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難易度ナイトメア! クズ勇者に嵌められた俺はついに本気を出すときがきた 悪役令嬢と塔を攻略しよう!  作者: 野良うさぎ(うさこ)


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攻城戦 始まり

「おーい! そっちに騎士1匹いったぞ!」


「殺れ! 殺るんだ!」


「絶対1匹残せよ!! 殺しすぎるな!」


 5層ボス部屋は悲惨な状況になっている。

 主に騎士団たちが……


 攻城戦開始まであと35時間ある。

 俺達は早急に行動を起こした。


 全体の指揮は神楽坂が取っている。

 強さだけなら俺や勇者の方が強い。だが神楽坂には人々を先導するカリスマ性がある。


 まず勇者たちは戦闘員を率いて5層のボス戦を繰り返し行っている。

 強い者が弱いものを率いて戦っている。


 ボス部屋はどうしても混雑してしまうので6〜9層の雑魚を狩る。

 難易度ナイトメアだ。

 敵は無尽蔵湧く。


 程なくして勇者たちの力を借りずにボス部屋を攻略出来るパーティーが多数出てきた。

 そうして手の空いた勇者たちや機械乙女たちはSCM(強キャラモンスター)を狩りまくっている。


 神楽坂たちも貴重な戦力だ。

 タブレットで指揮をしつつ、取り巻きの忍者たちに指示を出しながらボス部屋攻略と下位SCM狩りを繰り返している。


 疲れたらスタミナポーションで回復、お腹が空いたら御飯を食べる、傷ついたらレベルアップを目指す。

 薬等のアイテムは切れることが無い。輸送魔術が使える非戦闘員が同行している。


 戦闘員たちは28時間ぶっ続けでレベルアップを図った。

 残り時間は睡眠と心の準備にあてた。



 俺は各所を周っていた。


 生産組も張り切っていた。


 城内前広場では土木魔術を使える生徒たちが土のバリケードと落とし穴を作っている。

 広い城を覆うように迷路の様に壁が出来ていた。


「――クリエイトアース!!」


「ここ壁が薄いわよ! もっと補強して!」


 せわしなく働いている生徒たち。

 これから死線を迎えるであろう俺達だが、その顔は汗を流して生き生きとしている。

 誰も死ぬつもりが無い、士気の高さを伺える。




 とある錬金術師は特製高位力爆弾を作りやがった。

 赤鬼で試したが軽く木っ端みじんになった。




 とある鍛冶師は目に血の涙を流しながら剣を叩いていた。

 師匠を超えるために、自分の限界を超えるために命を削って叩いていた。

 その剣は、鍛冶師の魂が乗り移ったかのように禍々しい気を発している。


「ついに完成した。田中魔剣スペシャルバージョン3……」


 その男は剣が出来た瞬間に息絶えた。

 LPと引き換えに現時点で作れる最高の武器が完成した。


 複製魔術の使い手による田中魔剣の量産が始まった。




 とある服飾師は泣きながら服に付与魔術を付けている。


「マダム……どこいっちゃたの……さびしいよ……」


 その悲しみが付与魔術を強化して、ただの布が一流の鎧にも匹敵する防御力を与えていた。


「マダムにみてもらいたかったよ……ぐすっ、泣いてなんかいられない! マダムが帰ってきたら僕が作った作品をみせて驚かせよう!!」





 とあるゲームセンターでそいつは嘆いていた。


「この世界はセガーの夢の国だ」


「壊させない……俺が守る」


 ゲームセンター内のゲーム筐体は全てセガー社のものだ。セガーるラリー、バーチャルファイター2、ファイティングパイパイ、ダイナマイト検事などがあった。


「俺に力を与えてくれ!!」


 そいつのスキルは妄想の現実化。

 そいつは異世界転移をして超絶ハイテンションで喜んでいたが、スキルが使えなくて死んだ様に落ち込んだ男だ。


 最強に近いスキルだがよほど思い入れが強く無いと発動がしない。


 男は強く祈る。


 奇跡は起こった。

 ゲームセンター内の筐体が突然光り輝いた。

 画面上でしか存在しえなかったゲームの住人が飛び出してきた。車まで飛び出してきた。


 男は感極まって男泣きをした。


「おぉ……わが軍勢ここにあり……」


 俺はそっと立ち去った……






 時間が無い中、生徒たちは死ぬ気で準備をしている。

 攻城戦に負けたら死ぬ。

 死んだら前の世界に戻れるかも知れない。

 だがそんな保証は無い。

 だから死ぬ気で戦うしか無い。


 俺とアリスもボス討伐のための準備を始めた。



 メイドの言葉を思い出す。


「お前らに必要なものは圧倒的な強さだ。レベルで上がる強さも重要だが、自分の現状を理解しろ。何故アリスはうさぎなのか? 何故ハルキは進化という存在としてのレベルアップ出来たか?」



「お前らはこの階層で上げられるレベルは頭打ちだ。強くなる方法を考えるんだ」


 あの胸がでかくて無愛想で飯ばっか食っているハードボイルドメイド。

 まるでこの世界の俺の師匠だったな。

 攻城戦が終わったらまた会いたい……。





 俺達は装備を万全に整えた。

 田中に無理やり作らせた特注の刀と小太刀がある。

 濃い紫のショートジャケットの下も、全て服飾屋の特注で作らせている。


 アリスもお気に入りの魔術師ローブと付与魔術が付いたマフラーを巻いている。

 あのマフラーは防具でもあり協力な武器でもある。


 装備の確認を終えた俺達に必要なものは、自分を見つめ直す事だ。


 広場にあるコロシアムに向かった。

 コロシアムは誰もいない。


 俺は誰もいない舞台に正座で座り瞑想を始めた。

 アリスも俺の横でちょこんと座り目を閉じている。


 俺は前の世界でいじめられたり馬鹿にされていた。

 誰も俺に救いの手を差し伸ばさなかった。

 俺も自分が弱い人間でそれが当たり前だと思っていた。


 師匠は激しかった。

 俺だけ道場の練習のあと、強制居残りで修行をしていた。

 それはあまりにも実践に近い修行だった。平和な日本で全く必要無いであろう技術。

 その修行がなかったらモンスパをクリア出来なかっただろうな。


 俺のことをバカにしたり、叱りつけたり、一歩も動けなくなるまでしごいた。


「お前は出来損ないだ」


「お前は弱い、クズ人間だ」


「お前が嫌われているのはお前が最低の男だからだ」


 師匠は何故あそこまで俺に激しかったのか?

 本人に聞くしかわからない。ただ、師匠のおかげで異世界を生き抜くことが出来ている。


 何故俺はこの世界に来て性格が変わったのか?

 俺は前の世界の記憶が抜け落ちている。

 進化する時に何を使用したんだ。

 レベルで得られた何かか?

 記憶か?

 俺だけ進化出来たわけはなんだ?

 現実世界はこの世界と関係が在るのか?

 もしかしたら俺は現実世界で何かあって異世界に転移したのか?


 俺は自問自答を繰り返しながら瞑想の深みに落ちていく……。

 これは自分を探る旅だ。


 ……

 ……






「きゅ!」


 アリスが俺の身体を揺する。朝日が照らされる。

 俺は瞑想をしながら眠ってしまったようだ……。

 腕時計を見ると朝4時。

 後4時間で攻城戦が始まる。


 アリスも寝ていたのか、伸びをしながら俺にタブレットを見せた。


『私も自分の見つめ直していましたわ。何故悪意を持たれるのか? 何故過去の記憶が無い部分があるのか?』


『私が出した答えを照らし合わせるために、必ず攻城戦生き抜く必要がありますわ』


『ハルキ様、この攻城戦が終わったら偽善勇者たちと話し合いますわ。……もし私の答えが正しくても間違っていてもこれからも一緒にいてくれますか?』


 アリスは真剣な表情で俺を見つめる。


 俺はアリスの頭を撫でた。


「アリスは俺の仲間だ。どんなことがあろうとただ一人の大切な仲間だ、たとえ全てが敵になっても俺はお前の味方だ」


 ああ、そうだ初めて出来た大切な仲間だ。


「さあ、広場に行くぞ」


 俺は立ち上がり歩き始めた。



「きゅ……」






 神楽坂が広場の中央にいる。

 その正面にはパーティーで隊列した大勢の生徒たちがいる。

 7時30分、あと少しで攻城戦が始まる。

 各生徒たちはすでに所定の位置で待機している。

 門から広場を通って城内までは2キロ位距離がある。

 突貫工事であったので城前しかバリケードを作れなかった。


 生徒達はただならない緊張感のなか待ち構えていた。


 俺達のパーティーはボスを倒すために10層へ最短で向かう。

 俺達以外のパーティーも一緒に向かう予定だ。


 攻城戦が始まってモンスターの質と量を見極めて、一緒に10層へ行くパーティーの人数をその場で判断して決定する。


 職業狩人のスキル「遠目」と斥候部隊を使って確認する予定だ。


 城に攻めてくるモンスターが勇者や機械乙女達がいなくても大丈夫だったら、最大戦力で10層を最速で落とす予定だ。

 俺と勇者は軽く10層にいける、ボスモンスターの実力が未知数なため出たとこ勝負になるが上位3パーティーが集まれば現時点では負ける気がしない。


 神楽坂は、今は前線いるが始まったら後方から全体の指揮を取る予定だ。

 隣にいる東雲と豊洲は震えているがブツブツ何か言っている。


「この戦いが終わったら素直な自分になるんだ……。藤崎に告白す……」


「ハーくんの敵は私の敵……」


 神楽坂が時計を見る。息を大きく吸い込んだ。


「もう始まるぞ! 総員構え!!」


 5


 4


 3


 2


 1


 タブレットが告げる。


「10層特別試練攻城戦が開始いたします。頑張ってください」


 門が開かれた。







 そこに現れたのはチャラ男だった。






 生徒達に動揺が走る。

 NPCが門から出てきた。これを意味することが理解出来なかった。


 俺は神楽坂の顔を平手で軽く叩いた。


「動揺するな。門から出てきたって事は……モンスターだ。お前が固まれば全員殺される。そして敗北して全滅になる」


「……くっ!! ああ、そうだった。これは殺し合いだ……」


 神楽坂は歯を食いしばりながら鬼のような形相で俺にいった。


「礼を言うハルキ。斥候!! 狩人!! 敵は何人だ!!」


 斥候からのタブレット連絡が入る


「NPCが……! NPCがどんどん入ってきます! 街にいたNPC全て向かって来るようです! チャラ男さんを先頭にゆっくりと進軍してきます!! NPC総勢109人です!」


 狩人が神楽坂に報告をする。


「モンスターもNPCの周りから少しづつ湧き出ています。想定よりモンスター自体の質と量は低いですが……」


 そう、NPCは高レベルである。

 俺達に戦う術を教え込んでくれた。

 生きる技術を教えてくれた。


 だが、今は敵となった。


「神楽坂!!」


 俺の叫びに答えた。


「私たちはNPCのおかげで今がある……。だが、今は敵となった!! 情もある、また共に歩きたい、様々な思いが交差していると思うが、あいつらは敵だ!!」



 さらに叫ぶ神楽坂。



「あいつらに成長したお前らを見せてやれ!!」



 戦いの火蓋が切って落とされた!

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