俺の本気
――俺がアリスを守る!
気がつくと俺の身体は光に包まれて、傷が治っていく。
レベルアップの回復とは違う。ゆっくりと傷が癒えていくのがわかる。
これは回復の術か?
突然身体が悲鳴上げてた。得体の知れない力が体中を駆け巡る。
レベルアップとは違い、存在としての次元を超えた感覚だ。
武器は無い、さっきの赤鬼の攻撃で遠くに飛んでいった。
――無いなら作れ。今ならいける。
手に力を集中する。イメージは剣。
力が形になる。ガラス細工の様な剣が右手に誕生した。
目の前にいた赤鬼は我に返って俺に襲いかかろうとした。
高速の鉄棒による突きが来た。
俺は落ち着いて赤鬼の鉄棒を片手で受け止める。
同時に俺は、ピンクうさぎに追撃しようとした赤鬼にガラスの剣を投げつけた。
空気を切り裂いて、30メートルの距離が一瞬で埋まり、赤鬼の腹にインパクトした。
インパクトの瞬間、腹から爆散した赤鬼は死亡した。
――なんだこの力は……
うさぎは意識が無いのか動かない。
もう一匹の赤鬼がうさぎに襲いかかろうとしている。
――待ってろ……今行くぞ!
片手で鉄棒を押さえた赤鬼の方を見ずに、手刀を振るう。
首が落ちるのを確認せずに凄まじい速度でアリスのところへ向かった。
アリスに襲いかかろうとした赤鬼に飛び蹴りを頭に加える。
弾丸の様に吹き飛んで行く赤鬼。
校舎を破壊しながらやっと止まる赤鬼。首があらぬ方向に向いている、身体がぐちゃぐちゃだ。
「よし、3匹完了……」
残りの7匹も異変に気づきこっちに向かって来た……今まで遊んでやがったな……
アイツと戦う前にアリスを回復させなきゃ……焦るな……
アリスに近づいて、ぐったりとした身体を抱きかかえる。
――治れ! 治れ! 治れ!!
俺は自分の身体を治した力をうさぎに使ってみた。
温かいモノを手に感じ取ってそれをうさぎへ譲渡する。
ウサギの身体から淡い光が発生する。
――よし!
アリスはゆっくりと目を開けた。
「きゅ……」
まだ苦しそうで弱々しく鳴いている。
うさぎの頭を撫でつつ俺は言った。
「後は俺に任せろ。寝て起きたら終わってる」
「きゅ〜」
俺はアリスを優しく左手で抱きかかえ、赤鬼共に向き直った。
7匹の赤鬼が迫ってくる。
赤鬼どもは散開した。2匹、2匹、3匹のパーティーを作り連携をしつつ俺に襲いかかって来ようとしている。
俺は右手に生成したガラスの剣を構える。
赤鬼たちは俺を異様なモノを見る目で警戒している。
「ぐるぅぅぅ……」
5匹は円で取り囲む様にぐるぐる俺の中心に回り始めた。
他の2匹は遠くから瓦礫を投げ始めた。
大きな瓦礫はあたったら甚大な被害を被るだろう……
当たればな……
俺は瓦礫をかわしながら迎撃体制に入った。
2匹が襲いかかって来る。
俺は力強く地面に剣を刺した。
地面に力を伝える。
距離を詰めてきた2匹の足元から、ガラスの剣が何本も生えてきた。
「ぐるぁ!?」
ガラスの剣で串刺しになる2匹。体中から血を流し死亡する。
「……5匹完了」
遠くから瓦礫を投げていた赤鬼に高速で距離を詰める。
移動しながら手に力を集中。イメージは刀。
新しいガラスの刀を生成できた。
――こんな時も身体に道場の稽古が染み付いてるな。身体が勝手に動く!
2匹の首が宙に舞う。
刀が消滅した。
――面倒だ! 一気に行くぞ!
俺は手のひらに力を集中する。
空間からガラスの剣をどんどん生成する。
赤鬼は自体を理解出来ないのか、固まってしまっている。
――これで打ち止めだ!
剣の数は25本。剣は中に浮いていて空中で待機をしている。まるで隊列しているかの様に美しい。
「「「ーーーーーーーー」」」
残りの赤鬼どもが、必死の雄叫びを上げて動こうとした瞬間、剣は流星となって赤鬼どもに飛んでいった。
25本の剣が宙を踊る。
剣が着弾した赤鬼の身体が爆散し続ける。
グラウンドが光と大きな爆発音で埋め尽くされた!
まるで赤い花火みたいだ。
「10匹、完了だ……」
俺はアリスをしっかりと両手で抱きしめた。
「きゅ〜〜」




