で終わる。
黒騎士とフルモンをにらみつける。
ドス黒いオーラが辺りを漂う。
「後で説明しますわ……今はハルキ様を傷つけたあのゴミクズ共が先ですわ!」
アリスが詠唱する。
ピンクのドレスが光とともにアリスの身を包み込む。
まるで高貴なお姫様みたいだ。
突然高笑いをするアリス。
「おーほほほっ! わたくしのハルキを傷つけた罪は重いですわ……この災厄の魔女、最強の悪役令嬢と言われたわたくし……貴様らを地獄へ落としますわ!!!」
ドス黒いオーラが周囲全域を埋め尽くした。
 




